1年前の5回コールド負けを乗り越えて。東海大菅生に1対2の接戦を演じた中大杉並の躍進は主将の存在があった
試合後、顔を拭う木村陸(中大杉並)
8月1日、都内でもトップクラスの進学校に挙げられる中大杉並。専用の練習場もあるわけではない。長時間練習もできるわけではない。中大杉並は学校からの縛りが厳しく、練習は週4回、そして平日は1時間程度。満足いく練習はほとんどできなかった。それでも彼らをかきたてたのが、東海大菅生に勝ちたいという気持ちだった。昨年は3対13でコールド負け。試合に出場していた木村陸は非常に悔しい想いを味わっていた。今度こそリベンジするために渡邊は主将に就任した。
阿部徹監督は主将・木村の起用理由についてこう明かす。
「今年は例年より野球がうまい選手が多いのですが、個性的な部分、バラバラになることが多かったです。それをまとめたのは木村で、最初は主将のキャラじゃないと思っていたんですけど、徐々にまとまっていて、今や渡辺でなければまとまらない。木村のチームとなりました」
勝てるチームになるためにインサイドワークについても研究。背番号10ながら実力はエース級の奥山範丈の持ち味を東海大菅生戦では存分に発揮させた。
外角へのコントロールに自信を持つ奥山に対し、木村はその球を軸としながら、チェンジアップを交える投球。「フライをうまく打たすことができました」と東海大菅生打線を打ち取ることができた。試合は9回まで1対1の接戦の末、サヨナラ負けが決まったが、去年の5回コールド負けから大きく成長し、東海大菅生ナインを焦らせる試合ができた。
渡邊は勝つためにチームメイトに厳しく要求してきたが、また試合では楽しまなければ損ということで、常に笑顔ということを心掛けた。
最後まで爽やかな笑顔を見せていた木村だったが、試合後、仲間や保護者に挨拶が終わると、顔を拭う姿があった。そして試合後も仲間たちに厳しいことを言い続けてきたことを思い出しながら3年間を振り返っていた。
個性的な選手の集まりを束ね、西東京ベスト16入りするまでのチームにした木村は高校野球で現役を終える。
打倒・東海大菅生、打倒・強豪私学の目標は後輩たちへ託した。