Interview

すべての過程をプラスにして。社会人屈指のホームランアーチスト・今川優馬が辿りついた打撃の答え【後編】

2020.04.15

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JFE東日本のスラッガー・今川優馬が語る打撃理論はシンプルでも具体的だった!【前編】

回り道があったからこそ自分の引き出しを増やすことができた

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今川優馬

 打撃動作の1つずつの役割、目的を語っていただいた今川。ここまでの話を聞くと、あることに気づく。今はアッパースイング、レベルスイングなどいろいろな方法がある。とはいえ、打撃の共通点は同じだ。それは今川も同意する。

「ポイントは同じですね。インパクトまで勝負で、どんなスイング軌道でも当たってからが勝負です」

 今川は大学時代からアッパースイングに改造し、長打力を大きく伸ばした。そこには大きな苦労があったという。その中で打撃のヒント、自身の理論を築き上げてきた。

「結果的に僕は遠回りしてきました。できれば、最短でできれば理想ですけど、最短でいくだけでは、いざ不調になった時、戻し方が分からないです。今のスイングに至るまで、自分はいろんな打ち方を試してきました。
 自分も不調に陥った時、こうしておけば戻れるというのがあるので、良かった点だと思います」

 だからこそいくつかのスイングを持ったほうが良いと今川は語る。

「投手は打者のタイミングを崩して投げてくるわけで、打撃練習だけで気持ちよくなってしまってもよくありません。崩された中でも強い打球を打てるか。その中で引き出しがあることには越したことがないですね」

 今川の打撃練習を見てみると、ジャストミートして捉える打球もあれば、もちろん打ち損じもある。その中で泳ぎながら、右中間へ鋭い打球を打っている場面がいくつかあった。もちろん偶然ではなく、狙って打っているもの。崩されても強い打球を打つことも心がけており、対応力を高めるために、ブルペンに入って投手のボールを見ている。

「JFE東日本は、色んなタイプの投手がいて、ボールのキレも素晴らしい投手ばかりです。そういう投手たちの球筋を見るだけでも全然違います」

その中で今年は対応力を磨いて、出塁率を高めることを意識した。

「今までは2ストライクになってもフルスイングすることを意識しました。今回は2ストライクになっても強くスイングすることは意識する中でも、しっかりとボール球を見極め、四球を選ぼうと考えました」

 結果、まだオープン戦の本塁打は1本だけだが、四死球率は高まり、結果的に出塁できる選手となっている。常に本塁打を打てるわけではないからこそ、一打席の内容を高めて、さらに打ち取りにくい、嫌らしいスラッガーへ化けようとしている。

[page_break:自分を信じてプレーするだけ]

自分を信じてプレーするだけ

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今川優馬

 そして今川は長年の課題として守備を掲げてきた。元プロの山森雅文コーチから守備の指導を受け、さらに最も課題としていたスローイングについても、練習の中にジャベリックスローを取り入れた。その結果、「強いスローイングができており、手応えを感じています」と守備力向上にも成功をしている。

 ドラフト前の大舞台がなくなり、昨年1年間、今川を見てきた落合監督は、
「言い訳はしてほしくないと思っています。大学野球でも最終学年にチームの不祥事で大学選手権を辞退し、アピールする場が失われました。ただ、大事なのは現時点の実力を真摯に受け止め、努力を続けることです。
 見てくれている方はいますので。本人も自覚はしていると思いますが、そういう素振りは見せたくないので、しっかりと面談して伝えていきたいと思います」

 このように接するのは今川の選手としてのスタイルを認めてこそだ。入社前、今川は落合監督に自身のスタイルを貫きたいと伝え、落合監督も伝えた。そして一つ注文をつけた。

「結果を出し続けること。結果を出し続ければそのスタイルは認めてくれる。それができるポテンシャルを持った選手」と高く評価していた。

 その期待通り、今川はベストナインを獲得するまでの選手に成長。ドラフトも狙える位置にきた。非常に苦しい状況だからこそ、強い気持ちを持ち続けてほしいと願っている。むろん、今川もそのつもりだ。

「ドラフトまでの(全国)大会がなくなってしまったので、アピールの機会はないですけど、今できることをやってドラフトで良い結果がついてくればと思います。自分を信じてやるしかないです」

 限られた機会の中で、今川にしかない強みを見せることができるか。この危機を乗り越え、夢を切り開く1年にしたい。

(取材=河嶋 宗一

関連記事
◆今川選手のインタビューを読む⇒社会人野球を代表するホームランアーチスト・今川優馬(JFE東日本)「高校通算は2本塁打。レギュラーを必死に目指した3年間」vol1
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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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