試合レポート

浦和学院vs正智深谷

2019.09.26

浦和学院、ついに打線が爆発しコールドでベスト8進出!

浦和学院vs正智深谷 | 高校野球ドットコム
齋藤大輝(正智深谷)

 Bシード・浦和学院正智深谷、両チーム共に三奈木亜星(1年)、北田智郎(2年)と好投手を擁しているだけに注目の一戦である。試合は、今大会の地区予選から沈黙していた浦和学院打線がついに爆発した。

 先発は正智深谷がエースの北田、一方の浦和学院はエース三奈木ではなく左腕の伊藤和平(2年)が登板する。そしてスタメンだが、正智深谷は地区予選の熊谷西戦とメンバーは同じで、唯一の変更点は打順で萩原翼(2年)が1番に上がり、東野圭佑(2年)が7番に入った所だ。一方の浦和学院は初戦の川越工業戦とメンバーはほぼ一緒だが、三奈木が登板せずレフトに回った事で守備位置が変更になる。金丸斗南(2年)がファースト、小櫻耕介(2年)がサードに入り、高松陸(1年)が外れスタメンの1年生は4人に減った。

 試合は立ち上がりから正智深谷ペースで進む。

 正智深谷は初回、浦和学院・伊藤の立ち上がりを攻め、一死から2番・出浦太陽(2年)が四球で出塁すると、二死後、4番・田淵透吾(2年)がライト前へポトリと落ちるヒットを放ち、一死一、三塁とチャンスを広げる。ここで続く藤村伶旺(2年)がセンター前タイムリーを放ち、幸先良く正智深谷が1点を先制する。

 だが、正智深谷は頼みのエース北川がピリッとしない。

 その裏、一死から2番・里飛鳥(2年)に左中間へ二塁打を浴びると、3番・小櫻、4番・吉田瑞に連続四死球を与え、一死満塁と傷口を広げてしまう。それでも続く三奈木をサードライナー併殺に打ち取り、初回のピンチを無失点で切り抜ける。

 どうやら北田は前の試合登板後の状態が悪く、本人の意思で登板はしてみたものの思わしくないということもあり、正智深谷ベンチは初回で降板させることを決断した。

 これで今後の展開に暗雲が立ち込め始めた正智深谷であったが、2回表追加点を奪うことに成功する。

 この回先頭の東野が四球を選び出塁すると、浦和学院・伊藤に立ち直りの気配が見られず、続く岡登宇恭(2年)に強攻の雰囲気を感じた浦和学院ベンチは早くも伊藤を諦め、美又王寿(2年)をマウンドへ送る。

 だが、正智深谷は2番手・美又の代わり端を攻め立て、相手のワイルドピッチで無死二塁とすると、一死後、9番・国見智幸(2年)がセーフティバントを決め一死一、三塁とチャンスを広げる。続く萩原がセーフティースクイズを決め1点を追加すると、さらに2番・出浦も四球を選び、一死一、二塁とチャンスを広げる。ここで続く北田がライト前タイムリーを放つなど、浦和学院に対し早くも3点差をつける。

 その裏、果たして正智深谷のマウンドに誰がマウンド立つのか注目が集まったが、マウンドには今夏の登板経験もある松島佑樹(2年)がマウンドに上がる。だが、結果的にはこの松島が誤算であった。

 この回先頭の藤井一輝(1年)にライト前ヒットを浴びると、7番・金丸、8番・樋口結希斗(2年)に連続四球を与え、無死満塁とされ一死も取れずにマウンドを3番手・岡登に譲る。

 一方、無死満塁と反撃へ願ってもないチャンスを得た浦和学院がここから猛反撃を見せる。


浦和学院vs正智深谷 | 高校野球ドットコム
美又王寿(浦和学院)

 浦和学院は2回裏、無死満塁から9番・美又が一塁線を破る走者一掃となる二塁打を放ち、すぐに3対3の同点とすると、さらに相手のバッテリーミスで二走・美又が三進し無死三塁とする。続く吉田匠吾(1年)がライトへきっちりと犠飛を放ち、あっさりと逆転すると、二死後、3番・小櫻が死球で出塁し再度チャンスメイクする。続く吉田瑞樹(1年)もライト前ヒットを放ち、二死一、三塁とチャンスを広げると、5番・三奈木がライト越えの2点タイムリー三塁打を放ち6対3とする。さらに続く藤井もレフト越えのタイムリー二塁打を放ち、岡登をマウンドから引きずり降ろす。結局この回一挙7点を奪うビックイニングを作った浦和学院が、一気に試合の流れを引き戻す。

 こうなると、その後は浦和学院ペースで試合が進む。

 浦和学院は3回裏にも、正智深谷の4番手・齋藤大輝(2年)に対し、この回先頭の樋口が死球で出塁すると、続く美又がきっちりと送り一死二塁とする。二死後、2番・里がレフトスタンドへ2ラン本塁打を放ち9対3とすると、続く小櫻もサードゴロエラーで出塁し二死二塁とする。ここで4番・吉田瑞がセンター前タイムリーを放ち10対3としコールドペースへと持ち込む。

 4回裏にも浦和学院は、正智深谷の5番手・左腕の島田を攻め、この回の先頭、藤井の死球を足がかりとし、二死二塁から9番・美又がセンター前タイムリーを放ち11対3とする。6回裏には、この回先頭の金丸がショートへの内野安打を足がかりに一死満塁とすると、2番・里のセンター前タイムリーと続く小櫻の左中間へのタイムリーでさらに2点を追加し13対3とする。

 投げては、美又が3回以降も毎回のように走者は出すが要所を締め無失点で切り抜ける粘りの投球を見せる。

 結局浦和学院が6回コールドで正智深谷を下し、ベスト8進出を決めた。

 まず、正智深谷だが、この日序盤でいきなり3点のリードを奪うなど金星を挙げるのに願ってもいない展開であった。それがエース北田のアクシデントで一気にトーンダウンしてしまっただけに、悔やんでも悔やみきれない敗戦であろう。代わりに投げた投手達もことごとく浦和学院打線に捉えられてしまったのだが、やや四死球で無駄な走者を溜めてしまったのは、今後へ向け大きな反省材料であろう。まずは春までにエース北田がどんな状態であるかにもよるが、この現状は他の投手達にとってはチャンスでもある。彼らが本気でエースを奪うぐらいの気概を見せないと、前の熊谷西戦でも書いたが、本当の意味で北田のことをバックアップできる状態にならない。この日はそれを見せる絶好のチャンスでもあったが、生かせなかった。その点を田中監督も嘆いていたが、春以降特に投手陣で彼を越えようとする投手が出てくるか注視して行きたい。

 一方の浦和学院だが、この日はエース北田のアクシデントに助けられた面もあるが、いずれにせよ打線が爆発したのは大きい。特に中心打者である里の復活は今後へ向け好材料であろう。ただし、投手陣に関してはこの日やや精彩を欠いた。伊藤はもちろんだが、経験豊富な美又もピリッとせず、あわやの展開を招いたのは今後へ向けの反省材料であろう。帰り際、森監督が田中監督に「北田はケガ?あれがなかったら、たぶん負けていたよ」と挨拶していた。もちろん、社交辞令も入っているであろうが、おそらく本音に近い発言であろう。実際リードを奪ってからの森監督はベンチ内で手綱を締めていた。というのも、次の相手はMAX146km右腕・内田、田村の二枚看板を擁する埼玉栄である。埼玉栄は打線も好調であり、エース三奈木を以ってしても苦戦が予想される。浦和学院にとって真価が問われる試合となりそうだ。

(記事:南 英博

 

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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