Column

社会人名遊撃手の系譜をたどり、ドームで活躍誓う「高卒ゴールデンルーキー・水野達稀」

2019.06.12

 2007年2月に首都圏から居を四国地区に移し13年目。「さすらいの四国探題」の異名を背に四国球界でのホットな話題や、文化的お話、さらに風光明媚な写真なども交え、四国の「今」をお伝えしている寺下友徳氏のコラム「四国発」。

 第49回では7月13日(土)から13日間、東京ドームで開催される「第90回都市対抗野球大会」に四国地区代表として3年連続12回目の出場を果たすJR四国(高松市)に現れた「高卒ゴールデンルーキー」を紹介します。

埼玉西武ライオンズ・髙橋 光成にも振り負けず

社会人名遊撃手の系譜をたどり、ドームで活躍誓う「高卒ゴールデンルーキー・水野達稀」 | 高校野球ドットコム
都市対抗四国予選決勝戦で打席に立つ水野達稀(JR四国・遊撃手)

 「なかなかやるなあ」。
 2月26日・埼玉西武ライオンズB班(二軍)キャンプが行われていた[stadium]高知県立春野運動公園野球場[/stadium]。最初は別選手の動向視察が目的だった私の目は次第に遊撃手を務めるJR四国の背番号「0」に引き込まれていきました。

 その男の名は高卒ルーキーの水野 達稀(右投左打・170センチ71キロ)。この名前を聞いて「お!」とつぶやいた方はかなりの「高校野球ドットコム」ヘビーユーザーでしょう。

 香川県立丸亀城西高時代は50メートル走6秒0俊足の武器に強肩強打攻守の遊撃手として鳴らし、高校通算本塁打も27本。昨年は超攻撃的リードオフマンとして丸亀城西の13年ぶり夏甲子園出場に大きく貢献しました。(当時のインタビューはこちら

 このように高卒プロ入りも十分可能な実力を有しながら、夏前の早い時期にJR四国入りへ進路を定めた水野選手。「最終目標はプロ入り」と当時から語っていたように、志の高さがこの日もプレーの随所に現れていました。

 まずは6回表に代打で途中出場するといまや5勝をあげ埼玉西武ライオンズローテーションの軸を担う髙橋 光成投手に対し「思ったより振り負けなかった」強いスイングを披露。強い当たりが災いしてこの打席は遊ゴロ併殺に倒れたものの、次の打席では今季一軍でここまで2試合に登板した國場 翼投手から見事に右前打。守備でも6回裏に難しいフライを処理するなどまるで社会人で数年プレーしているかのような動きを示したのです。

 「これはひょっとして、社会人1年目から出場機会を得られるかも」。そんな私の予想を3か月後、[stadium]坊っちゃんスタジアム[/stadium]で水野選手はいい意味で裏切ってくれました。

[page_break:ドームの舞台で未来を拓く躍動を]

ドームの舞台で未来を拓く躍動を

社会人名遊撃手の系譜をたどり、ドームで活躍誓う「高卒ゴールデンルーキー・水野達稀」 | 高校野球ドットコム
2月26日・埼玉西武ライオンズ2軍とのオープン戦で遊撃守備につく水野達稀(JR四国)

 5月17日、都市対抗野球四国予選一次リーグ初戦で最大のライバルと目されていた四国銀行(高知市)相手に8番・遊撃手スタメンを張り3打数3安打2打点。これで水野選手はさらなる自信を深めました。

 「高校時代より深めには守っているが、苦にしたことはない」守備から「ストレート、変化球共にキレが全く違うが、そこで振り負けず強いスイングをすることを心掛けている」打撃につなげるスタイルは、試合を重ねるごとにチーム力の源泉へ。

 JR四国・山田 啓司監督も「新人とは思えない」と称える堂々としたプレーぶりは、準決勝・アークバリア(高松市)戦の3打数2安打2打点3盗塁。

 そして地元開催で四国銀行を破って勢いに乗る松山フェニックス(松山市)との決勝戦では「追加点が欲しいところでの貴重な一発だった」と指揮官を喜ばせる社会人初アーチ含む6打数3安打2打点。そんな彼に転がり込んできたのは3年連続12度目のJR四国都市対抗出場と共に「首位打者賞」の栄冠だったのです。

 「東京ドームに行くことで全国の投手とも対戦できる。今与えられた場所で役割を果たす中で、自分の経験も積んできたいです」と大会後、初都市対抗への意気込みを述べた水野選手。

 甲子園では日南学園(宮崎)戦でわずか7球で4打数無安打に終わった悔しさを晴らし、「一歩目のスタートから送球までの身体の使い方がうまいので参考にさせて頂いている」源田 壮亮大分商愛知学院大トヨタ自動車~埼玉西武ライオンズ)や安達 了一榛名上武大~東芝~オリックス・バファローズ)のような社会人名遊撃手の系譜をたどることができれば……。

 2021年秋には現在チームトレーナーを務める川畑 勇一さん(捕手・1993年ヤクルトスワローズ4位指名)以来となる「四国社会人野手ドラフト指名」が実現するはずです。

(文・寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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