Interview

「横浜が甲子園に出ても驚きはありません」白山高時代の教え子・森田球斗が村田浩明監督の凄さを語る

2021.08.20

 3年ぶり甲子園出場の横浜は、初戦で広島新庄と戦い、1年生の緒方の逆転サヨナラ本塁打で、見事に初戦突破を果たした。今年は往年の横浜を思い出させる完成度の高い野球に横浜ファンを唸らせている。昨年4月に監督に就任した村田浩明監督に対して、「横浜を再建させた」と手腕を高く評価する声が多い。

 そんな村田監督の前任は公立の白山高校。13年秋から監督に就任し、18年夏は北神奈川大会ベスト8に導いている。今回は白山の教え子で、現在、BCリーグの神奈川フューチャードリームスの森田 球斗に話を伺った。

村田監督の厳しい指導に反発することもあった

「横浜が甲子園に出ても驚きはありません」白山高時代の教え子・森田球斗が村田浩明監督の凄さを語る | 高校野球ドットコム
森田球斗©Kanagawa Future Dreams/横浜・村田浩明監督

「村田先生ならば、横浜を甲子園出場に導いてもあまり驚きはないですね」
と語る森田。

 川和中学校時代は横浜青葉ボーイズでプレー。私学でプレーを考えていたが、当時は控え選手だった。
「当時のチームは実績はあって、レギュラーは力のある選手が多かったんです。でも自分は大した選手はなかったですし、私学は厳しいかなと思っていました。その時、村田先生の指導力の高さや評判の高さは僕たちの間でも伝わっていて、白山でプレーしようと思いました」

 13年秋から白山の監督に就任した村田監督。まだ黎明期で、まだ神奈川の頂点を狙えるチームの土台が出来上がっていなかった。

「村田監督は捕手出身ということで、緻密な配球をやられますし、本当に深く野球を知っている方だなと思うことはあります。ただ、僕たちはそれを教えてもらうレベルに達していなかったんですよね。野球のことを踏み込んで教えてもらうようになったのは僕たちが卒業した後だと思います」

 当時の村田監督の指導は生活指導が大半。携帯使用、授業中の態度など高校球児からすれば守って当然のルール。ただ、それができない、破る選手も多くいたという。村田監督からすれば徒労感を感じる話ばかりだ。

「僕も優等生ではなかったですし、村田先生に厳しく指導されることは多々ありました」

 当時の白山は、ベスト8に入った時のチームや横浜の選手たちのように意欲、向上心に満ち溢れた選手ばかりではない。厳しい神奈川を勝ち抜くには、私生活、練習においても厳しくなるものだが、ルールや、そういった厳しい雰囲気に適応できず、部を辞めてしまう選手もいた。森田も辞めたいと思っていた選手の1人だった。
「でも辞めさせてくれなかったんですよね。ある時、村田先生に反発したこともあります。だけど、今となって本当に辞めなくて良かったと思います」

 村田監督は森田のことを中心選手として欠かせない存在と見ており、さらに高校を卒業しても活躍できる素質を持った選手として高く評価していた。もちろん生活面などで未熟なところはあったが、それでもドロップアウトさせてはならない選手と見ていた。

 森田は2年秋、主将に就任。一度は退いたものの、最終的には主将としてチームを引っ張った。2016年夏、4番ファーストとして出場したが、2回戦の神奈川工に2対3で競り負け、初戦敗退で終わった。

[page_break:村田監督がいなければ今の自分はない]

村田監督がいなければ今の自分はない

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森田球斗©Kanagawa Future Dreams

 卒業後、徳島インディゴソックスに練習生として入団した後、本契約となり、19年には独立リーグ日本一を経験。20年から神奈川へ移籍。その際に、鈴木尚典監督、荒波翔コーチと横浜の大先輩とともに村田監督に激励を行った。

 移籍1年目はBCリーグ優勝を経験し、今年はチームで日本人トップとなる7本塁打をマークし、恵まれた素質の高さを開花させている。

 高校を卒業して4年半が経ち、社会人としての常識を身につき、改めて村田監督に感謝の思いと凄さを実感している。
「村田監督がいなければ、社会人としての一般常識を身につけることなく、卒業していたんだなと思いますし、道を踏み外していたのでは?と思っています。僕たちの後輩たちが頑張って県ベスト8にいきましたが、僕たちのスタート時からすれば、想像できないことで本当に凄いことです」

 0からスタートだった公立校を一から育てて、県内上位まで育てることと、低迷気味だった名門を再建するのは別ベクトルの大変さがあるだろう。名門の監督に就任するのは相応の覚悟がなければその役割は担うことはできない。

 

 それでも森田は大人になって村田監督の根気強さ、人情深さを実感している。迷惑をかけた申し訳なさも感じている。
 だからこそ、横浜を再建できると強く信じていた。

 森田は野球人生の最後をかけてプレーをしている。
「今は自分に指導してくれている鈴木監督のためにも、監督から15本打てといわれていますので、それを達成できるよう頑張っていきたいです」
と意気込んだ。

 白山時代の教え子の話を聞いて、村田監督は横浜を緻密さだけではなく、芯が強い骨太なチームに育てるのではないか。そう感じさせるエピソードだった。

(記事=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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