都立高の矜持を胸に「打倒・強豪私学」を誓う 都立日野が冬に掴んだ精神的な強さ
2020年夏季東西東京都高等学校野球大会がいよいよ明日から開幕する。
西東京の都立の雄として、毎年存在感を見せ続けている都立日野は、都立小平西と対戦の予定だ。同じブロックには、国士舘や早大学院、日大鶴ヶ丘など強豪がひしめくが、「打倒・強豪私立」を掲げて大会に臨む。
嶋田雅之監督は「投打でバランスの良いチームに仕上がった」と自信を見せるが、そんな都立日野はこの1年間でどのようにレベルアップをしてきたのだろうか。
良くも悪くも真面目な選手が多かった
トレーニングの様子
大会に向けてチームの状態は上向きの都立日野だが、新チームがスタートした当初は守備から流れを作っていくチームだった。
昨年から登板経験のある関口勇気投手、小畑雄飛投手の2投手を中心に、堅い守りで秋季東京都大会は上位進出を目指していた。
「ホームランや長打を打てる打者はいませんでしたが、関口と小畑も安定していて守備からリズムを作っていこうと大会に臨みました。
実際、ブロック予選や都大会1回戦の明大中野戦では、持ち味を出せていたと思います」
そう語るのは、チームを引っ張る山崎颯人主将。
チームの戦いぶりに上位進出の期待も高まったが、2回戦の日本ウェルネス戦では思わぬ展開となった。
4回にエラーで先制点を献上すると、6回にもエラーが絡んで2失点。
その後、同点に追いつく粘りを見せるも、9回裏に二死満塁からバッテリーエラーでサヨナラ負け。守備力に自信を持っていた都立日野にとって、屈辱の5失策で2回戦敗退となった。
敗戦後、選手たちは嶋田監督に精神的な弱さを選手に突きつけられた。
「嶋田先生には、良くも悪くも優しい人が多いと言われました。誰かがエラーをしても、周りは優しく接する雰囲気があり、厳しさや精神的な強さがないといけないと言われました。
チャンスで打てなかったり、勝負所でエラーが出ないように、とにかく辛いメニューで追い込んで、精神的に強くなれるように意識しました」
オフシーズンでは、毎年徹底的に筋力トレーニングを行うのが都立日野のスタイルだが、今年はこれまで以上に厳しさを持って選手たちは練習に取り組んだ。
体重の増加など他にも課題はあったが、まずは妥協をせずに逆境にも打ち勝てる精神力を養うことを第一に考えてトレーニングに打ち込んだ。
その姿に、嶋田監督も手応えを感じたことを明かす。
「今年は真面目な選手が多いチームです。
毎年、冬の練習はとにかくきついと思いますが、この子たちは例年以上に頑張って、真面目に練習をやり切っていましたね」
強豪私立を倒す目標はまだ達成するチャンスがある
素振りを行う選手たち
逆境にも打ち勝つ精神力を求めてトレーニングに打ち込んだ選手たちだが、結果として体力面で著しい成長を遂げた。
多くの選手が増量に成功して、飛距離もアップ。持ち味だった守備力に打撃力も加わり、好守でハイレベルなチームに仕上がったのだ。
嶋田監督は、冬場の選手たちの努力を称え、大会に向けて手応えを口にする。
「春先から、バッティングが非常に伸びてきた感じがあります。自粛期間明けの練習試合でも、終盤まで抜け目なく打つことができていました。
うちは冬にしっかりトレーニングを行うので、『冬を超えた日野は強い』と言っていただくことも多いですが、今年は特に成長したと思います」
夏の甲子園という目標は無くなったが、選手たちの気持ちが切れた様子は全く無い。
都立日野の選手たちは今、「都立高校」の誇りを胸に冬のトレーニングの成果を見せることを目指しているためだ。
山崎主将は、「打倒・強豪私学」掲げて大会に臨むことを力強く誓った。
「自分たちは都立である日野高校で、強豪私立を倒して甲子園に出ることを目標に入学しました。甲子園の目標が無くなっても、強豪私立を倒す目標はまだ達成するチャンスがあります。
なので大会は思い出作りではなくて、最後にみんなでやってきたことを出し切って勝ちたいと思います」
もちろん嶋田監督も、主将の意気込みの同調する。
甲子園の目標があろうと無かろうと、今の実力でどこまで勝ち進むことができるのか、選手たちには挑戦する気持ちを持って臨んで欲しいと口にする。
「甲子園を目指したくて、この学校に来た選手が多いと思うので、例え甲子園がない大会であっても、優勝を目指して制覇しにいくつもりでいます。
練習試合ができていないので、今の自分たちの力がどれくらいなのか分かっていないと思いますが、着実に力が延びてることは分かっていると思います。甲子園があるなし関係なく優勝狙っていきたいなと思います」
都立日野は、7月18日に[stadium]ダイワハウススタジアム八王子[/stadium]で都立小平西との初戦を迎える。
都立高の矜持を持って、心技体すべてを高めてきた都立日野が、最後にどんな戦いを見せるのか見逃せない。
(取材=栗崎 祐太朗)
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