4月20日、阪神甲子園球場での広島東洋カープ戦で5回75球4安打5奪三振無四球無失点の好投。プロ初先発初勝利と同時にNPB入団ルーキーで最初となる白星も手にした阪神の伊原 陵人(智弁学園~大阪商業大~NTT西日本)。
170センチの小兵ながら堂々としたマウンドさばきで、ここまで7試合に登板、13回3分の1を投げ1勝1ホールド、奪三振11、与えた四球2、被打率.136で防御率0.00と文句のつけようのない成績を挙げている。藤川 球児監督をはじめとする首脳陣や、阪神ファンから早くも絶大な信頼を勝ち取っているが、昨年ドラフト仕掛け人の1人である伊原投手の元担当スカウトも、祝福の言葉を口にした。
その人とは昨年末で阪神を定年退職し、今季からは故郷香川県の四国アイランドリーグplus・香川オリーブガイナーズで指揮を執る熊野 輝光監督である。
志度~中央大~日本楽器(現:ヤマハ)と辿ったアマチュア時代には1984年ロサンゼルス五輪日本代表主将として金メダル獲得のウイニングボールを手にし、1985年には阪急ブレーブスでパ・リーグ新人王にも輝いた。引退後は主にスカウトとしてオリックスで金子 千尋投手(現:日本ハム投手コーチ)、山口 和男(現:同球団スカウトグループ長)、阪神でも才木 浩人投手(須磨翔風)などを担当している。
特に投手の潜在能力を見抜くスカウティング能力に他の追随を許さなかった熊野氏は伊原についても大阪商業大時代から注目した上で「左打者のインコース低めに連続して投げ込める」と実戦力の高さを評価。即戦力の左投手を藤川監督が欲していたニーズとも重なり、関西大の左腕・金丸 夢斗(神港橘)の4球団抽選が中日ドラゴンズに決まるや否や、1位指名が決まった経緯が、今の活躍へとつながっている。
残念ながら、広島戦における伊原の活躍は敵地での徳島インディゴソックス戦が直前に控えていたため映像では追えなかったが、試合後に吉報を聴かされると「ありがとうございます」と満面の笑み。「私的にはしばらく中継ぎと思っていたけど、藤川 球児監督が先発をさせてくれて結果を残せたことはよかった。ここで勝ったことでもっと成果を残せるように頑張ってほしい」と、同じく熊野監督が担当した2位・今朝丸 裕喜(報徳学園)との左右両輪で虎の近未来を担う選手たちに期待を寄せた。
最後は「ここで伊原が頑張ってくれれば、香川オリーブガイナーズの選手たちにもいいたとえ話ができると思います」と、過去には又吉 克樹(2013年・中日2位)をはじめ2006年から11年連続ドラフト指名を受けながら、直近では2020年から4年連続ドラフト指名なし。かつ成績面でも四国アイランドリーグplus2022年後期から5季連続リーグ戦最下位に低迷する球団への活力をみなぎらせた。
この日、今季も投打にドラフト候補性が居並ぶ徳島インディゴソックスに対し5対5ドローと健闘。試合後には「投手と打者がしっかりつないでいけたら負けることはない。そうしないと注目されないし、みんなもっと上を目指しているならもっとアピールしなきゃ」と熱い言葉で鼓舞した。伊原が甲子園で吹かせた勢いを、瀬戸内を経由して四国・香川の地に持ち込もうとしている。