ミレニアム世代のトッププロスペクトたち Vol.11「古谷 拓郎、中村 奎太」
ミレニアム世代の逸材をトッププロスペクト方式で紹介。今回は関東を代表する投手2名を紹介したい。
古谷拓郎「習志野高、21世紀最高右腕」
古谷拓郎(習志野)
21世紀に入って習志野高校の過去のエースと比較しても、総合力、将来性含めてナンバーワンと呼べる投手が古谷拓郎ではないだろうか。
上半身、下半身が連動した投球フォームから繰り出す直球は常時140キロ前後で、最速は143キロと突出した球速はない。だが、迫力のあるストレートは本物で、高校生として球質はトップクラス。さらに縦に割れるカーブ、120キロ中盤のスライダーと変化球の精度もハイレベル。緩急自在で、勝負所で力の出し入れが絶妙で、勝てる投手。まだ細身で、さらに球速が速くなる奥行きもある。魅力がたっぷり詰まった逸材だ。
鎌ケ谷二中から評判の好投手だった古谷は1年秋の公式戦登板。まだこの時は135キロ前後だったが、2年夏には139キロへスピードアップ。2年秋にはエースとなり、県大会4強まで勝ち進んだが、選抜出場の中央学院と対戦し、エース・大谷拓海の投げ合いに負けてしまったが、それでも切れのある140キロ前後の速球、縦に割れるカーブの切れの良さを披露し、期待を持たせるピッチングだった。 そして今春、千葉県大会と関東大会で好投。特にピンチの場面の投球は冴えわたり、千葉大会準々決勝の八千代松陰戦では6回裏には、一死三塁のピンチを防ぎ、7回裏には1点を取られた後の一死満塁から140キロを連発し、連続三振にピンチを切り抜け勝利に貢献。
また関東大会の日大三戦では6回途中からリリーフとしてマウンドに登り、1回三分の二を投げて、2奪三振。関東大会で強打で観衆を沸かせた日大三打線を味方による失策で1点を失ったが、全力で投げこんだ142キロのストレート、習志野の川島のミットを大きく響かせ、迫力十分のストレートであった。
リリーフとして140キロ台を当たり前に出せるレベルとなっている。あとは先発でも140キロ前半のストレートを継続して投げられるスタミナが身につけば、さらに可能性は広がりそう。
2011年夏の甲子園ベスト8からはや7年。千葉大会で3度決勝に進出するも、いずれも準優勝に終わっている習志野にとって今年は大チャンス。「習志野高、21世紀最高右腕」として甲子園出場をつかんで見せる。
中村 奎太(日大三)「一歩ずつ成長を見せた日大三の投打の柱」
中村 奎太(日大三)
強力打線で知られる日大三で見逃せないのは1人1人を段階を追って育成しているということ。今年の日大三のエース・中村奎太は地道に一歩ずつ積み上げていきながら成長した投手だ。
下半身と上半身が連動したバランスの良いフォームから繰り出す常時140キロ前半(最速145キロ)のストレートは威力があり、120キロ後半のスライダー、フォークの精度も高く、高校生としてはハイレベル。打者としての能力も高く、近年の日大三の右投手では屈指の完成度の高さがある。
八千代松陰中時代は第8回 BFA U15アジア選手権に出場。日大三に入学し、出場するようになったのは2年春から。130キロ後半の速球、キレのあるスライダーをコンビネーションに先発・中継ぎを中心に登板。夏でもベンチ入りし、最速142キロをマークした。そして2年秋はエースと5番打者の中心選手として活躍。秋の公式戦では公式戦5試合に登板し、防御率2.55。そして打者としても打率.400、1本塁打、10打点の活躍で、7年ぶりの秋季大会優勝に貢献した。冬場ではスクワットやランジといったウエイトトレーニングや、坂道ダッシュといった下半身中心のトレーニングで強靭な下半身を鍛え、そして前年エースの桜井周斗(現・横浜DeNA)から体重移動を学び、フォーム改善に努めた。
自身初の甲子園となった今年の選抜では2試合に登板し、4回を投げて無失点。打っても8打数3安打と投打で存在感を示した。
選抜から帰ってきた中村はさらにすごみが増していた。春季東京大会準決勝では早稲田実業と対戦。ピッチングでは4回途中で降板したものの、本塁打を放つなど、勝利に貢献。関東大会出場に貢献した。
関東大会ではまず1回戦の桐光学園戦では6回2失点の好投を見せ、自己最速の145キロを計測。また準々決勝の習志野戦では3回までパーフェクト、7奪三振の圧巻のピッチング。その後も落ち着いたピッチングで、7回まで8奪三振、2失点完投勝利を見せた。
ここまで充実の結果を残している春。最後の夏ではさらに投打でレベルアップを果たせるか。5年ぶりの夏の甲子園へ、獅子奮迅の活躍を見せる。
文=河嶋宗一