W主将制を導入する福知山成美は19年春以来の聖地目指す【後編】
春夏合わせて7度の甲子園出場経験を誇る福知山成美。前編では井本自宣監督の「練習は増やすことよりも省く」理由を語ってもらった。今回は今年のチームに目を向けていきたい。
前編はこちらから!
・大学で活躍する選手を次々と輩出する福知山成美の短時間練習の方針【前編】
センバツ出場時と同じくW主将で挑む
中田投手とともにW主将を務める前田壮一朗選手
昨夏の独自大会は3年生主体で戦ったため、1、2年生が試合に出場することはなかった。新チームの主将は選手間の投票で行い、投手の中田 周と外野手の前田 壮一朗(ともに2年)に票が集まっていた。そこで井本監督はダブル主将制度を導入。中田が投手キャプテン、前田が野手キャプテンとして、チームを引っ張る役割を担うことになった。センバツに出場した2年前も投手の小橋 翔大(現・佛教大)と二塁手の岡田 健吾(現・同大)のダブル主将だったこともあり、井本監督に迷いはなかった。
「僕の見えない部分をあいつ(中田)が見てくれたり、あいつが見えていない部分を僕が見えていたり、二人で補い合えているので、あいつがいて良かったと思うことがあります」と前田も主将が二人いることを前向きに捉えている。特に今のような全体での練習が難しい状況においてはプラスの要素が大きいようだ。
その一方で、懸念されていたのが実戦経験の不足である。旧チームでレギュラーだったのは前田だけで、投手も中田が少し投げた程度だった。練習試合も思うように組めず、「メンバーを絞っていく作業ができなかったので、大会をしながら組んでいった感じですね」(井本監督)と試行錯誤をしながらの戦いを強いられた。
その中でも中田を中心に投手陣が3試合で1失点と踏ん張り、1次戦を突破した。しかし、2次戦の直前に中田が肩を負傷して戦線離脱。初戦こそ山城に5対3で勝利したが、準々決勝の龍谷大平安戦は3対13の5回コールド負け。1回と2回に3点ずつ取られて、早々に流れを手放してしまった。
「中田がいなくても投手は色々起用していたので、そこそこ投げられるかなと思ったんですけど、平安の時は序盤にペースを握られて、ズルズルと行かれてしまいました。近畿大会を目指していたので、一方的な試合になったのは悔しい。力の差がそこまであったわけではなかったので、もっと競った試合をしたかったなと思いますね」
龍谷大平安戦をこう振り返る井本監督。センバツに出場した2年前とそう変わらない力はあると思っていただけに悔やまれる結果となった。
秋コールド負けを胸に19年春以来の聖地へ
中田 周投手
指揮官が課題として挙げているのが核となる選手の不在だ。中田と前田にそうなる期待をかけていたが、中田は先述のように肩を痛め、秋は4番に座った前田も打撃不振に陥っていた。彼らが本来の力を発揮できれば、脇を固める選手も生きてくると井本監督は考えている。
エースの中田は最速143キロの本格派右腕。低めに伸びるストレートを持ち味としており、府内でも屈指の好投手になれる素材の持ち主だ。肩の状態も回復し、年明けから投球練習を再開している。春以降は復調した姿を見せてくれるだろう。
中田に次ぐ投手として期待されているのが左腕の谷口 天誠(1年)。秋の2次戦では中田に代わって主戦を任されていた。右打者の内角に食い込むストレートには角度があり、「メンタルが強くて良い投手」と中田も一目置いている。
野手の中心選手として期待されている前田は右投左打の外野手。ミート力と50m走で6.0のスピードが光る万能プレーヤーだ。秋は周りに目を配りすぎて自身は思うようなパフォーマンスを発揮できなかったが、上のステージでも十分に活躍できる能力は持っている。彼がコンスタントに結果を残すことができれば、得点力は大きく向上するだろう。
チームとしても秋は不本意な結果に終わったが、これで終わるつもりはない。「秋はコールド負けで悔しい思いをしたので、春と夏は優勝して、甲子園に出たいです」(中田)と夏は2019年春以来の甲子園出場を目指している。
「これまで関わってくれた方のためにも甲子園というのが一番の恩返しになりますし、甲子園しか狙っていません。甲子園に行くためにはどんな練習でも歯を食いしばってやろうと決めているので、甲子園という目標だけで頑張っていきたいと思います」と前田も甲子園に懸ける想いを語ってくれた。
京都府は龍谷大平安や京都国際など強敵も多いが、「飛び抜けたチームがないので、十分にチャンスはあると思っています」と井本監督は自信を覗かせる。ダブル主将を中心に混戦を勝ち抜けるチーム作りを目指していく。
(取材=馬場 遼)