第3勢力として2強の壁に風穴を開けろ!初の甲子園への道を切り開く和歌山東(和歌山)【後編】
智辯和歌山と市立和歌山が力を見せている和歌山県において近年、存在感を示しているのが和歌山東だ。軟式野球部から硬式野球部に移って今年で10年目。今年はドラフト候補右腕の18133(3年)を擁して初の甲子園出場を狙っている。ここ数年で注目度を上げてきた和歌山東はどんなチームなのだろうか
硬式に変わって僅か10年のチームが甲子園へ挑む!経験と自信を積んできた和歌山東(和歌山)【前編】
智辯和歌山との試合を糧に
野口投手(左)と落合投手(右)
智辯和歌山戦では思うような投球ができなかったが、野口聡大は18133と並んで軸になることを期待されている投手。米原監督は野口に対して夏への奮起を促している。
「夏の大会は野口が一本立ちして投げてくれないと甲子園はないよと言っています。落合も連投が利く子じゃないのでね。スライダーとチェンジアップが良くてストレートも138キロまで出るようになりました。角度もあるので、四球さえ出さなければ。ここ最近は良い投球が続いています」
そして気になるのが落合だ。春季大会後も各地の練習試合で好投し、プロのスカウトやメディアからの注目を集めている。そんな落合だが、高い志を持って入部してきたわけではなく、「1年間は僕とほぼ会話していないんじゃないかな」と米原監督は振り返る。
「会話したら辞めるなと思ったんです。当時は若いコーチがいたので、一緒に遊びながらやらせていました。マイペースでよくここまで伸びたと思いますね」
落合について「精神的な年齢が低い」と厳しめに評価する米原監督だが、試合になればエースとして頼りになる存在だ。特にセンバツ8強入りした智辯和歌山と市立和歌山と対戦する時には落合の出来にかかっていると指揮官は見込んでいる。
「智辯和歌山と市立和歌山と当たる時は落合がどんな投球をするかで変わります。失うものはないので、どんどん攻めていくと思います。最初の方に当たっちゃえばいいと思うんですよね。初戦だと落合も元気だと思うので、プレッシャーになると思いますよ。ウチはプレッシャーないですけど、向こうはプレッシャーありますからね」
硬式野球部創設10年目の節目を甲子園初出場で飾る
和歌山東の集合写真
取材日の3日後に行われた組み合わせ抽選の結果、市立和歌山とは3回戦で、智辯和歌山とは準決勝以降で対戦することが決まった。それまでにも1回戦で星林、2回戦で和歌山向陽と侮れない相手との対戦が続くが、どのような投手起用を見せるだろうか。
また、米原監督は和歌山県高野連で監督部の理事を務めている。智辯和歌山の中谷仁監督と市立和歌山の半田真一監督には食事の席で奮起を促していたこともあり、2校のセンバツ8強は「嬉しかったですよね」と振り返る。
「和歌山のレベルを上げようということを中谷や半田と食事をしながら話をするんですよ。上を狙えるチームはまず智辯と市高だからお前たちはもっと上に行けと話していました。2つともベスト8というのは本当に良かったですね。そこに3つ目に食い込んでやろうという気持ちでウチもやっています」
智辯和歌山と市立和歌山に続く全国クラスの競合を目指している和歌山東。米原監督がセンバツの結果に喜んでいたのに対して「悔しかった」と本音を語ったのが東妻、根来と中学時代にプレーした岡野楓大だ。
中学時代のチームメイトとは連絡を取り合う仲で通学の電車で顔を合わせることもあるという。身近な選手の活躍には「素直に喜べないというかモゾモゾする感じがありました」と歯がゆさを感じていたそうだ。
この悔しさを晴らすには夏に甲子園に出るしかない。岡野は夏に向けての意気込みを語ってくれた。
「3年生が10人しかいないので、一丸となって戦うことができ、一人がダメでも他の選手でカバーできるのが強みだと思います。強豪校に負けないくらいの練習をやっていると思うので、自信を持って10年目の節目に甲子園に出て結果を起こしたいと思います」
2強の存在感が際立つ和歌山県に風穴を開けようとしている和歌山東。硬式野球部創設10年目の節目を甲子園初出場で飾ることはできるだろうか。
(取材・馬場 遼)