今夏の福井大会で広島からドラフト6位指名された玉村 昇悟を擁して創部初の準優勝という快挙を成し遂げた丹生。公立校が次々と強豪校を倒していく姿は多くの人にインパクトを与えた。
秋は初戦で敗れたが、力のある選手は残っており、上位進出のチャンスは十分にある。福井の高校野球を盛り上げた丹生のこの1年間の軌跡と同校の取り組みについて迫った。
後編では圧倒的な存在だった玉村昇悟が抜けたあと、新チームにおかれた課題に迫る。
自信を持てずに敗れた秋

丹生・春木竜一監督
自信を持って秋の福井大会に挑んだが、公立の雄である坂井に1対8でコールド負け。指揮官にとっては予想外の大敗で丹生の秋は早くも幕を閉じた。
「普通にやればベスト4はいけるかな」と思っていた春木監督にとっては悔やまれる結果となった。その原因の一つに選手の自信のなさがあったのではないかと春木監督は分析する。
「玉村神話じゃないけど、玉村くらいのピッチャーじゃないと勝てないとか勝負にならないという幻覚を持っているのではないかと思っているんです。こっちは客観的に勝てると思うんですけど。自分たちの力を発揮することができていないので、残念ではあります」
夏に神がかり的な躍進を見せた背景には玉村の存在があったのは間違いない。それ故に玉村クラスの投手がいないと、勝ち進めないと思ってしまったのだ。春以降に結果を出すために最も必要なのは自信なのかもしれない。春木監督はエースの伊藤には大きく期待を寄せている。
「夏の大会中も彼を使わないといけない時が来ると思っていたけど、本人は消極的だったところがありました。玉村を見に来たスカウトの方たちも伊藤を見て。『良いじゃないか」、『その先、上に行って面白いですよ』と言ってくれています。彼もそういう評価を自分で聞くので、自信をつけてくれたら良いなと思います。伊藤だけを見ると凄いけど、玉村が隣で投げると、『やっぱり玉村は凄い』となる。玉村を見すぎて自信がつかないというのはありますね」
今後は戦力的な面よりも精神的な面で「脱玉村」をできるかどうかが大きなポイントとなりそうだ。