田浦文丸(秀岳館)「必然の活躍を生むチェンジアップと冷静なマウンド捌き」
9月4日、第28回WBSC U-18ベースボールワールドカップ4日目。連日活躍を示しているのは田浦文丸(秀岳館)だ。オランダ戦で6回からリリーフで登場し、4回を投げて9奪三振の好リリーフを見せた田浦。活躍の秘訣を探った。
各数値を示す田浦の無敵のリリーフぶり
田浦文丸(秀岳館)
野球界では制球力ある左腕は非常に評価が高くなる傾向にある。その制球力はストライクへ投げられる能力が高いということだが、高いレベルで活躍できるコントロールが良い投手というのは、ストレート、変化球で必ずストライクが取れるボールがあることだろう。
田浦文丸とは、まさにその条件を満たした左腕である。最速148キロをたたき出した左腕だが、ピッチングを見ると制球力重視。しかしもともと140キロ後半をたたき出す投手が制球力重視で140キロはかなり切れがある。
さらにスライダー、カットボール、チェンジアップはストライクが取れる。ピッチングに余裕が感じられるのだ。
今大会の田浦の活躍は非常に目覚ましい。まず今大会トップクラスの破壊力を誇るアメリカ打線相手に、2.1回を投げて5奪三振に抑える投球を見せると、次のキューバ戦では6回表、一死一、二塁の場面でマウンドへ登り、二者連続三振でピンチを切り抜け、2.2回を投げて5奪三振。
そして6回裏からマウンドに登った田浦は快投を披露。今日は3連投だが、140キロ前後のストレートは相変わらず切れが良く、スライダー、チェンジアップも低めに決まり、打者の手元で曲がるので、オランダ打線が捉えきれない。9回裏には、この日、最速となる145キロのストレートを投げ込み、4回9奪三振の快投。ここまで奪三振ラッシュが続く田浦だが、通算成績に直すと以下の通りである。
9回19奪三振、被安打率.067、K/BB 9.5、奪三振率19.00、防御率0.00
無敵リリーフという格言がぴったりな成績である。今大会、猛威を奮っているスライダーとチェンジアップ。高確率でストライクが取れて、空振りを奪える精度をいかにして身に付けたのか。
「自分が身に付けたのは高校生の時からで、川端健斗が投げているのを見て自分も投げたいと思って、川端から投げ方を聞いて、習得しました」
打者の手元でスクリューのような変化をするボールだが、握りはごく普通のOKボール。投げる時のポイントは?
「とにかく腕を振ること。ボールを追い抜くようなイメージで投げています。チェンジアップは自分の中で自信がある球種です」
必然の活躍を生む冷静なマウンド捌き
田浦文丸(秀岳館)
またチェンジアップが決まっているのは、外国人の打者の影響もあるという。
「日本は当ててくるイメージですが、外国人はどんどん振ってくれるので、自分としては投げやすいです。チェンジアップは自信がある球種ですので、自信をもって投げることができています」
心理的な余裕が、今回の好投を生んでいるともいえる。田浦はマウンド裁きを見ると実に冷静。プレートを外したり、間合いを変えたり、牽制を入れたり、一定のリズムで投げるようなことはしない。これは常に冷静になることを心掛けている。
「鍛治舎巧監督からいわれていることですが、ベンチから『冷静になれ』と。センバツ期間中、ずっと冷静になることを意識しながら投げていました」
また打者としても才能がある田浦だが、そこで感じ取ったことを投球にも生かしている。
「監督が話していることですが、打席に立つと間合いが長い投手でしたり、牽制を入れたりする投手を見ると、何か嫌というか、集中しにくいんですよね。そういうのを、投球に活かしています」
こういう話を聞くと、鍛治舎監督は心理的なところまで踏み込んだ指導をしているのが分かる。思えば、5月。熊本の招待試合で、田浦は早稲田実業との試合で雪山幹太を敬遠して、清宮幸太郎と勝負する一幕があった。スタンドは騒然としていたが、あの時の田浦は落ち着き払っており、自分のボールで勝負することができていた。常に冷静に。言葉だけではなく、行動にも実践することができる。田浦の今回の活躍は必然なのだ。
(取材/文・河嶋 宗一)
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