試合レポート

熊本工vs山梨学院

2019.08.11

延長11回の激戦から光った両チームの逸材たち

熊本工vs山梨学院 | 高校野球ドットコム
相澤利俊(山梨学院)

  山梨学院vs熊本工の一戦は緊迫した試合展開となった。まず注目したいのは、エースの相澤 利俊だ。ここまで打者としては先制点を呼び込む右前安打。投手としても3回無失点の投球だ。相澤は走者がいなくてもセットポジションから始動し、125キロ~130キロ前後の速球、スライダー、チェンジアップを武器に打たせて取る投球を見せる。

 何より光るのは牽制技術、フィールディングだ。1回、2回は1回ずつ牽制で刺し、さらに2回裏、一死一塁の場面で、バント小フライをあえてワンバウンドで落とし、一塁へ送球し、そのあと、一塁手は二塁へ送球し、タッチアウトで併殺を完成させた。さらに5回裏にも併殺を完成させ、抜群のフィールディングを見せている。

 ここまで粘り強い投球を見せる相澤。投手を始めたのは高校からというのだから驚きだ。ちなみに相澤は左投げ右打ちという珍しい選手だが、左利きなのは投げるだけで、箸も書くのも右。2歳年上の兄と小さい頃、キャッチボールをしていて、兄の投げ方を鏡のように真似していたら左投げになっていた。今では山梨学院に欠かせない選手へ成長した。

 吉田監督は相澤を主将に抜擢したのは、人間性、メンタルの強さだという。
「技術は彼より優れた選手はいるけど、精神的な強さ、大人な一面は彼が一番」と野球部訪問の取材で語っていたことを思い出す。打者としても投手としても成長が見え、次のステージではどちらでプレーするかはわからない。今後も見逃せない選手だ。

 また山梨学院の遊撃手・小吹 悠人の守備も実に素晴らしいものがあった。試合序盤から好守備を連発。三遊間、センターよりの打球に対しても軽快に処理し、さらにきわどいプレーでもアウトにできる強肩。1点目をとられてしまったが、レフトの頭を超えて長打になり、カットマンに入った小吹はキャッチャーへ鋭いバックホームを見せ、そして8回裏には1番田中が放ったセンター寄りの打球を横っ飛びで捕球し、アウトに決め、ファインプレーを決めた。

 いわきボーイズ時代は投手で、130キロを超える速球を投げ込む投手として活躍したが、高校入学後から野手に転向。新チームから遊撃手の練習をするようになったが、現在の小吹の守備を作り上げたのは、昨年からコーチに就任した元横浜の部長・小倉清一郎氏の存在だ。当時、小吹の守備スキルは0に近い。何度も小倉氏から叱咤激励をされながらも作り上げてきた。

 レギュラーを獲得した1年秋と比べると、かなり上達が見える。課題は打撃。試合後、「先輩たちが作ってくれたチャンスを返せなくて申し訳ない」と涙する姿があった。サイズにも恵まれている選手なので、ぜひこの悔しさをバネに強肩強打の遊撃手に成長してほしい。

 勝利に貢献する好リリーフを見せた熊本工の2年生右腕・村上仁将はなかなか好投手だった。170センチ73キロと小柄だが、軸足に体重が乗り、下半身主導のフォームから投げこむ右のスリークォーター。常時130キロ前半~135キロを計測し、低めに伸びていく球筋は素晴らしいものがあった。

  また熊本工の二塁手・田中亮誠の守備は非常に素晴らしいものがあった。1回表には前進守備から捕球して二塁ゴロを体を反転させてスロー。さらにヒットと思った打球をことごとく正面で捕球した。ポジショニングのコツについて田中は「勘といいますか、打者のスイングやサインを見て、ここに飛びそうだなというのを感じて守備位置を変えます。そして一歩目も速く切れるよう、心掛けています」と語る。その感性がしっかりと当たっているのだから素晴らしい。

 ただ打撃面では思うような打撃ができなかった。二塁守備では上級クラスの守備をしているので、打撃面でさらにアピールをすれば、脚光を浴びる存在となるはずだ。

[page_break:両チームの個人成績表]

両チームの個人成績表

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(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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