九州学院vs帝京第五
九州学院が3回戦へ 技巧派捉え19安打 逆方向に11本
村上慶太
トーナメント表
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<第104回全国高校野球選手権大会:九州学院14-4帝京第五>◇13日◇2回戦◇甲子園
1回表、帝京第五(愛媛)の先頭打者がストレートの四球で出塁。2番がバントで送ったあと3番の岩来太陽内野手(3年)が右中間に二塁打を放って先制点を奪うのだが、その裏、九州学院(熊本)は打者9人を送る猛攻で5点を奪い、あっという間に逆転した。
この1回裏の攻撃で目立ったのが九州学院各打者の逆方向に打とうとする意識の強さだった。帝京第五の先発、積田拓海投手(3年)は、120キロ台の直球に90キロ台のチェンジアップとスライダーを織り交ぜる右腕の技巧派。技巧派と言っても、内角にはほとんど投げてこないので、打者は思い切って踏み込めるが、強引に引っ張りにかかれば平凡なフライアウトを連発する恐れがあった。しかし、このときの攻撃では、1番の左打者、大城戸陸琥外野手(2年)が左前安打、3番の右打者、園村慧人外野手(3年)が右方向へのポテンヒット、7番の右打者、渡辺拓馬捕手(2年)が右方向への二塁打と逆方向への打球が多かった。
技巧派を攻略するキーポイントは逆方向への打球、というのは誰でも知っているが、踏み込むタイミングで内角を攻められれば平凡な内野ゴロを量産することになる。WBC(ワールドベースボールクラシック)で活躍したアンダーハンドの渡辺俊介投手(元ロッテなど)、牧田和久投手(元西武など)は内角球への意識付けとスピードの緩急で打者を翻弄したが、直球に速さがない技巧派こそ打者を攻め込む意識、具体的には内角を攻めることが求められる。しかし、帝京第五が繰り出す積田、坂本大悟投手(3年)、國方蓮投手(2年)は、いずれも内角を突かない技巧派だった。それに対して九州学院各打者が放った19安打のうち、センターから逆方向に達したのは11本もあった。勝敗を分けたポイントと言っていいだろう。
私が注目したこの試合のもう1つのポイントは九州学院の4番、村上慶太内野手(3年)の存在である。実兄はセ・リーグの三冠王を射程内にとらえているヤクルトの4番、村上宗隆内野手(九州学院出身)で、体格は宗隆の188センチ、97キロに対して、慶太は190センチ、94キロ。肉体面では慶太のほうが勝っている面もある。顔も似ているし、動画で見ると打席内の構えも似ている。兄、宗隆の高校時の素質と完成度を弟、慶太に求め、熊本まで出向き見ようとしたが(雨天順延で予定が狂い、見られなかった)、宗隆は唯一無二の存在で、たとえDNAや親からの愛情を同等に受けても、その牙城に容易に迫れるものではないということを痛感させられた。
最も大きな違いはミートポイントの位置である。宗隆が捕手寄りなのに対して弟の慶太は投手寄り。直球に差し込まれてもそこから押し込む自信があるから、捕手寄りにミートポイントを置くことができる宗隆に対して、慶太はそういう自信がないから、投手寄りで球を捉えようとする。捕手寄りで球を捉えられれば、そこが慶太の偉大な兄に迫る第1歩になる。
(記事=小関 順二)