「明石」の悔しさをバネに、神戸国際大附が悲願の甲子園V狙う【後編】
今年は夏の甲子園で初の8強入りを果たした兵庫の強豪・神戸国際大附。秋の兵庫大会では準々決勝で敗れ、来春のセンバツ出場は絶望的となったが、1、2年生には実力者が多く、来夏が非常に楽しみなチームである。来年に飛躍が期待できる選手を紹介していきたい。
負けて気づくことができた
山里宝(神戸国際大附)
新チームにも夏の甲子園でエースナンバーを背負った最速144キロ左腕の楠本晴紀(2年)や好守の遊撃手・山里宝(2年)、勝負強い打撃が持ち味で主将に就任した松尾優仁(2年)など、実績のある選手が多く残っていた。秋の大会も上位進出が期待されていたが、青木監督はそんなに簡単なものではないと感じていたという。
「新チームというのは難しいと思うんですよ。たくさん旧チームのメンバーが残っているから強いとか、残っていないから弱いとか、そういうのはあまり関係なくて、嚙み合わせだと思うんですよね」
今年は県内のライバルよりも新チームの指導が約1ヶ月遅れ、緊急事態宣言の影響で練習試合もできず、例年よりも難しいスタートを強いられた。紅白戦などで実戦不足を補おうとしたが、不安を抱えたまま秋の兵庫大会に臨むことになった。
県大会2回戦から登場した神戸国際大附は初戦で三田学園に8対2で勝利すると、3回戦でも須磨翔風を5対2で下した。しかし、近畿大会出場まであと2勝と迫った準々決勝で明石商に1対3で敗戦。3季連続の甲子園出場はほぼ絶望的となった。
「守備のミスなどが多くて、チャンスを作っても試合は打線が繋がらなくて、ミスで負けた」と敗因を語った松尾。だが、青木監督は敗戦も決してマイナスには捉えていない。
「勝ってる時というのはわかっているようで水漏れすることが多いんですけど、負けた時は僕たちも選手も反省ばかりじゃなく、気づくことが多いですね。実戦経験も少なくてやった子がたくさんいるので、これからが楽しみだと思います」
[page_break:楽しみな逸材の成長に期待]楽しみな逸材の成長に期待
中辻優斗(神戸国際大附)
秋を戦う中で見えた課題の一つが打力の向上だ。その中で青木監督が期待している選手の一人が1年生の日置悠斗。春からスタメン出場を果たすほどの選手だったが、右肘を痛めた影響で夏の大会はベンチ外だった。秋は代打として出場しており、春以降はレギュラー定着が期待されている。
走攻守揃った日置を遊撃手として起用し、これまで正遊撃手だった山里を二塁手で夏の甲子園でもベンチ入りしていた柴田勝成(1年)と競わせている。その山里もこの秋からスイッチヒッターに挑戦。左打席でも巧打を連発しており、攻撃の幅が広がりそうだ。
そして、打線の起爆剤として期待されているのが、センバツでもスタメン起用された実績のある板垣翔馬(2年)。恵まれた体格を生かした長打力が武器の選手だが、センバツ後は肩の脱臼もあり、戦列を離れていた。それでも現在は元気な姿を見せており、来年は大砲として活躍してくれそうだ。
投手陣は楠本がどうしても話題になるが、「学年関係なしに『楠本じゃなくて、俺が頭だ!』と思っている子はいますよ」と青木監督が話すように多くの投手が火花を散らしている。
その筆頭候補が甲子園でも登板経験のある中辻優斗(2年)。最速140キロを超える速球が持ち味で、夏の甲子園でサヨナラ打を浴びたリベンジを誓う。さらに長身右腕の加藤彰真(2年)に中村和史、さらに秋の大会で登板した左腕の山根琉聖(2年)なども青木監督は期待を寄せている。
そして、忘れてはいけないのが、高松成毅(1年)。1年生にして春から大活躍を見せており、今後の成長が楽しみな投手だ。上記の投手はいずれも「バッターを見て投げられる」と青木監督は高く評価しており、実戦力の高さが光る。
この日の練習は学校のグラウンドではなく、兵庫大会でも頻繁に使用される明石トーカロ球場で行われた。青木監督が部のバスを運転して、学校から球場まで移動しているそうだ。明石トーカロ球場で練習することについて、青木監督は次のように話してくれた。
「兵庫県で甲子園を左右する球場で、長いことやらせてもらっていて、ここで良い思いも悔しい思いもたくさんしてますし、特別な球場だと思っています。学校のグラウンドと違うのはカバーリングと景色ですね。明石球場はホームランが出ない球場なので、気にしている球場です」
敗れた秋の明石商戦もこの球場での試合だった。取材日に練習した成果を春以降に発揮することができるだろうか。
センバツ出場を実質的に逃したため、甲子園のチャンスは夏しか残されていない、夏に向けて青木監督は、「気持ちも体も強靭なチームにしたいですね。ここ(明石トーカロ球場)でオーバーフェンスできるようなバッターが出てきてくれたらなと思います」と選手たちの奮起を促していた。
選手も指揮官の期待に応えるつもりでいる。「2年連続出場を目指して、ここから練習を全員で励んでいって、夏の甲子園に出場します」と意気込む松尾。上手く噛み合えば、全国制覇を狙えるだけの戦力は整っている。激戦区の兵庫県を勝ち抜き、初の甲子園優勝を目指す神戸国際大附の今後の戦いから目が離せない。
(取材:馬場遼)