試合レポート

名護vs八重山

2020.11.18

打たせて取るピッチングで完投。名護が東江の好投で八重山を下す

 「東江は7回がメドと思っていましたが、良く乗り越えてくれました。」試合後名護の川上監督は、10回を投げ切った174cm54Kgの、細身の右腕に賛辞を送った。

攻める八重山、守る名護

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勝利後の名護バッテリー

 先制したのは八重山。1回裏、1番平瀬礼貴がレフト前ヒットで出塁。犠打で送ったのち、黒島武翔がライト前へ運ぶ4番の仕事をし、二走が生還した。

 追う名護は直後の2回、四球とヒットで一・三塁としてダブルスチールを敢行。セカンドへ送られる間に三走が同点のホームを踏んだ。ここで雨が降り出し約30分の中断があった。この雨を、どちらが恵みとするのか?流れを掴んだのは、八重山だった。

 3回、相手の悪送球で二・三塁。次打者も四球を選び満塁とする。4回には二死二塁、5回は一死二塁、6回には相手のエラーと四球で無死一・二塁としたが、いずれも名護東江真之介と野手陣が守り切る。4度のピンチを迎えた直後の東江真之介が、外野に運ばれたのはたったの一度のみ。一年生らしく、快速球にはほど遠い球速でも角度と低めを徹底したピッチング、そして川上監督も褒めた土壇場での制球力の良さが八重山に傾いた流れを五分に引き戻していった。

 膠着状態が続くゲームを切り崩したのは名護だった。8回、死球と犠打で一死二塁とすると3番當間光希がライトの前へ運ぶ。これがイレギュラーバウンドとなりライトの頭上を越える間に二走が生還した。しかし八重山も追い込まれた9回裏、相手のエラーから二塁へ進めて1番平瀬礼貴がレフトへタイムリーとなる二塁打。夏季大会で優勝した三年生たちとかぶるような見事な粘りで試合を振り出しに戻したのだった。

[page_break:振り切ったからこそ生まれた勝利のヒット]

振り切ったからこそ生まれた勝利のヒット

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名護・中村

 タイブレークで始まる延長戦。名護の攻撃は、違う見方をするならば八重山にとっては不運的にも見えた。

 タイブレーク走者を置いての試合開始。セオリー通りならば送って二・三塁としたいところだが。「1番の中村莉季は、本来ならば4番を打てる好打者。彼に送りバントは、僕の中ではありえない選択でした。」お前に任せると言われて奮起しないものはいない。この試合ここまでノーヒットだった中村莉季だが、初球から積極的にいったのが正解だった。センター前ヒットでの無死満塁が、ともすると「送りバントで。。」と脳裏にあっただろう八重山陣営にプレッシャーをかける。

次打者はショートゴロも、フィルダースチョイス。當間光希のレフト前ヒットで2点を追加。併殺で二死となるが、知念幸希東江真之介そして湧川颯の当たりは、捕球しようとした八重山野手陣の間、もしくは手前、あと一歩でというところで落ちるタイムリーとなった。

「ラッキーに見えても、振り切っていたからこその結果。当てにいくバッティングならそうはならない。」川上監督と約束した“振り切ること”を実践したナインたちが生んだ、勝利への6得点でもあった。

 その裏、粘る八重山に3点を奪われたものの大量リードで自分を見失うことなく投げ切った東江真之介が完投。「スタミナを考えても7回がメドでしたが、よく投げ切ったと思います。」と川上監督。既定の9回を投げきって100球を大きく下回る省エネの打たせてとるピッチングが、先輩たちに続く14度目のベスト8を演出したのだった。

(取材=當山 雅通

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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