法政大学 畔上 翔 選手
第103回 法政大学 畔上 翔 選手2012年07月22日
日本一のキャプテン論
”法政大学 畔上 翔選手”
――昨年の2011年夏の甲子園での日大三の勝ち上がりは見事でした。最後の大事な試合で、あれほどまでチームとして力を発揮できた理由はなんだと思いますか?
畔上翔選手(以下「畔上」) チーム全体できつい練習をやってきたという自信です。その一言。それしかないです。
練習で自信をつけて、『俺ら、他のチームとはやってきたこと違うんだ』と自信つけて、最後の夏に向かう。大事な試合で力を発揮するには、それしかないですね
――畔上選手がキャプテンとして、チームメイトに伝えてきたことというのは?
「畔上」 僕は、チームが負けるというのがすごく嫌だったんです。1回も負けたくなかった。だから、僕がみんなに伝えたかったのは、負けることの責任。
負けることが許されないんだぞって、ちょっと言い方がきついですけど。負けないためには、じゃあ何をすればいいんだ?って、そういう感覚で伝えてきました。
――チームメイトのみなさんも新チームが始まったときから、すでに畔上選手と同じ意識で取り組んでいたのでしょうか?
「畔上」 そうではなかったと思います。自分が一人で最初は突っ走ってました。よく他の記事なんか読むといいふうに書かれていることも多いのですが、実際はもっと独裁者みたいな感じでやってましたから(笑)自分でも言っていて、きつかったです。もともと、そういう性格じゃないですし、キャプテンをやるような人間じゃないと思っているので。
だから、寝る前とかメチャメチャ考えてましたよ。今日こんなこと言っちゃったけど、大丈夫かな?って。そんなことばかり考えてましたね。
――それでも、練習では毎日チームメイトたちを集めて、チームが強くなるために厳しいことを伝え続けてきた畔上選手。なぜ、そこまでやろうと思われていたのでしょうか?
「畔上」 やっぱり優勝したかったんです。絶対、口には出さなかったんですけど。日本一になるって周りには言わなかったんですが、たぶんそれをずっと知ってるのは、いまのキャプテンの金子じゃないですかね。同じ部屋だったので、『日本一なりてー!』って部屋で口癖でよく言っていました。
――いま、改めて、キャプテンとして大事なことってどんなことだと思いますか?これから新キャプテンになる球児にアドバイスをお伺いできればと思います。
「畔上」 やっぱり自分がやることです。口じゃないですね、絶対。体で動いて、行動で示さなきゃ誰もついてきてはくれないです。
畔上が語る“素振り”の重要性
――続いてバッティングに関してお伺いしていきたいのですが、畔上選手は2年秋から、ヒットを量産し、安定した打率を残してきました。当時は、どのような意識を持っていたのでしょうか?
「畔上」 逆方向を意識していたかもしれないですね。やっぱり3番という打順もあってヒットを多くしたくて、自分よりを意識しているとデメリットが多くなると思ってて、それで、逆方向を意識し始めて、そのうち逆方向のホームランが打てるようになりました。甘く入った球をしっかり捉えて、センターに飛ばすイメージですね。
――変化球への対応力も高かった印象がありますが?
「畔上」 高校に入って最初の頃は、変化球は全然打てなかったんです。でも、変化球ってバットコントロールだと気づいて、ミートポイントだけで勝負するようにしました。
よく『変化球を拾う』とか言うじゃないですか。その『拾う』というのは、手首をしっかり返さないと拾えないと思うので。ただ、それが出来るようになるのは、スイングを続けたことですね。バットスイングを何回もして。それも崩されたスイングとかじゃなくて、自分のスイングをしっかり出来るようになれば、手首も返ってきます。
――それが出来るようになったと実感した場面はありましたか?
「畔上」 甲子園で6打数4安打を打った時に、あとでVTRを観たら『変化球を拾ったり出来るのは、素振りを何回も何回も行うことで出来るようになるものです』と解説者の方がおっしゃってくださったのを聞いて、すごく嬉しかったですね。
『あ、やっぱり素振りって大切なんだな』って思いました。中には、難しいことを言う人もいるんですけど、でも実際の打席に立ってみると、頭に何個も何個も意識しないといけないことを考えて操作していたら、それが動きに伝わるのが遅くなると思うんです。それだと、打てないと思うんですよね。手も出ない。だからこそ、動きはどういうふうにすれば、自然と体に身につけられるかを練習でやるようにしていますね。
――畔上選手が、素振りをする際に意識していることとは?
「畔上」 高校時代と今を比べると、また違うんですけど、自分は金属から木製に変わって最初すごい苦労して、最近やっと掴めるようになってきたんですよね。
それは、どうやって掴んだかというと、今自分が意識しているのは、バットを構えたときに、体と並行にバッて出てくる感じ。たまたま、ユーチューブの映像で王選手のスイングをみたんですけど、右足のつま先を叩く感じでバットを振るんですよね。それを真似してやってみたら、全然違うんですよ。今まで、詰まっていた当たりが、全然詰まらなくなりました。なんでこんな面白いように打てるのかな?という感覚。
よく『線で打て』とか『軌道に合わせて打て』とかあるじゃないですか。それも合っていると思うんですけど、元々自分はバットが寝て入ってくるクセがあったので、そうではなくて、バットは体と並行に前に出すという意識なんですね。でも、これは絶対合う・合わないが人によってあると思うんですけど。
【上3枚の写真は現在、畔上が実践しているバットを体と並行に出すバッティング】
【こちらの3枚は高校時代までの畔上選手のバッティング】
自分の底辺に戻る方法を見つけよう
”積み上げてきたものがあるからこそ、振り返れる”
――高校時代に話しが戻りますが、畔上選手は常に高い打率を残されていました。当時の心境というのは?まだまだ、いけると思っていたのか、それとも不安もあったのか。
「畔上」 僕は、そもそもあんなに打率が残せるタイプではないんですよね。やっぱりいい結果が出続けると怖くなってきます。悪い時は上がっていくしかないけど、いい時は落ちていくしかないじゃないですか。落ちている時になって、『何が悪いのかな?』って思いますよね。その時に、すぐ自分の底辺に持っていけるための練習方法を見つけることが出来ていたのがよかったんだと思います。
それが自分では、逆方向に打つことでした。自分は調子が落ちると、練習でも絶対に逆方向にしか打たない。
不 調の時というのは、ボールの見切りが早くて、バットとボールもすごく離れている。それで、どうしても長打ヒットが打ちたいから、こねてしまってセカンドゴロ、ピッチャーゴロ、ショートゴロになってしまうことが多くなるんです。
それを逆方向にひたすら打ち込むことで、体の近くのポイントで打つ感覚を取り戻していきました。
――高校時代から、そこまで自分のバッティングを振り返ることが出来ていたのですね。
「畔上」 それほどまで練習してきましたし、それまでの過程があって、積み上げてきたものがあるからこそ、自分のバッティングがどうなっているのか、どう打っているのかが分かると思います。
――畔上選手は、とにかくよく練習をされていたと伺いましたが、なぜ当時からそこまで練習に対してのモチベーションが高かったのでしょうか?
「畔上」 上手くなりたいからです。でも、誰をこそうとか、誰に負けたくないとか一切なくて、ただ単に自分が上手くなりたいだけ。いまは、六大学リーグでも前(日大三)のメンバーが試合に出ているので、誰かが打てば『すげーな』と思いますが、ライバルという意識はなくて、やっぱり自分がもっともっと上手くなりたいんですよね。
畔上選手、ありがとうございました。
日大三を卒業して、法政大に進学後も、畔上選手の野球への探究心は変わりません。これからの益々の活躍がとても楽しみです。