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高校野球を彩った名選手たちを振り返る!【後編】(1990年代後半~2010年代後半)

2018.12.29

 前編では王貞治が投手として活躍した早稲田実業時代の1950年代から、松井秀喜がゴジラとして甲子園を沸かせた1990年代前半までの高校野球を振り返った。後編では1990年代後半から現在の歴史を振り返っていく。

 高校野球を彩った名選手たちを振り返る!【前編】(1950年代~1990年代前半)

松坂伝説と今年の春・夏連覇


横浜時代の松坂大輔

 イチロー、そして松井が高校野球界を去った数年後、ある男たちが高校野球界で旋風を巻き起こした。「松坂世代」と呼ばれる、1980年世代の選手たちだ。

 この世代の中心人物、松坂大輔は神奈川の名門・横浜で3年間を過ごした。「平成の怪物」と呼ばれる所以は、高校3年時の活躍にあった。

 春の選抜を制し、春・夏の甲子園連覇を目指して挑んだ80回記念大会。横浜は初戦で鹿児島実と対戦。そこには1回戦でノーヒットノーランを成し遂げた杉内俊哉がいたが、打線が奮起し6対0で下す。そして準々決勝でPL学園との一戦を迎える。

 PL学園のエース上重聡(現日本テレビアナウンサー)と投げ合い、点を取られては取り返す死闘の末、延長17回で辛くも勝利した。

 続く準決勝では明徳義塾相手に8回終わって6点ビハインド。ここまでかと思われたが、8回に4点を返すとエース・松坂がリリーフ登板で9回を無失点。これで勢いに乗ると直後の攻撃で3点を奪ってサヨナラ。まさに奇跡とも言える勝ち方で決勝の京都成章戦へ。

 そして運命の決勝戦で先発した松坂は、ノーヒットノーランの快投で相手打線をシャットアウト。これ以上ない最高の形で横浜が春・夏連覇を成し遂げ、松坂は伝説となった。

[page_break:松坂に憧れた斎藤佑樹]

松坂に憧れた斎藤佑樹


田中将大と斎藤佑樹

 そしてハンカチ王子こと斎藤佑樹は、松坂に憧れた野球少年の一人だった。

 斎藤が全国で飛躍したのは2006年の夏。現在ではチームの同僚の中田翔をはじめ、多くの注目スラッガーを抑えて決勝進出。実力はもちろんのこと、マウンド上で見せる、ハンカチで汗を拭う姿に観衆は目を奪われた。そして、熱狂的なハンカチフィーバーが斎藤の背中を押した。

 そんな斎藤を擁する早稲田実業の相手が、田中将大を擁する駒大苫小牧だった。
 駒大苫小牧は2004年と2005年に夏の甲子園を連覇。田中は2年生ながらチームの夏の甲子園連覇に貢献。胴上げ投手にもなった田中は、注目選手として最後の夏を戦っていた。

 斎藤と田中の決勝戦の投げ合いは一歩も譲らぬ投手戦。8回に互いに1点ずつ奪うが決着つかず引き分け。再試合となったが、決勝戦で再試合になるのは実に37年ぶりのことだった。

 翌日の再試合で斎藤が駒大苫小牧打線を3失点に抑え、早稲田実業が優勝をおさめたが、2人の熱投に多くの人が酔いしれた。これからの100年も語り継がれる名勝負であることは間違いない。

 この世代は斎藤、田中をはじめ、マエケンこと前田健太坂本勇人梶谷隆幸など今の球界を支える名選手が多数いる。斎藤が松坂に憧れたように、彼らの活躍が次世代の高校球児の誕生に繋がるはずである。

[page_break:球界を牽引する89年世代をはじめ、スター選手たちはこれからも良い手本であり続ける]

球界を牽引する89年世代をはじめ、スター選手たちはこれからも良い手本であり続ける


丸佳浩と中田翔

 斎藤、田中の1988年世代にスター選手が多いが、1つ下の1989年世代にも多くのスター選手がいる。

 その筆頭格が巨人のエース・菅野智之だろう。
 東海大相模から甲子園を目指した菅野だったが、甲子園のマウンドに上がることは叶わなかった。その後、東海大に進学し頭角を現し、プロ注目右腕として2007年のドラフトの目玉となった。

 しかし、かねてから願っていた巨人への入団とはならず1年浪人した末に、翌年の2008年に巨人にドラフト1位で入団。今シーズンは沢村賞を受賞するなど、これまでに数多くのタイトルを獲得し、名実ともに球界トップの投手になった。

 その菅野と広島東洋カープの田中広輔東海大相模の同級生。東海大でも切磋琢磨した球友である。広島が誇る「タナキクマル」の1番打者として、チームの3連覇に大きく貢献した。

 北海道日本ハムファイターズの不動の4番・中田翔も89年世代の一人だ。高校3年夏の甲子園に出場はならなかったが、1年時から大阪桐蔭でレギュラーを獲得し、甲子園で活躍を見せて高校野球ファンを沸かせた。

 このほかにも、今オフに巨人への移籍が決まった丸佳浩、さらに東北楽天ゴールデンイーグルスで育成からの再出発する佐藤由規らがいる。

 丸は千葉経済大附、佐藤は仙台育英のエースとしてチームを牽引。特に佐藤は当時の高校生最速155キロを甲子園でマークし、一躍注目の的となった。


この夏を沸かせた3人 左から藤原恭大、吉田輝星、根尾昂(一部写真=共同通信)

 その後、2009年には優勝インタビューで涙を見せた堂林翔太(現広島東洋カープ)。さらに2012年には、春・夏連覇を成し遂げた大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎(現阪神タイガース)や高校最速160キロを計測した大谷翔平(現ロサンゼルスエンゼルス)たち1994年世代。

 他にも当時2年生ながら一試合22奪三振の大会新記録をマークした松井裕樹(現東北楽天ゴールデンイーグルス)。高校通算111本の大記録を樹立した清宮幸太郎(現北海道日本ハムファイターズ)など、多くのスター選手が甲子園で活躍し、高校野球ファンの胸を熱くした。

 そして今年2018年の100回大会では根尾昂藤原恭大吉田輝星などニュースターが誕生した高校野球界は、次の100年に向けて歩き出した。これから先、どんなニュースターが誕生するのか。彼らの良き手本、そして夢を与える存在として一時代を築いた高校時代のスター選手たちが、これからも活躍し続けていくことを願う。

文=編集部

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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