南稜vs蕨
試合巧者の蕨に何も仕掛けさせなかった南稜の戦い見事
南稜・宮村君
当初の天気予報とは違って、上がるはずの小雨は、11時頃まで降り続いてしまった。試合にして、5回頃になってようやく雨が上がった。ただ、若干足場も緩んでおり、こうした要素も、足を使って仕掛けていく蕨にとってはどのように作用していくのかというところだったかもしれない。いずれにしても、展開としてはよくない方へどんどんと流れていってしまったという印象だった。
初回、先攻の蕨は内野ゴロ二つと三進であっさり終わる。その裏の埼玉南稜は先頭の盛田君が中越二塁打して、星野君も右前打でたちまち無死一三塁。続く高橋君は二ゴロ併殺となったが、その間に三塁走者が帰って埼玉南稜としては必ずしもいい形ではないものの何とか先制点が入った。宮村君が安定しているだけに、先制点はほしかったところである。
ただ、埼玉南稜は2回も無死一三塁を作りながらも蕨の小長君の粘りの投球に攻略しきれず。4回も一死満塁で盛田君の左飛で三走が本塁を狙ったもののタッチアウト。埼玉南稜ベンチも、いくらかもどかしい展開となっていた。蕨のギリギリの場面での守りも光ったというか、何とかこらえていたという印象だった。
しかし5回、死球にバントと高濱君の左前打などで一死二三塁として、5番堀君の遊撃ゴロの間に2点目が入った。そして、なおも二死三塁で鳥越君が右前打。埼玉南稜としてはやっとタイムリー安打できれいに得点できたという感じだった。
蕨・小長君
7回にも埼玉南稜は外野手のグラブをかすめる2本の安打などで満塁として、身長157cm体重52kgという失礼ながら少年野球かという体格の小井土君が、鋭くはじき返して中前へタイムリー打して4点目。宮村君の内容からしても、ダメ押しと言ってもいい追加点だった。
埼玉南稜は、チームの基礎を作った遠山 巧監督が異動を見据えて昨夏で監督の座を降りて荒井 晶平監督が引き継いでいた。ことに、この秋以降は現在の2年3年生だけで14人という小世帯になっていた。だから、紅白戦さえままならないという状態だった。そんなこともあって、冬の間はむしろ個人のスキルアップを目指しての個人練習が多かったという。自分たちで考えてやっていくという意識が作られている選手たちだけに、冬のメニューをきっちりこなしてきた。小井土君のこ日の2安打などは、まさにその成果と言ってもいいであろう。
また、宮村君もタテのスライダーを中心にチェンジアップなども混ぜながら、狙い球を絞られてきているとわかると、配球の組み立てを変えるなどのクレバーさも見せた。こうしたことも冬の練習の成果言えるのかもしれない。
荒井監督は、「もっと走ってこられるのかと思っていましたが、そうさせなかったのがよかったと思います。宮村が、低めへよくコントロールできていたし、捕手もいい配球を作っていたと思います」と、バッテリーを高く評価していた。蕨に仕掛けさせる余地を作らなかった、2安打に抑えた宮村君の好投に尽きるといってもいいだろう。
蕨の黒須 清人監督は、「攻撃力=打力+機動力」ということを提唱し、「守りでしのいでいくというのはうちの試合スタイルではないんですよ」と、この日の試合展開を振り返る。あえて勝ちパターンを作らないというが、勝ちパターンにハマらなければ負けパターンになってしまうからだと言うが、この日は蕨にとってはまさに負けパターンだった。「こういう残念な負け方は、むしろ、夏へ向かって開き直れます。力はつけるものではなくて、発揮しなくては意味がありませんから、力を発揮できるチームを作っていかなくてはいけませんね」と、夏へ向けて、もうひと伸びしていく蕨というチームがどう変革していくのか、楽しみでもある。
(取材・写真=手束 仁)
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