軽視するべからず!学校での昼食や間食の摂り方
前回は意外に知られていない朝食の摂り方について、株式会社明治の管理栄養士の皆さんにお話をしていただきましたが、今回は、ついつい意識が届きにくい昼食について、様々な疑問にお答えいただきました。
果物や乳製品などはプラスαで補おう!
太田 智子さん(株式会社明治)
――昼食については、これまであまりクローズアップされてこなかった印象があります。まずは学食で昼食を摂る際のポイントを教えていただけますでしょうか?
後藤:学食の場合、いろんな品目が入ったランチを提供しているところもありますが、メニューによっては栄養が偏ってしまうものもあるように思います。その場合、サイドメニューがあるのならプラスαで足りないものを補うことが運動量の多い球児のみなさんには必要です。
宮井:定食であれば、ご飯はまず大盛りにしてほしいです。また、不足がちになる果物や乳製品を意識してとりたいですね。
黒崎:たとえば丼もの単品にすると、野菜量が少なく、果物や乳製品もないです。また、うどんやラーメンといった麺類単品と、お腹を満たすためにおにぎりと組み合わせることが多いと思います。これでは、エネルギー源となる「炭水化物(糖質)」は十分だとしても、「たんぱく質」が足りません。ですから、もし学食で定食のおかずだけを単品で頼めるのであれば、唐揚げをプラスしてみるとか。肉、魚、卵、大豆製品の中でプラスできるものがあれば足していくことを意識してほしいですね。カラダづくりの材料が不足すれば、カラダづくりがスムーズにいかなかったり疲労回復が遅れたりと球児にとってマイナスになりますから。学食だけではどうしても補えないという時は、自分でコンビニへ行ってサラダチキンや魚肉ソーセージなど買ってきてバランスを整えることもできますね。
――昼食は学食ではなくて、お弁当を持参して食べるというケースもありますが、お弁当で気をつけることはありますか?
太田:お弁当の中身もバランスを考えたいですね。1・主食、2・おかず、3・野菜、4・果物、5・乳製品がすべてそろった、「栄養フルコース型」の食事になるように意識してみましょう。彩りも良いと、バランス良い食事にもつながります。バランスが偏っているということのないように中身と量に気をつけてもらいたいですね。量は、2リットルのタッパーにお弁当を詰めて持ってきている選手もいるくらいなので、やはりお昼はしっかりと量も確保してもらいたいですね。
食事で好き嫌いを克服することもトレーニングのうち!
後藤 寿子さん(株式会社明治)
――昼食をコンビニで用意することもあるでしょう。もしも、コンビニでお弁当を買うとしたら、どんなことに意識し、何をプラスしたら良いのでしょうか?
太田:お弁当にプラスするのなら、やっぱり不足しがちな野菜とか果物や乳製品でしょう。おにぎりだけやパンだけという炭水化物(糖質)に偏った食事のとり方にならないようにアドバイスしています。
黒崎:でも、コンビニでお弁当を買っている高校生って少ないですよね。買っているものといえば、丼ものかパスタ。夏は冷やし中華とかの麺類。
後藤:一袋に菓子パンが5個くらい入っているような、お徳用のパンを食べていることもありますよね。
一同:そうそう!
黒崎:やはり安くて量があるものを買って食べたくなると思うのですが、それって野球選手としては、「すごくもったいないな。その食事ではたんぱく質が摂れないな」って思うんです。「どうして筋力アップができないんだろう」と悩んでいる選手がいますけれど、食事をよくよく見直してみると、量は食べているけれどカラダづくりに必要な材料が足りなかったり、バランスが悪かったということが結構ありますからね。
――チームによっては、昼休みに下級生がグラウンド整備をしなくてはいけなくて、食事をする時間がかなり短いというケースもあるのですが、早く食べるということについてはいかがでしょうか?
太田:私が担当しているチームの中にも、1年生は15分くらいしか食べる時間がないところがあるのですが、ある程度、トレーニングだと思って、スピード感をもって集中して食べることも必要だなと思います。胃腸も強くなりますし、ダラダラと食べるよりもたくさん食べられるようになると思います。
黒崎:あるチームでは1kgほどのごはんを20分以内で食べるんですが、レギュラーの選手なんかは自分からおかわりをして食べられるんですね。一方で、体の細い選手は内臓も鍛えられていないので、なかなか食べきれなくて30分も40分もかかってしまうんです。でも、20分で食べるように続けていくと、半年ほどで食べる力が付いてくるというんです。もちろん消化のことを考えると、気をつけなければいけない部分はあるのですが、嚙む力や飲み込む力を付けるため、食べるトレーニングをする必要はあるかなと思います。
――高校生世代だと好き嫌いがあることが多いのですが、どうしたら良いのでしょうか?
太田:好き嫌いが多いと、遠征へ行った時などで自分が食べられないものばかりが食卓に並んでしまって、コンディションを落としてしまうこともあるんです。ですから、野菜嫌いの選手も、緑黄色野菜等を摂ることなど練習と同じようにチャレンジ精神を持って、食事で好き嫌いを克服することもトレーニングの一環だと思って頑張ってほしいですね。
黒崎:私は選手にこう言っています。「苦手な練習があっても頑張るでしょ?食事も同じだよ」。練習も食事も同じで嫌いなものに向き合えば、それが力になると思います。もちろん、アレルギーがあると仕方ありませんが、好き嫌いには理由があると思うので、味が嫌いなら味付けを工夫したり、ただの食べず嫌いならチャレンジ精神を持って口にしてみたりして、自分が食べられるものを増やしていくことが必要です。そして、どうしても食べられないものがあるのなら、その代わりになる栄養価を持った食材を積極的に摂ってカバーすることですね。
間食ができる場合はおにぎりがオススメ!具も考えて。
座談会の様子
――それから学校の授業には体育がありますが、体育の授業があるかないかで食事も変えた方が良いのでしょうか?
黒崎:体育の授業があるから、これを増やしましょうという指導はしていません。普段の運動に比べたら、体育の授業にはそこまでの活動量はないでしょうから。それよりは一日三食しっかり摂ることを心掛けたり、練習の前後で間食を摂ったりする方が良いでしょう。
――今、間食という言葉が出ましたが、授業の合間に少しずつ食べることは効果的なのでしょうか?
黒崎:学校が許可しているのであれば、1時間目と2時間目の合間や午後の授業の合間、また部活前や終わった後などに間食を摂ることを、私たちはおすすめしています。あるチームでは、おにぎりを5個持参して、学校にいる間にいつでも良いので補食をして食べきるようにしたところ、2ヶ月間で2kgも体重が増えたということがありました。やはり体重を増やしたいのなら減った分を補うだけではなく、それ以上を摂取しなければいけませんから。そして、そういうことができるのは暑くなる前なんですよね。夏だと、食材が腐ってしまう危険性もあるので。食事もトレーニングと同じぐらいの気持ちで取り組めば、夏以降に活躍できるチャンスが広がると思います。
宮井:学校によっては自動販売機で牛乳やヨーグルトを販売しているところもありますので、それを購入して摂取するのもカラダづくりの助けになると思います。
後藤:私が担当しているチームでも、毎日、選手の体重を計って冬から体重を増やす努力を続けていたのですが、そのおかげで夏も体重が減ることなく体調も良かったという事例がありました。ですから、夏までに体重をアップして、夏は維持するというコンディショニングは良い方法ではないかと思います。そして、間食で体重を増やす方法ですが、いきなりおにぎりを1個増やすというのは大変ですし、食べるタイミングもつかめないと思うので、まずは一つ一つのおにぎりの大きさを少しずつ大きくしていくのが良いでしょう。
黒崎:おにぎり1個の量としては200gくらいが目安。250gあっても良いと思います。おにぎりくらいなら高校生男子でも握れるはずなので、親御さんに頼るばかりではなく「自分の体のために朝、早く起きておにぎりを作るのもトレーニングだよ」と言うこともありますね。