パ・リーグ新人王候補・小深田大翔(神戸国際大付出身)がこぶちゃんと呼ばれた高校3年間
福岡ソフトバンクホークスの4連覇で幕を下ろした2020年のプロ野球。今後、様々なタイトルの発表など楽しみは残っているが、毎年注目されるのが新人王。予想は様々だが、パ・リーグで一歩リードしているのが東北楽天ゴールデンイーグルスの小深田 大翔だ。
大阪ガスから即戦力のドラフト1位で入団し、期待に応える活躍だったが、神戸国際大付時代はどんな球児だったのか。恩師・青木尚龍監督にお話を伺った。
期待を裏切らない選手だった
高校時代の小深田大翔選手
青木監督は小深田選手のことを知ったのは彼が中学時代のこと。大阪桐蔭で活躍していた船曳 烈士や報徳学園の注目右腕・久野 悠斗なども輩出した佐用スターズからの連絡からだった。
「良い選手なので、お願いします」
そして2011年4月、小深田選手は神戸国際大付の門をたたき、青木監督の指導のもと甲子園を目指す日々をスタートさせる。同級生には東京ヤクルトスワローズで奮闘する蔵本 治孝や、JFE東日本でプレーする大園 祐也らがいた。
そうした同級生たちと比較すると、体格面においては小柄だった小深田選手は劣る部分があった。しかしプレーは絶対的な信頼を寄せるほどの安定感があった。
「守備範囲に来た打球に対しては弾くことがありませんでしたし、送球ミスも一切見たことがない。雑なプレーがなく、1つ1つのプレーがきちんとしていました」
また神戸国際大付というと強打の印象が強いが、小深田選手が現役時代、強打の神戸国際大付のなかでは特別な存在だった。
「セーフティバントと言った小技であったり、繋ぎのバッティングができたりする選手でした。なので、バッティングが良くなったのは近畿大学に進んでからだと思います」
主力選手ではなかったとのことだが、首脳陣が期待したことに対しては必ずプレーで応えてくれる。また練習することが好きでもあったため、居残り練習することも多かったとのこと。
口数は少ないほうだったこともあり、決してチーム内では目立つような存在ではなかったが、野球に対して真摯に打ち込む姿を含めチームの勝利には欠かせない存在。それが小深田大翔だったと青木監督は語る。
そんな小深田選手は、1人の高校生としても落ち着きのある生徒だったことを青木監督は振り返る。
「小深田は常に平常心なんです。1つ1つの行動はキチンとしていますし、当たり前のことは当たり前にやってくれる。なので、自然と小深田に対しては『これくらいはやってくれるだろう』と期待をしてしまうんです。それでも、その期待を超える結果を残してくれた選手でした」
何事に対しても全力で取り組んでいたという小深田選手。そんな小深田選手の姿を見て「あそこまで常に全力でやることをブラさないと、同級生も下級生も逆らえないです」と当時の練習の取り組みから、青木監督は小深田選手の芯の強さを改めて感じていた。
[page_break:心も体も安定している愛されキャラだった]心も体も安定している愛されキャラだった
小深田大翔選手
そんな小深田選手は1年生の秋には既にスタメンに名を連ねており、2年生の秋に近畿大会出場。8番セカンドで京都翔英戦もスタメンで出場するなど、チームを支え続けると、3年生の春にも近畿大会まで勝ち進み、自慢の守備を武器に準優勝に貢献する。
集大成の夏となった2013年は優勝候補として兵庫大会へ。2回戦から登場した神戸国際大付は伊川谷と対戦するが、結果は2対3でまさかの初戦敗退。「初戦敗退は初めてでした」という形で小深田選手の高校野球は幕を下ろすことに。
その後、小深田選手は青木監督とも相談し、近畿大学への進学を決意。青木監督も近畿大の方へお願いをして小深田選手を近畿大へ送り出すと、期待に応えるように小深田選手は1年生から活躍。4年生の時は主将を務めるなどリーグ通算107安打を達成。
この成長を見て青木監督のなかでも「プロに行けるんじゃないか」という感覚が芽生え始めたという。
「口数の少ないタイプですが、手を抜かなくて丁寧なプレーで引っ張る。主将を任せてくれたことを含めて、送りだした先でしっかり育ってくれました」
チームにとって欠かせない存在だったという小深田選手。2020年のプロ1年目から112試合で打率.288と好投手が数多くいるパ・リーグの中で好成績をマーク。しかもこの成績はパ・リーグで6位というルーキーとしては素晴らしい成績を残した。そんな小深田選手のエピソードを1つ青木監督が教えてくれた。
「彼は3年間でどこが痛いとか、故障というのがなかったですね。それだけボディバランスが安定しているので、偏りがないから怪我をしないですし、体に無理がないんです。だから1つ1つのプレーも安定していたと思います」
心も体も常に安定していた高校生・小深田 大翔。取材中、青木監督は小深田選手のことを「こぶちゃん」や「こぶ」と呼ぶことも時折あった。そうした愛される一面も小深田選手がプロの世界で活躍している1つの要因なのではないだろうか。
(記事=田中 裕毅)
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