柏日体vs拓大紅陵
春の反省を生かした柏日体、攻守に完璧な内容で拓大紅陵粉砕
近年の千葉県の高校野球勢力図は、上位で20~30校が横一線に並んでいるという状態だ。つまり、甲子園出場の可能性を持てるところが非常に多いということでもある。
ただ、千葉県高校野球史を振り返ると、60~70年代には銚子商と習志野の2強時代が形成され、やがて80年代に入って半ば頃から拓大紅陵が台頭してくるのである。そして、やがて千葉県をリードする存在となっていき、92年夏には、4人の投手の分業ローテーション制を確立して、全国準優勝にも輝いている。
そんな拓大紅陵の基礎から今日までを築いたのが、小枝守監督である。
その小枝監督は、今大会前から、この夏を最後に33年間の高校野球指導の現場を勇退することを宣言していた。
それだけに、今大会の拓大紅陵にはことのほか注目が集まっていたのだが、図らずも初戦は銚子商だった。まさに、80年代にはしのぎを削り合った相手で、拓大紅陵としても銚子商を一つの目標としてきた時代もあったのだ。
その銚子商を倒すなどで、ここまで進出してきた拓大紅陵。
しかし、そこにはだかったのが、近年台頭してきた新勢力の一つとも言っていい柏日体である。
この春の県大会では[stadium]市原臨海球場(ゼットエーボールパーク)[/stadium]の試合で、千葉明徳に苦杯を舐めさせられていた。
その際に、金原健博監督は人工芝球場での戦い方として、「人工芝の球場は、叩きつけてゴロでも確実に一つ進塁していく野球をしていかないかんのや」ということを反省点として挙げていた。
春の反省を生かした柏日体は、この試合では、積極的な走塁で、ゴロGOのスタイルを徹底して、拓大紅陵を粉砕した。
2回の柏日体は、先頭の5番渡辺太君が左前打で出ると、続く佐藤龍太郎君が中越二塁打を放って、まず渡辺君を迎え入れた。
さらに、菊地君の一塁ゴロの間に三塁に進んで1死三塁。続く白銀君はまさに叩きつけ気味の内野ゴロだったが、三塁走者の佐藤龍君は好スタートで本塁を目指し、これが野選となって柏日体は2点目が入った。
そして5回にも柏日体は、7番菊池君が内野安打で出ると、バントで進み宇塚君のバント安打で一三塁。1番に戻って矢嶋君が遊ゴロを放つのだが、ここでも三走がゴロGO前提で好スタート。柏日体は、貴重な追加点をいい形で挙げた。
また7回にも、柏日体は1死三塁から白銀君が叩きつける打撃で、三遊間を破って4点目が入った。まさに、春の敗戦を生かして、人工芝に対応した野球を徹底した成果が表れたといってもいいものだった。
柏日体は、まだ甲子園出場がなく、近年躍進してきたところなのだが、ユニフォームも母体でもある首都大学野球連盟の日体大と同じ、青色地にゴシック体で「NITTAI」というものになっている。
このユニフォームを甲子園に導くことも、実は日体大としては「日体グループワンファミリー」という基本計画の中では、大事な要素になっているという。柏日体としては、その期待も背負っているのである。
(文=手束仁)