試合レポート

前橋育英vs健大高崎

2018.07.24

前橋育英が劇的サヨナラで3年連続の甲子園へ!

  

 健大高崎前橋育英。全国でもその名を知らない人はほとんどいない群馬屈指の名門校。そしてライバルといっても過言ではない両校の対決が、決勝の舞台で実現。2016、2017年も決勝の舞台で対決しており、前橋育英が2度とも勝利して甲子園に進んでいった。

 今年は春の県大会で健大高崎前橋育英に勝利している。健大高崎の3度目の正直となるのか。それとも前橋育英が力を見せるのか。大注目の一戦は初回から動く。

 

 前橋育英の先発はエース・恩田慧吾。最速は140キロを超える力のあるストレートとスライダー、そして時折見せるチェンジアップをコーナーに集める。その恩田は健大高崎の1番・山下航汰と2番・小林大介の2人に連続して四死球を与えると、3番・大越弘太郎にサードへの送りバントを決められ、いきなり一死二、三塁のピンチを迎える。

 

 4番・髙山遼太郎はセカンドゴロに切ったが、この間に山下に先制のホームを踏まれ二死三塁。続く5番・大柿廉太郎にショートゴロを打たせ、チェンジかと思われた。

 

 しかしここで味方の悪送球。三塁ランナーの小林は悠々ホームイン。打った大柿はボールがファールゾーンを転々としている間に二塁へ。二死二塁のピンチが続くと、6番・嶋本翼に外のチェンジアップをライトに運ばれさらに1失点。この回健大高崎に許したヒットはわずか1本だが、四死球とエラーが絡んで前橋育英はまさかの3点ビハインドとなる。

 

 だが前橋育英にも意地がある。一死から2番・北原翔が相手のエラーで出塁すると、3番・橋本健汰がライトへヒットを放ち一死一、三塁にする。ここで4番・小池悠平が、健大高崎の先発・吉田翔からライトへタイムリーを放ち、前橋育英はまず初回に1点を返す。

 

 2点差を追いかけるためにはこれ以上点数を与えるわけにはいかない前橋育英のマウンド上の恩田は、2回以降は素晴らしいピッチング。2回、3回を三者凡退にまとめる。4回は健大高崎の7番・今井佑輔にヒットを許したが、後続のバッターを抑え、守備から試合の流れを前橋育英は少しずつ寄せていく。

 

 守備のリズムが攻撃に繋がったのは4回。7番・剣持京右のセンターへのヒットでチャンスメイクすると、8番・恩田は送りバント。続く9番・笹澤大和は四球を選んで二死一、二塁にチャンスを広げる。ここで打席にはここまでノーヒットの1番・久保昌大。2ボール1ストライクのバッティングカウントから、健大高崎の吉田の真ん中付近に来た甘いボールをセンターへ弾き返すタイムリー。前橋育英が遂に1点差に詰め寄り、健大高崎にプレッシャーをかける。

 だが健大高崎は今春の県大会王者。そして一昨年、去年と決勝の舞台で悔しい想いをしてきた。この一戦へにかける想いは強いはず。整備明けの6回、試合の流れは変わりやすいと言われるこのタイミングで強力健大高崎打線が再び火を噴く。


 一死から4番・髙山がライトへの二塁打で出塁すると、5番・大柿の打球を野選。一死一、二塁の場面で続く6番・嶋本のセンターフライでそれぞれランナーが進塁して二死二、三塁のピンチを前橋育英は迎える。ここで打席には準決勝の高崎商戦で勝ち越しタイムリーを放ち、前の打席でもヒットを放っている7番・今井。

 後半の大事な場面で、踏ん張りどころを迎えた前橋育英の恩田だったが、今井にレフトへヒットを打たれランナー2人が生還。2対5と健大高崎3点リードに変わってしまった。

 5回までにできた逆転の勢いをこの2点で断ち切られ、苦しくなってきた前橋育英健大高崎前橋育英を6回、7回無失点に抑え、このまま甲子園が決まるのか、そう思われた。しかしドラマは最後に待っていた。

 8回の前橋育英は4番・小池がライトへの二塁打で打線に勢いを与えると、続く5番・梅澤修二は四球を選んでチャンスを広げる。6番・丸山大河が送りバントを決めて一死一、二塁。ここで両軍勝負に出る。前橋育英は代打・石田大夢健大高崎は3番手・藤原寛大を送る。この交代は前橋育英にとって吉と出た。

 石田は内角に来た変化球をライト線へ。この打球で2人のランナーが返ってきて1点差。これで勢いづくと、9番・笹澤がセンターへ同点タイムリーを放って前橋育英はついに同点に追いつく。

 勢いは完全に前橋育英かと思われたが、健大高崎の反撃が襲い掛かる。
 先頭の嶋本に死球を与えると、続く7番・今井をエラーで出塁させる。途中出場の8番・古屋一輝に送りバントを決められ一死二、三塁の勝ち越しのピンチ。9番の久保田悠斗は三振に取るが、強打者・山下は四球で歩かせる。

 二死満塁。間違いなくこの試合の山場となった息詰まる攻防の中、健大高崎2番・小林の打ち返した打球はセンターへ。しかしこれはセンター・久保のグローブへ。勝ち越しの大ピンチを無失点で切り抜ける。

 二死満塁を抑えて勢いがついた前橋育英の直後の攻撃、3番・橋本が詰まりながらも振りぬいた打球がセンターへ飛び、サヨナラのチャンスを作る。4番・小池はセンターフライに倒れるも、5番・梅澤が1ボールから来たストレートを捉えると、サード頭上を越えてレフト線を破る。この当たりで一気に橋本はホームへ。劇的なサヨナラで前橋育英は3年連続の甲子園の切符を掴み取った。

 ゲーム終了後は両校の選手に涙が出た。嬉し涙、悔し涙、同じ涙でも秘めている想いは選手それぞれ。しかし、これだけのゲームを繰り広げてくれた両校の選手たちには拍手を送りたいと同時に、胸を張って次のステージに進んで欲しい。

(文=編集部

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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