なぜ西武打線は打ちまくっているのか 過去の言葉から紐解く「山賊たち」の強さ
山川穂高選手 ※写真=共同通信
9月13日、埼玉西武ライオンズの切り込み隊長・秋山翔吾が今季20本塁打目を放ち、山川穂高、中村剛也、森友哉、外崎修汰らに続き、チーム5人目の20本塁打を達成した。日本人5人による20発はパ・リーグ初の快挙だ。
山賊打線の名前の通り、打って打って打ちまくっている彼らだが、いったい何がここまでの打棒を生んでいるのか。過去に彼らが語った言葉の中に、そのヒントが隠されていた。
山川が大切にしているのは「下半身のぶつけ方」
山川 ホームランバッターの中にもいろいろな打ち方がある。下半身の使い方にしてもそうです。たとえば中村 剛也さんと僕ではまったく違う。柳田 悠岐さん、筒香 嘉智、山田 哲人もみんな、ほぼ違う。
個人的には本当のホームランバッターは中村さんだと思っているのですが、中村さんの打ち方を見ていると『回転』を大事にしているんだろうなと感じますが、僕は回転よりも『ぶつける』なんです。
ブレないということを最優先するなら、その場で回るのが理想かもしれないですけど、ただ単純に打球の飛距離を出すことを考えるなら、軸足に体重を乗せてからグッーと前に移動して前足を着いてバシッと受け止めて、その力を上に伝えてスイングした方がいい。だから体は前に動いてもいいと思っています。
秋山が心掛けた、「点からライン」へのバット軌道
秋山 ホームランや飛距離を出すためにはバットの芯で打たないといけないので、捉える力を付けること。あとはシーズン中に疲れた時や苦しくなったときのために、数を振って体力を付けることを意識しています。(中略)
――「振る」という部分は体力や精神的要素の強化が大きいですが、技術的なアプローチで取り組んでいるテーマはありますか?
秋山 昨年は変化球に対し空振りや捉えきれないことが多かったので、構えの時にグリップの位置を下げて軌道を合わせられるように。「点」ではなく「ライン」で合わせられるようにしようと思っています。これが今までできなかったので、しっかり取り組んでいく。これが技術的テーマかもしれないですね。
堺ビッグボーイズの恩師が語る、森の勝負強さ
中学時代の森友哉を指導した堺ビッグボーイズの土井 清史監督は、
「ほかのチームからのマークもあったけど、中学時代から、バッティングに関しては凡退する場面をあまり見なかった。チームの選手たちの中でも、森に回したら点数が入る、という意識があった」と振り返る。
その勝負強さの秘密はどこにあるのか。土井監督に尋ねると「いい球が来れば初球からでも打っていく選球眼の良さ」との答えが返ってきた。
1球、1プレーへの意識の高さを求めた外崎
外崎、山川の母校でもある富士大では、1球、1プレーへの意識の高さが伝統となっていた。
プロでもともにプレイする多和田真三郎は大学3年時、こう話していた。「山川さん(現西武)を見ていると、バッティング1つにしろ、考えていて奥が深い。どれだけ考えていて、意識しているか」
外崎とともにプレイしていた後輩は「外崎さんはバッティングも守備も一球に対しての集中力がすごい」と、先輩の背中を見て、その伝統を引き継いでいた。
中村にとってはホームランの打ち損ないがホームラン!
中村 結局ホームランを打っているときのミートポイントって、写真とか見たら、どのバッターもだいたい一緒のところで打ってますよね。右バッターだったら踏み込んだ左足の先あたりで捉えています。引っ張ってホームランを打っているときはだいたいそのあたりです。
ホームランは打ちたいので、ヒットを狙うときも結構あるんですけど、ホームランを狙ってその打ち損ないがホームランだったらいいじゃないですか。だから完璧なホームランを目指して、そこでちょっとのミスでもぎりぎりスタンドに入る。
打撃に対する考え方、身体の使い方、テクニカル面、メンタル面…それぞれにやはり特筆すべきポイントがある。特に山川や中村の場合、その思考法は独特だ。
上述した短い文章からも、山川が中村のことを強烈に意識していることが伝わってくるが、それでも自分と中村の違いをハッキリと自覚し、憧れを抱きながらも、別のアプローチを取り、最終的には同じホームラン王というタイトルにたどり着いた。
ソフトバンクとの激しいデッドヒートの中、ついに逆転マジックが点灯した西武。レギュラーシーズン1位ながら、クライマックスシリーズでソフトバンクに敗れたのはつい1年前のこと。あのときの指揮官の涙はまだ記憶に新しいファンも多いことだろう。
あの敗戦を糧に一回り強く成長した山賊たちが、今年こそは日本シリーズ出場を果たすため、まだまだ多くのホームランを見せてくれそうだ。