中京大中京が公式戦無敗で終わった愛知の2020年を総括【前編】
今年の高校野球界は、新型コロナに見舞われた。愛知県でも、中京大中京が代表を決めていたセンバツをはじめ春季大会以降、夏の選手権も中止となってしまった。
そうした中で、夏は愛知県の独自大会が開催され秋季大会は何とか、当初の予定をこなすことが出来た。そして、甲子園の交流試合含め、中京大中京の活躍が光った1年となった。
そんな愛知県の2020年の高校野球を振り返ってみる。
スピード感ある対応で、いち早く独自大会の開催を発表
スピード感をもって夏の独自大会が開催された
甲子園の選手権大会とその代表を決める各地の地方大会の中止が発表されたのが5月21日。その直後に、愛知県高校野球連盟は神田 清理事長がいち早く独自大会の開催を公表した。
各校に宛てて、「夏の選手権大会は中止にはなったが、愛知県としては独自の夏季大会を開催するので、その準備はしてほしい」という趣旨の通達を出した。
近畿地区や九州地区での指導経験もある日本福祉大付の山本 常夫監督はその素早い対応に対して、「素晴らしいスピードに感心したとともに大会を開催してくれる方向を強く出していただけたことに感謝したい」という思いを述べていた。
その思いは、おそらく多くの愛知県内の指導者たちも同じ思いであったであろう。
5月の連休時期に県内の何人かの指導者たちに電話等で状況を尋ねた時にも、「最悪の場合は、近郊の学校だけで試合をして、3年生たちのけじめの試合は出来ないかということは話し合っていた」(東浦・中嶋 勇喜監督)というような意見も多くあった。
そうした経緯もあっただけに、早い段階での独自大会の決定は多くの関係者たちは、厳しい状況ながらも一つの安堵はあったようだ。
こうして開幕した夏の独自大会は、全国でも早いタイミングの開催となり7月の一週目から始まった。まだ梅雨も明けておらず、週末に訪れる梅雨前線の影響で日程の変更なども余儀なくされた。
最終的には閉幕が一週間遅れることにはなったものの、最後まで大会を行うことが出来た。こうしたことも、関係各位の目に見えない部分での尽力もあったからであろうと思われる。
[page_break:梅雨の影響に負けず、各地区で熱戦を展開]梅雨の影響に負けず、各地区で熱戦を展開
高橋 宏斗
大会としては、結果的には下馬評通りというか、前評判の高かった中京大中京がエース高橋 宏斗君と左腕松島 元希君という二人の力のある投手の併用とともに、打線もここというところでタイムリーを放つなどして、序盤に苦しむ展開のある試合もあったものの、きっちりと危なげない形で勝ち上がっていった。
雨で日程が後ろへずれ込んでいった都合上、厳しい日程になったものの、勝つべくして勝ったという形で夏の大会を制した。
光ったのは、夏の大会としては初めて決勝進出を果たした愛産大工だった。大会前は、必ずしも高い評価をされていたというワケではないが、3回戦で享栄を下して勢いに乗った感があった。
鈴木 将吾監督も、「初めて親分(恩師)に弓を引けた」と、中京大中京大時代の恩師でもある大藤 敏行監督率いる強豪を下したことを喜んでいた。準々決勝では愛知桜丘にコールで負け寸前から逆転勝ちし、準決勝では愛知黎明に快勝した。
至学館の活躍も素晴らしかった。5回戦で愛工大名電に対して0対0のままタイブレークに突入し、10回表に2点を奪われたものの、その裏に「2点差は想定内」という麻王 義之監督の言葉通り、逆転した。今大会一の劇的な試合と言ってもいいかもしれない。
一死満塁から内野ゴロで1点を返し、さらに土岐 晃優君が逆転3ランを放つ劇的勝利となりベスト8に進出した。
この大会は、コロナ感染のリスクを減らすこともあって、選手たちの移動距離を極力減らすこともあって、ベスト8までは各地区内での対戦を原則とした。そうした中で、西三河地区ゾーンを勝ち上がったのは豊田大谷と岡崎工だった。
そして、西三河対決となった準々決勝では岡崎工が豊田大谷に6対2で78年夏以来のベスト4に進出したのも見事だった。片上 聖君と143キロ左腕の柵木 和陽君の2本柱を平松 忠親監督が巧みに使いきっての進撃だった。
今回はここまで。次回は各地区の戦いを振り返っていきます。
(記事:手束 仁)