星稜vs立命館宇治
立命館宇治を翻弄した荻原吟哉の技巧派に近い味わい
好リリーフを見せた奥川恭伸(星稜)
両校の先発は、立命館宇治が技巧派左腕の髙木要(3年)、星稜は好投手タイプの荻原吟哉(2年)。星稜には今大会ナンバーワン投手の奥川恭伸(3年)がいるので、[stadium]甲子園球場[/stadium]に押し寄せた4万4000人の大観衆は拍子抜けしたと思うが、結果だけ見ればこの先発起用は大成功だった。
1回にストレートが最速140キロを計測しているので荻原を技巧派と呼ぶわけにはいかないが、横変化のスライダーとストレートを交えた投球は技巧派に近い味わいがあり、立命館宇治の各打者は翻弄された。5回までに奪ったヒットは3回に岡田蒼司(2年)が放った1本だけ。5つの三振と6個のゴロアウトを見れば、「翻弄された」という表現がぴったりではないか。
荻原が抑えている間に星稜打線は先制、中押しと順調に得点を重ねていく。2回は髙木の暴投の間に走者が三塁に進み、1番東海林航介(3年)がカーブを捉えてセンター前に運んで1点。4回には2死三塁の場面で8番岡田大響(3年)がやはりカーブをセンター前に打ち返して2点目を入れ、6回には先頭の5番大高正寛(3年)が内野安打、6番山瀬慎之助(3年)が四球で歩いて無死一、二塁とし、7番福本陽生(3年)が右中間を破る二塁打を放ち3点目、さらに8番岡田が4回に続いてライト前に2点タイムリーを放って5点目を入れた。
奥川が投げていない間に5対0で6回表を終えれば、ほとんどの人はこれで勝負はあったと思ったはずだ。しかし、6回に投手を荻原から寺西成騎(2年)に代えたところから立命館宇治の反撃が始まった。2死三塁から4番浅野彰久(2年)が四球で歩いて一、三塁とし、ここから荒井豪太(2年)、古賀風地(3年)が連続安打を放って2点を返して、ピッチャーは寺西から奥川に代わった。
奥川が出てきても立命館宇治の攻撃は終わらない。2死一、二塁の場面で7番今野優斗(3年)がレフト前ヒットを放ち、3点目の走者を迎え入れたのだ。ここで注目したいのが立命館宇治のストレートに対する強さだ。荒井のタイムリーは寺西の142キロ、古賀のタイムリーは寺西の142キロ、そして今野のタイムリーは奥川の147キロ――。星稜ベンチがどのような思惑で荻原を先発にしたのかわからないが、6回の立命館宇治の攻撃を見れば技巧派に近い味わいの荻原の起用はストレートに備えた立命館宇治の各打者を大いに迷わせたことは想像に難くない。
ストレートに万全の準備をして臨んだ立命館宇治に対して奥川は7、8回の2イニング、ストレートを前面に押し出した力の投球で向かった。35球中、ストレートを23球投げ(全体の65.7パーセント)、ストレートの平均球速は149.2キロだった。立命館宇治のストレートに対する備えは6回に2人の打者に投げたことでわかったが、その備えを上回るストレート勝負で臨むというのが今の奥川の気概というか自信である。
奥川は9回にライトに回り、マウンドには4番手の寺沢孝多(3年)が立ち、先頭打者を四球で歩かせたが後続を抑え、星稜は5年ぶりとなる3回戦に進出する。
[page_break:両チームの個人成績表]両チームの個人成績表
(記事=小関順二)