Interview

200センチを誇る147キロ左腕・今西拓弥(早稲田大)がドラフト候補に成長したターニングポイント

2020.10.18

 今年のドラフト候補に挙がる投手で最も大型な投手といえば、早稲田大の今西拓弥だろう。200センチの長身を生かし、大きくワインドアップに入る。そこから大きくテークバックを取って振り下ろすストレートは彼にしか無い独特の角度があり、カットボールを駆使し、リーグ戦に通算36試合に登板している。

 名門・広陵高校出身だが、あるターニングポイントがなければ今は野球を続けているか怪しい選手だった。

転機となったフォーム変更

200センチを誇る147キロ左腕・今西拓弥(早稲田大)がドラフト候補に成長したターニングポイント | 高校野球ドットコム
今西拓弥(早稲田大)

 小学校3年生から野球を始め、身長も高く、背の順は常に後ろだったと振り返る今西。中学生3年生の頃には197センチに達するほど。 志貴ボーイズ時代は中学2年秋にタイガースカップに出場を決めている。個人としてはボーイズの選抜選手で行われる鶴岡一人杯に関西選抜として出場した。そして小学校の時に見ていた広陵のエース・有原航平(早稲田大―北海道日本ハム)に憧れる形で広陵に入学した。

 広陵といえば、数多い野球名門校の中で、規律に厳しいチーム。そういった土壌が数多くのプロ野球選手や大学、社会人で活躍する選手を輩出している。今西も多くのことを学んでいた。
「監督である仲井先生から人間的なところ、掃除1つにしろ、様々なところを教えていただきまして、社会に出ても恥ずかしくないようなところを指導していただいたと思います。広陵で学んだことは、卒業してから身になったということを凄く感じます」

 

 だがピッチングについて悩む一方だった。200センチにも達し、今西はテークバックを捕ることを苦手としていた。
「長い腕なので、小さく畳んで使おうと毎回タイミング合わずバラバラになっていて 力を入れたいところで入りにくい。それをどう改善するか高校のときは悩んでいて、ずっと探していた感じです。」

 ストレートの球速は上がらず、3年春まで入学当初から上がらず、120キロ後半程度あった。ここでコーチからこんなアドバイスをもらった。

 「テークバックをもっと大きく取ったらどうだ」

 このアドバイスを信じ、練習を重ねたところ、ストレートの球速は大きくレベルアップし、139キロまでスピードアップ。さらにコントロールも大きく改善した。最後の夏が終わり、仲井監督から「落とされるかもしれないけど、受けてみたら」と、早稲田大のスポーツ推薦のセレクションのため、早稲田大のグラウンドへ赴き、見事に合格が決まった。今西はあのアドバイスは本当に大きかったと振り返る。
「3年春の時点でベンチから外れ、裏方の道を考え、大学では勉強に専念しての進学ということも選択肢として考えていました。コーチの方のアドバイスは大きかったと想います」

 今西にとって1つのターニングポイントとなった。

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]

早稲田大でもさらに意識を深め、期待通りの大型左腕へ成長

200センチを誇る147キロ左腕・今西拓弥(早稲田大)がドラフト候補に成長したターニングポイント | 高校野球ドットコム
今西拓弥(早稲田大)

 早稲田大入学後、学生寮に住みながら今西が取り組んだことは大学の栄養士からいろいろ食生活について学び、日々の食事に工夫を取り入れ、体作りに専念。また、トレーニングについても、解剖学などを学びながら、体の使い方について理解を深めた。

 また早稲田大はトレーニングメニューも工夫を凝らし、棒を使って両腕を伸ばした状態で走ったり、いろいろな用具を使って練習する投手の姿が見受けられる。ただやるのではなく、どの筋肉を鍛えるトレーニングなのかを理解しながら進めていくと、球速もみるみる上がり、投球フォームのブレも小さくなった。

 「大学で取り組んでいるランメニュー1つにしても、様々な工夫が来られていて、実際に自分の投球フォームのブレも小さくなって非常に良い影響を与えています」

 体の使い方について学び、フォームのことも研究をしたが、投球フォームについての考え方はあえてシンプルにしている。
「僕の場合、不器用なので、1つ1つのところを細かくやってしまうと、力が分散してしまい、うまく投げられないので、意識することといえば、しっかりと足を上げる。そこから1つ1つを意識すると動きが止まってしまう感じがあるので、動きを止めないよう、全体的に連動している感覚で投げます」

 ストレートの球速も順調に成長し、1年秋には最速142キロに達し、3年生には147キロに到達。

 さらに小宮山悟監督からはカットボールを学んだ。ストレートとほぼ同じ握りで、親指を少し曲げることで投げる。最初はシュート回転をしまったが、少しずつ感覚をつかんだことで、大きな武器となった。
「だいぶ投球の幅が広がりましたし、こんなにも自分を助ける武器になりました」

 結果、3年春は2勝0敗、防御率0.77と好成績を残し、ドラフト候補へ浮上した。

 その高い潜在能力を発揮するための課題として、本人も、小宮山監督もメンタル面だと語る。小宮山監督は「あれほどの体格なので、あれこれいじりすぎると技術を崩してしまうので、特に指導はしていません。彼の課題はメンタル。思い通りに行かないときに何もできないことが多い。そこを我慢して投げられるかが課題でしょう」と注文をつける。小宮山監督の指摘に対し、今西は「そのとおりだと思いますし、それができなかったのは昨秋でした。早慶戦では、自分がうまくいかないところでもう一度、チャンスをいただいたのにも関わらず、同じ結果になってしまい去年の反省の部分だったり、すぐに修正する課題であります」

 そしてプロ志望届を提出し、アピールしたい今シーズン。春のリーグ戦では登板がなかったが、この秋はここまで2試合に登板をしている。

 今西の長所はアドバイスをしっかりと聞き入れ、それを自分のものにできるセンスがあること。それは3年春のフォーム変更から始まった。ここまでの野球人生を振り返ると、今西は人に恵まれた選手だといえるだろう。あとはそれまで支えてくれた方々の恩返しとなる結果を残すだけだ。

取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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