秋季埼玉県大会で、最大のサプライズを起こした高校が細田学園だ。3回戦で延長12回の末、浦和実にサヨナラ勝ちを収めると、続く準々決勝では花咲徳栄を4対3で破り大金星。最終的に準優勝を果たし秋季関東地区大会出場を果たした。

 細田学園は前身は女子校で、1999年に男女共学となった。野球部は2014年4月に創部され、富士見、大井などの県内公立校を指導した経験を持つ丸山 桂之介監督が就任。創部当初は河川敷の空き地や橋の下といったスペースで練習を行うこともあったが、2017年に念願の専用グラウンドが完成。チームも年々実力をつけていき、2016年の秋季大会で初の地区予選を突破するとこの秋は遂に関東大会出場を果たした。

浦和実、花咲徳栄撃破でチームの士気は最高潮に


 「不思議なのですが、あまり負けないチームです。彼らが1年生の年はBチームで練習試合にも行くこともありましたが、意外といい試合するし負けない。ピッチャーもそこそこ投げることができて、派手さは無いけど下手でもない。1年生の頃から自滅しないチームで、まさしく今年の秋の戦いがそれでした」

 チームには県を代表するような選手や、一芸に秀でた選手がいる訳ではない。だが持てる力の8割、9割を常に出せたことが関東地区大会出場に繋がったと丸山監督は語る。

 また勝負所で会心の勝利を挙げたことも、チームの勢いを加速させた。2回戦の浦和実戦、序盤に4番・吉野 壮真の本塁打などで4対1とリードするも、その後同点となり試合は延長戦へ。一進一退の攻防が続いたが、延長12回に3番・瀬戸尾 侑宏のサヨナラ2ラン本塁打が飛び出し劇的な勝利を挙げた。エースの松本 悠希も197球を投げ抜いての完投勝利だった。

 「1年生の頃は勝負できるボールと技術が無く、ただ投げているだけの状態でした。課題を潰していくのが精一杯だったように思います。活動自粛の期間で自分なりにトレーニングを積んで、そこで体も変わって安定感も出てきたなと感じています」(エース・松本 悠希

 実力校の浦和実撃破で勢いに乗る細田学園だったが、続く3回戦では全国屈指の強豪校・花咲徳栄と対戦となった。全国クラスの選手が並び、また疲労のあるエースの松本長いイニングを投げさせることもできない。2番手以降の投手の中から先発を決めることになるが、丸山監督が白羽の矢を立てたのが背番号18の飯吉 陽来だった。

 飯吉は、大会直前までは投手では無く外野手。ストレートの最速は115キロ程で、これまで公式戦の登板も無く、練習試合の結果も芳しくなかった。それでも丸山監督は飯吉の投げるカーブの独特な変化に着目し、「ひょっとしたら」という思いがあったと振り返る。

 「面白いボールを投げるんですよ。試合前日のブルペンを見ていると、飯吉のカーブは手元でピュッと落ちる、かなりの落差のあるボールでした。このカーブはなかなか打てないだろうと思い、これはひょっとしたらひょっとするなと」