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第259回 筋肉をつけるとスピードが落ちるという誤解2020年12月15日
【目次】
[1]筋肉と脂肪はどちらが重い?
[2]筋肉量を増やしながら体を大きくする

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
この時期らしい寒さが続きますが、皆さんは毎日元気に過ごしていますか。新型コロナウイルスは社会生活に大きな影響を及ぼし、部活動においても例外ではありません。感染予防を行いながら、春のシーズンに向けてできることをしっかりと行っていきましょう。さて今回はトレーニング期に入ると一度は尋ねられる「筋肥大」と「スピード」の関係について、お話をしたいと思います。
筋肉と脂肪はどちらが重い?

同じ体積であれば筋肉の方が脂肪よりも重くなる
トレーニング期に入ると、まずは土台作りのために体を大きくすること=筋肥大を目的としてトレーニングプログラムを設定することが多いと思います。筋線維はトレーニングによる刺激によって太く、強くなり、体全体の筋肉量は少しずつ増えることが想定されます。
ここで筋肉と脂肪の比重について考えてみましょう。比重とは「大きさ(体積)あたりの重さ」のことで、水を基準値(1.0)とした数値で表されます。水を1.0とした場合、筋肉はおよそ1.1、脂肪はおよそ0.9程度といわれ、ざっくりまとめると筋肉は「水よりも重い物質」、脂肪は「水よりも軽い物質」ということが言えます。このことを知っている人にとっては「筋肉をつけると体重が増えて動きづらくなるのでは?」といった誤解をもたれるかもしれません。
トレーニングをすると足が遅くなる?
特に足の速い選手の場合、トレーニングをして体が重くなってしまうことは、自分の武器である「スピード」を失うことになるのではないかと考え、ウエイトトレーニングに対して前向きにならないことも考えられます。ウエイトトレーニングを続けていくと確かに体には変化がみられるようになり、「体が重くなった」「足が重くなった」と実感することもあるでしょう。
ここではトレーニングと実際の技術練習とのすり合わせによって、「変化した体」と「備わった筋力」をうまく使いこなせるように学習していく必要があります。走力は「ピッチ(回転数)」と「ストライド(歩幅)」によって決まってくるのですが、筋力が向上することによってピッチが増えたり、ストライドが拡がったりといったことが期待できます。また筋力が上がることによって、地面から得られる反力も増えることになり、より大きな力を得て体を動かすことが可能になります。
車のボディを体全体、エンジンを筋肉と考えてみるとわかりやすいと思います。軽自動車で軽自動車用のエンジンを積んでいる状態(体が軽く、主観的にスピードを感じる状態)から、普通自動車のボディとエンジン、さらにはレーシングカーのボディとエンジンへと性能を上げていくと筋力とともにスピードも改善されてより大きなパワーを得ることにつながります。
「軽自動車のボディにレーシングカーのエンジンを載せるともっと速くなるのでは?」と考える人がいるかもしれませんが、大きなパワーを持つエンジンを搭載するのであれば、それに耐えられるだけのボディが必要であり、ボディが備わっていないと動かすことによってそのパワーに耐えられず、故障(ケガ)をしやすくなると言えるでしょう。

- 西村 典子 トレーナー
- ■ 生年月日:1970年12月5日
- ■ 出身地:大阪府
- 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。
一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。
現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。 - ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
・日本スポーツ整形外科学会会員 等 - 講演依頼はこちら
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