伊吹vs滋賀学園
21世紀枠近畿地区推薦校の伊吹が滋賀学園を延長戦で破る 滋賀学園は11年ぶりの初戦敗退
11回表に勝ち越し打を放ち、ガッツポーズを見せる中川蒼河(伊吹)
<第104回全国高校野球選手権滋賀大会:伊吹5−3滋賀学園>◇11日◇2回戦◇皇子山
今春の選抜高校野球で21世紀枠の近畿地区推薦校に選ばれた伊吹が延長11回の末に優勝候補の滋賀学園を下した。
滋賀学園は服部弘太郎(3年)、伊吹は福井希空(3年)の両エースが先発。ともに最速が140キロを超える県内有数の本格派右腕だ。
戦前の期待通り、試合は引き締まった好ゲームとなる。1回裏、滋賀学園は2死一塁から4番・山田一晴(3年)の右翼線への二塁打で一塁走者が一気に本塁を狙うが、伊吹が見事な中継プレーを見せて本塁タッチアウト。先制点とはならなかった。
対する伊吹は2回表に1死三塁のチャンスを作る。ここで6番・北川敬大(2年)がスクイズを試みるが、「ランナーが走ったのが見えたのと、バッターが構えるのが早かった」(服部)と滋賀学園バッテリーが外して三塁走者をタッチアウト。互いに好守で先制のピンチを防いだ。
試合が動いたのは3回裏、滋賀学園は2死一、二塁から山田の中前適時打で先制。すると、伊吹も4回表に1死三塁から3番・設樂貴翔(3年)が右前適時打を放ち、同点に追いついた。
互角の試合展開で次に主導権を握ったのが滋賀学園。6回裏に1死二塁のチャンスを作ると、打席にはプロ注目の強打者である6番の滋賀学園鈴木蓮(3年)が立つ。1ボールから高めの球を振り抜くと、レフトへの適時二塁打となり、再びリードを奪うことに成功した。
追いつきたい伊吹は8回表、2死二塁から1番・友田裕作(3年)が左翼線への適時二塁打を放ち、またしても同点に追いつく。試合は2対2の同点のまま延長戦に突入した。
尻上がりに調子を上げてきた福井は1番から始まる10回裏を三者凡退に抑えたが、最後の打者を二塁ゴロに打ち取って一塁に送球した際に二塁手の友田が足を攣るアクシデントに見舞われる。ここまで攻守に渡って躍動してきた選手だけに何とかベンチには下げたくない選手だった。
11回表は友田から始まるため、手当で試合が約5分間中断した。何とか友田はグラウンドに戻り、服部からこの試合3本目のヒットを放つ。だが、彼の足は既に限界に達しており、這いつくばりそうになりながらも最後はヘッドスライディングで意地の出塁。ここで代走を送られ、友田は無念の交代となった。
この魂のプレーが伊吹ナインに火をつけた。その後、2死一、三塁となり、主将の5番・中川蒼河(3年)に打順が回る。「俺がやってやろうという気持ちでした」という中川は1ボール2ストライクから内角の直球を振り抜くと、三遊間を破る左前適時打となり、伊吹が待望の勝ち越し点を奪う。さらに伊吹は6番・北川、7番・福井にも適時打が飛び出し、3点リードで11回裏の守りについた。
しかし、10回までに135球を投げてきた福井も限界が近づいていた。11回裏の初球を投げた時に足が攣りそうになる仕草を見せたが、「そんなことも言っていられないと思って、気持ちで投げました」と滋賀学園の反撃を1点で凌ぎ、気迫の150球完投。優勝候補の一角を破った伊吹が初戦を突破した。
「選手がよく頑張ったの一言です」と試合を振り返った野村勇雄監督。今春のセンバツは21世紀の近畿地区推薦校に選ばれながらも甲子園初出場の吉報は届かなかった。悔しい思いをしたが、「夏は自力で甲子園」を合言葉に更なるパワーアップを図ってきた。この試合はノーエラーと堅い守りを披露し、攻守で強豪私学に互角の戦いを披露。最後に執念で勝利をつかみ取った。この勢いで一気に頂点を駆け上がるか。
敗れた滋賀学園は夏の大会では11年ぶりの初戦敗退。高校通算29本塁打の鈴木は、「プロの世界で自分が活躍してチームの勝利に貢献できる選手になりたいと思います」とプロ志望を表明。この試合でも複数球団のスカウトが視察に訪れていた。ドラフト会議での指名があるかに注目だ。
(取材=馬場 遼)