野球の楽しさを感じてもらいたい

短期間で球児たちのところへ届けた竹内さんの行動力と熱意は称賛を送るしかないが、決して簡単な道のりではない。竹内さんはひたすら足を使って、とにかく現場、球児たちの今に寄り添って現実を知ろうとした。

「新基準バットに変わったことで、ニーズ・方向性が変化しているので、そこをしっかり押さえるためにも、全国にいる営業にも協力してもらって情報収集。私自身も大会はもちろん、いろんなチームへ足を運びました。やっぱり、選手・指導者たちの声が一番なので」

そのなかで新基準バットに対する様々な課題が見えてきた。実際に竹内さんも打ち比べをしたり、現場でバッティング練習を見ていて、「越えると思った打球が失速した」と実感したり、選手たちの悩みを、肌で理解して、認識していた。

ゆえに、WRのコンセプトはこうなった。
「野球の楽しさにおいて、バッティングは1つ重要な要素だと思っています。例えばホームランを打てば一挙に点数が入ることもある。いくら点差が離れていても試合終了まで何が起こるかわからないのが野球の面白さだと思うんです。なので、新基準バットでもどうしたらそのバッティングの醍醐味を一人でも多くの選手に味わってもらえるか。どのバットもそうですけど、そこが開発のベースになりました」

その後、竹内さんは短期間で開発チームと連携をとりながら、数十本とアイディアを出し続けては絞りながら、残したアイディアを微調整。「色々試す本数を増やした」と、過去と比較しても多いアイディアを検討してきた。その過程でバット全体の肉厚設計を変更することで、スイートエリア(バットの中で打球が飛びやすい理想とする打撃エリア)を拡大。最終的に現場で体感してもらい、VKONGWRを完成させた。

「やっぱりスイートスポット、真芯位置に当たれば、一番打球が飛びます、ただ、スイートエリアでも、食いつくような柔らかい打感を実現出来ているので、芯から外れても飛ばせるような感覚はあると思います」

誰もが使いやすい1本に/勝利を掴むために

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