27日に120周年の「早慶戦」、あの名勝負を経験した4年生に注目
左から野村 健太、廣瀬 隆太、熊田 任洋
「早慶戦」の始まりは1903年(明36)。今年120周年を迎えた伝統の対抗戦が27日から、[stadium]神宮球場[/stadium](東京都新宿区)で開催される。
東京六大学野球の春季リーグは、4年ぶりにコロナ禍の制限がなくなった。名物の応援合戦とともに、白熱した試合が展開されそうだ。
「早慶戦」の名勝負といえば、2020(令2)年の秋季リーグが記憶に新しい。
勝った方が優勝という展開になった2回戦。早稲田大が1点を追う9回、現西武の蛭間 拓哉外野手(当時2年=浦和学院)の2点本塁打で慶應大に連勝し、歓喜の逆転優勝を遂げた。
この一戦に当時1年生として出場した選手が3人いる。慶應大の廣瀬 隆太内野手(4年=慶應義塾)と、早稲田大の熊田 任洋(とうよう)内野手(4年=東邦)、野村 健太外野手(4年=山梨学院)だ。
廣瀬は慶應義塾高時代から強打者として鳴らし、2年時は春夏連続で甲子園に出場した。慶應大でも1年春からベンチ入りし、1年秋にはレギュラーに定着。早慶2回戦は2番一塁手として先発出場し、2安打を放っている。
熊田は2019年春の第91回選抜高校野球大会を制した東邦(愛知)の優勝メンバー。4番遊撃手として、3番エースだった現・中日の石川 昂弥(たかや)投手を攻守で盛り立てた。
野村も山梨学院(山梨)2年夏、3年春夏と甲子園に出場している。豪快な本塁打を計3発放って、「山梨のデスパイネ」の異名をとった。
熊田は早稲田大に入学すると、新型コロナウイルス感染拡大の影響で8月に開催された春季リーグの初戦に、9番遊撃手で先発出場。いきなりリーグ戦初安打も記録した。同年秋には野村も神宮デビューを果たし、優勝を決めた早慶2回戦にそろって先発出場。中でも熊田は1点を追う9回2死走者なしから左前安打を放ち、蛭間の逆転2ランを呼び込む活躍を見せた。
慶應義塾大・廣瀬 隆太
廣瀬は慶應大の主将として今シーズンを迎えた。本調子には程遠い状態ながら、ここまでリーグ1位の4本塁打を放っている。
中でも持ち前のパワーが発揮されたのが、優勝した明治大との4連戦。2回戦で蒔田 稔投手(4年=九州学院)、4回戦では村田 賢一投手(4年=春日部共栄)から豪快な本塁打を左翼席に打ち込んだ。前者は内角高めに来た蒔田の直球を力負けせず打ち返し、後者は村田の緩いカーブをしっかりひきつけて捕らえた。
通算17本塁打は史上9位タイ。大学球界きっての長距離砲がアーチをかければ、慶應大打線は勢いづく。
早稲田大・熊田 任洋
早稲田大の副将となった熊田は、ここまでリーグ1位タイの12打点をマーク。持ち前の勝負強さに、さらに磨きをかけている。法政大との1回戦では速球派右腕の篠木 健太郎投手(3年=木更津総合)の直球を左前にはじき返す先制打。明治大1回戦では右翼席に同点本塁打を放つなど、3打点と気を吐いた。
故障もあって苦悩が続いていた野村も、立教大との1回戦で待望のリーグ戦初本塁打を放った。「一本出て気が楽になった」とこの日、2本塁打をマーク。小宮山悟監督も「打球を飛ばすことにかけては群を抜いている」と認める実力を発揮し始めている。
両校とも今季は投手力の整備が遅れ、苦戦を強いられたが、攻撃陣の状態は悪くない。得点したら、早稲田大では「紺碧の空」、慶應大では「若き血」が応援席で演奏される。早慶どちらが応援歌をたくさん歌うことができるか。
すでに明治大の優勝は決まったが、早慶両校のライバル意識は、120周年を迎えた今年も熱い。過去の対戦成績は早稲田大239勝に対し、慶應大196勝。慶應大は春秋とも勝ち点をとると、早慶戦通算200勝となる。
文=安藤嘉浩(文化工房)