試合レポート

桜塚vs能勢

2012.07.07

気持ちがこもった1点

4回裏、6失策で11失点。長い、長い守りを終えた能勢ナインは誰一人下を向いている選手はいなかった。
点差は15。5回表に6点以上を取らなければ試合が終わってしまう。しかも桜塚のエース・田尻一祥(3年)の前にここまでノーヒット。そんな状況はもちろんわかっていた。

5回表、先頭の4番西勇人(1年)が2球目を叩く。打球はセンターへ痛烈なライナー。しかしアウトになってしまった。悔しそうにベンチへ戻ってきた西に、ナインは自然と声をかけた。

「ナイスバッティング!」

そう、気持ちがこもったスイングだったからこその打球だった。
その気持ちは、後続の打者にも引き継がれる。打席はここまでマウンドを守ってきたエース左腕の伊藤大(3年)。
「どんな形でも塁に出たい」と臨んだ打席。フルカウントからの6球目、自信を持って見送ると、判定は『ボール』。伊藤は、「良かった」と一塁へ走った。直後に6番瀬川幸永(1年)がライト前へ待望のヒットを放った。一、二塁とチャンスを広げた能勢。
7番美谷真一(1年)は三振に倒れるが、しっかりと空振りをしてベンチに戻ってきた。この姿にも後続は奮いたった。8番長澤宏樹(1年)がストレートの四球を選び満塁。
そして、9番はバスケットボールからの助っ人選手・泉亮輝(3年)。マウンドの田尻に追い込まれるが、粘り、フルカウントに。7球目、判定は『ボール』。三塁走者のエース・伊藤がホームベースを踏んだ。
「下位打線の下級生で繋いで、3年生(の上位)に廻してくれた」。
伊藤は、自ら踏んだ1点とともに、そのことにも喜んだ。



1番十河新(3年)は空振り三振に倒れ、1時間16分で夏を終えた能勢。ネクストバッターズサークルで見届けた主将の小林大悟(3年)など涙を流す選手もいたが、下を向く選手は誰一人いなかった。
この日喫した三振は7個。そのうち6個が空振り、唯一見逃しだった瀬川は、最後にチーム唯一のヒットを放った。精いっぱいやりきったからこそ前を向けたのだと、挨拶の様子を見て感じとれた。
この瀬川を含め、1年生2人はまだ助っ人部員という立場。「この後、(本人たちが)どうなるかはわからない」と福田修一監督は話したが、この日のゲームはきっと財産になる。
エースの伊藤は言った。「(後輩には)来年も出てほしい」。

その伊藤は、「自分はそれほどの選手ではないので」と、上のステージで野球をするのは今の段階では考えてないという。
3年生4人でスタートしたチーム。去年の先輩と味わった夏1勝をモチベーションに、「先輩達を超える」と部員集めにも走り回った。助っ人選手を含め12名で臨んだこのチーム最初で最後の公式戦。
『去年を超える』という願いはかなわなかったが、「3年間高校野球をやったことは、これからの人生で必ず役に立つ時が来る」とエースは話してくれた。

スターティングメンバー
能勢
4十河新
6小林大悟 (主将)
2三浦徹也
5西勇人
1伊藤大
8瀬川幸永
3美谷真一
9長澤宏樹
7泉亮輝

桜塚
9岩切達也
4倉石勇輝
3湯浅孝明
2岡本涼平 (主将)
8對馬大介
6福井翔也
5福田雄飛
1田尻一祥
7吉岡祐一郎

(文=編集部)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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