甲子園がなくてもハイレベルで激戦だった2020年の近畿地区【近畿・総括】
DeNAから指名を受けた履正社・小深田 大地
コロナ禍により、例年とは全く違う戦いを強いられた2020年の高校野球。近畿地区の大会は甲子園交流試合も含め全て無観客試合で行われたが、球児たちの熱い戦いは今年も変わらなかった。
夏の独自大会で注目を集めたのが履正社と大阪桐蔭の一戦だ。全国でもトップクラスの力を誇る大阪の名門校が準決勝で激突。大阪大会は準決勝で打ち切りとなったため、これが事実上の決勝戦となった。
秋は延長戦の末に大阪桐蔭が勝利しており、接戦が予想されたが、履正社打線が大阪桐蔭先発の藤江 星河(3年)を打ち崩し、9対3で圧勝。昨夏の甲子園を思い起こさせる猛打を発揮した。履正社は甲子園交流試合でも星稜相手に10対1で勝利。コロナがなければ、連覇も狙えるのではないかという強さだった。
大阪桐蔭も甲子園交流試合の東海大相模戦では藤江が7回2失点と好投。主将の藪井 駿之裕(3年)が決勝打を放ち、4対2で勝利した。秋は大阪桐蔭が近畿大会準優勝、履正社が大阪大会敗退と明暗が分かれたが、今後も高校野球界をリードする存在であり続けるだろう。
大阪2強に負けない存在感を見せつけたのが天理と智辯学園の奈良2強だ。昨秋の近畿大会を制した天理はオール3年生で夏の独自大会を制覇。甲子園交流試合では広島新庄に敗れたが、恐怖の1番打者・下林 源太(3年)や昨年の明治神宮大会で1試合3本塁打を放った河西 陽路(3年)などの活躍は多くの人の印象に残ったはずだ。
秋は旧チームから活躍していた長身右腕の達 孝太(2年)や強打がウリの瀨 千皓(2年)らの活躍もあり、奈良大会を制した。近畿大会では準々決勝で大阪桐蔭に7回コールド負けを喫したが、戦力は全国上位レベルだ。
智辯学園は甲子園交流試合で神宮王者の中京大中京と延長10回の大激戦を繰り広げた。2年生エースの西村 王雅が2回から9回まで無得点に抑え、中日ドラフト1位の高橋 宏斗(3年)相手に一歩も引かない投げ合いを披露した。
秋の奈良大会は決勝で天理に敗れたが、近畿大会では他府県の1位校を相手に勝利を収め、見事に優勝。来春のセンバツに向けて弾みをつけた。前川 右京(2年)、山下 陽輔(2年)らを擁する打撃力は全国屈指。センバツでも優勝候補に挙がるだろう。
注目右腕・小園 健太
1年生から注目を浴びてきた明石商の中森 俊介(3年)と来田 涼斗(3年)は揃ってプロ入り。最後の甲子園では自身の納得がいくプレーができなかったと振り返っていたが、向上心が高いことの裏返しでもある。プロの世界でもスター選手として活躍する日を楽しみにしたい。
同じくプロ野球選手を二人輩出したのが智辯和歌山。小林 樹斗(3年)が広島、細川 凌平(3年)が日本ハムにそれぞれ4位指名された。二人とも一冬越えて成長した姿を見せており、今後の伸びにも期待が持てる。
秋の近畿大会では京都国際が健闘。4強入りして、初の甲子園出場を確実にした。準々決勝に勝利した翌日にはドラフト会議で早 真之介(3年)がソフトバンク、釣 寿生(3年)がオリックスにそれぞれ育成4位で指名されており、野球部全体として勢いに乗っている。甲子園でも堂々とした戦いを見せてほしい。
近畿大会で注目を集めたのが山田。専用グラウンドを持たない普通の公立校が大阪大会3位決定戦で履正社を倒して話題になった。近畿大会では初戦敗退に終わったが、21世紀枠の推薦候補に選出。惜しくも近畿地区代表には選ばれなかったが、春以降の躍進に期待がかかる。
同じく近畿大会初出場を果たし、21世紀枠で甲子園出場の可能性があるのが東播磨だ。兵庫大会準優勝で近畿大会の切符を掴み、和歌山王者の市立和歌山と接戦を繰り広げた。守備と走塁の精度は高く、甲子園常連校とも好勝負が期待できる。
2016年に21世紀枠でセンバツに出場した長田は70年ぶりに近畿大会に出場。大阪桐蔭に7回コールドで敗れたが、中盤以降は得点を許さなかった。
近畿大会で最も印象に残る活躍を見せたのが市立和歌山の小園 健太(2年)。最速152キロ右腕との呼び声が高いが、それ以上にカットボールやツーシームといった変化量の小さい変化球を巧みに操る印象がある。中学時代からバッテリーを組む松川 虎生(2年)との呼吸も完璧で、テンポの良い投球が光る。近畿大会では3試合、22回を投げて自責点1と素晴らしい成績を残した。出場が有力な来春のセンバツでも好投に期待したい。
(記事:馬場 遼)