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東北学院大準硬式野球部が4季ぶりリーグ優勝!1試合平均13得点と打線爆発、“二刀流主将”は打撃三冠に輝く

2023.05.16

東北学院大準硬式野球部が4季ぶりリーグ優勝!1試合平均13得点と打線爆発、“二刀流主将”は打撃三冠に輝く | 高校野球ドットコム
リーグ優勝を決め、喜びを爆発させる東北学院大の選手たち

 5月13日、東北地区大学準硬式野球春季リーグ戦の最終節が行われ、山形大医学部に9対0で勝利した東北学院大が、4季ぶりのリーグ優勝を決めた。

 3季連続で苦杯をなめ続け、昨秋は優勝決定戦で山形大医学部に敗戦。今春は開幕戦こそ黒星を喫したものの2戦目から9連勝し、頂点に立った。リーグ戦優勝回数は春秋計100回以上を数え、全国制覇の経験もある東北随一の準硬式野球強豪校が、8月に開催される全日本大学準硬式野球選手権の舞台に帰ってくる。

最大の強敵を倒し歓喜のV

 あと1勝で優勝が決まる13日の山形大医学部戦。東北学院大打線の前に立ちはだかったのは、東北地区屈指の好投手・金原 広汰投手(6年=仙台一)だった。最速146キロを誇り、大学ラストシーズンとなる今春もこの日の試合前まで防御率ランキングトップを走っていた剛腕。容易に攻略できる相手ではなかったが、強力打線が序盤から猛攻を仕掛けた。

 3回、1番・柳沢 友哉外野手(2年=仙台商)が左翼席へ運ぶ先制2ランを放つ。4回は7番・佐々木 陽矢内野手(4年=仙台東)の2点適時三塁打などで3点を追加し、さらに8回にはダメ押しの4点を奪い金原をマウンドから引きずり下ろした。投げては先発・紫葉 優太投手(4年=東北)が8回4安打無死四球8奪三振無失点と快投。投打がかみ合った完璧な試合運びで8回コールド勝ちを収めると、マウンド上に歓喜の輪ができた。

 先制2ランの柳沢は「ずっと良い結果が出なくて、それでも1番で使ってもらっていたので、最後だけは自分が打とうと決めていた。打ててよかった」と安堵した。昨春は1年生ながら開幕から4試合連続で1番を任されるも、安打は出ず。結局シーズンを通して無安打に終わり、秋は下位打線や途中出場での起用が続いた。

 今春は全試合で1番を打ち、3割を大きく超える打率をマーク。盗塁王にも輝き、リードオフマンとして急成長を遂げたシーズンになった。「東北のナンバーワンピッチャーから打てたことは自信になるし、『これからは学院が東北地区を引っ張っていかないといけない』と思わせる姿を後輩に見せつけられた」。好成績ながら、本人はここまでの打撃内容に満足していたわけではなかったが、大一番で、納得の一発を放ってみせた。

[page_break:打撃メインの練習で驚異の130得点/実績と将来性を兼ね備える投手陣]

打撃メインの練習で驚異の130得点

 今春のチームの特徴はなんといっても打撃力。昨秋は一度もなかった2ケタ得点が6度あり、10試合で計130得点を重ねた。本塁打も12本飛び出し、規定打席に到達した8人中7人が3割を超え、うち3人が4割超の打率を残すなど、とにかく打ちまくった。昨秋、得点力不足に悩んだ反省を生かし、今春に向けてはチーム全体で守備メインの練習から打撃メインの練習にシフト。従来「6:4」だった守備練習と打撃練習の比率を「7:3」に変え、「エラーしても打ってカバーできる」レベルの打撃力を身につけてきた。

 中でも異次元の数字を残したのが、主将の嶋田 友外野手(4年=浦和学院)。打率.633(30打数19安打)、4本塁打、18打点で打撃三冠に輝いた。本人は「(三冠を)意識していたわけではなくて、終わってみたら三冠だった感じ」と振り返るが、主将として昨年春秋連続で優勝を逃した責任を感じていただけに、今春にかける思いは人一倍強かった。13日の試合でも金原から3安打をマーク。試合後は「自分としても最後のリーグ戦だし、チームとしても全日本から離れていたので、優勝にこだわっていた。本当によかった」と胸をなで下ろした。

 「(最後のリーグ戦を終えて)率直に思うのは、準硬式野球部に入ってよかったということ。学業やアルバイトと両立できる環境がありながら、野球を楽しくプレーすることができた」。宮城県石巻市出身で、高校は埼玉の強豪・浦和学院に進んだ。地元で野球を続ける道を模索する中で準硬式野球に出会い、競技の魅力を味わい尽くした。大学では投手との二刀流を貫き、今春もリーグトップの防御率2.31を記録。大学最後の大舞台、投打で大暴れするつもりだ。

実績と将来性を兼ね備える投手陣

 投手層も厚く、嶋田とダブルエースを張る右腕・紫葉は多彩な変化球と制球力を武器に抜群の安定感を誇る。山形大医学部との天王山は2試合とも一人で投げきった。1年生にも有望株が揃っており、アンダースロー右腕・池田 翔投手(1年=柴田)は5試合、技巧派左腕・日下 裕翔投手(1年=柴田)は4試合に登板するなど、柴田出身のルーキーコンビを中心に早くも経験を積んだ。

 昨夏の高校野球宮城県大会1回戦で柴田仙台育英と対戦した際、柴田の先発を務めたのが池田、2番手で6回を投げたのが日下だった。柴田は初戦敗退ながら4対6と善戦。のちに甲子園制覇の快挙を成し遂げる仙台育英相手に奮闘した両投手は、大学では同じチームで準硬式野球に打ち込む道を選んだ。大きな存在感を示した夏から約1年、全国デビューはなるか、注目だ。

 長年チームを率いる伏見 善成監督は「リーグ優勝まで長かった。やっと全日本に行ける」と感慨深げ。2年前の全日本はチーム内に新型コロナ感染者が出たことで1試合もできないまま出場辞退しているだけに、喜びもひとしおだ。圧倒的な強さで手にした全国切符。ここに2年分の思いをぶつける。

(取材=川浪 康太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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