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甲子園のアイドルと騒がれた元・超高校級左腕がプロで味わった蹉跌「ピッチャーとしての課題は…すべてだった」、クラブチームで再出発を決めたワケ

2024.04.06


インタビューに応じる成田翔

4月に入って、新年度が始まった。
昨年、NPBで戦力外通告を受けたのは計144名。その進路はさまざまだ。NPB他球団に移籍できた選手、二軍限定の新球団や独立リーグでNPB復帰を目指す挑戦者、アマチュア球界で野球を続ける男、そして、ユニホームを脱ぐ者。今回、NPBを諦め、社会人野球のクラブチームでプレーしながら、一会社員としてスタートを切った選手がいる。それが前ヤクルトの成田 翔投手だ。

秋田商時代、2015年夏の甲子園に出場。U-18日本代表に選ばれ、超高校級左腕として活躍した。その顔立ちも女性ファンから大人気で、“甲子園のアイドル”と呼ばれるほどだった。

同年のドラフトではロッテから3位指名を受け、プロ野球選手としてスタートを切ったが、ロッテ、ヤクルトの2球団でプロ通算8年、一軍18試合登板未勝利に終わり、昨年、戦力外通告を受けた。トライアウトを受験するも、NPB球団からの誘いはなかった。一般企業に勤務しながら、クラブチーム・全川崎クラブでプレーすることを決断した。

なぜこの進路に至ったのか。プロでの苦悩、クラブチームを選択した理由について成田に話を聞いた。

偉大な先輩に憧れて秋田商へ進学

秋田商を選択したのは、プロ通算185勝を誇る偉大なОBと、甲子園出場の2つが理由だった。
「まずОBである石川 雅規さん(ヤクルト)の存在が大きいです。自分は身長も小さいですし(170センチ)、中学生の時から目標にしている部分はありました」
秋田県の野球少年にとって石川は大きな憧れであった。一方、秋田商は成田が入学するまで夏16回、センバツ6回も出場していた甲子園常連校だった。
「石川さんと秋田商、どちらにも憧れがあったんです」
1年生からベンチ入りし、夏には甲子園出場を経験。初戦の富山第一戦の8回からリリーフとして初登板。2回無失点の好投を見せた。

しかし、2年時は聖地には届かなかった。もう一度あのマウンドに立ちたいと思いで、2年冬はひたすら走り込みとウエイトに取り組んだ。球速も大きく伸びて、最速144キロまでレベルアップする。
「自分の中で成長を実感しました。ポイントになりましたし、手応えもありました」
その成果もあってか、最終学年では好投をみせる。夏は秋田大会5試合で、39回を投げ、55奪三振の好成績で、秋田商を2年ぶりの甲子園出場に導いた。
「甲子園に出場するのは当たり前だと思っていました。2年生に甲子園に出場できなくて(夏は県3回戦敗退)、悔しかったですし、『同じ思いはしたくない』と自分の中で決めていたことなので、出場できたときは『スタートラインに立ったな』と思いました」

最後の夏の快投で高卒プロを決断

甲子園2回戦の龍谷戦(佐賀)で、成田は16奪三振1失点の完投勝利を収める。左腕から140キロ前半の速球、スライダー、チェンジアップをコントロールよく投げ分け、次々と三振を奪った。
「自分たちは甲子園で勝つことを目標にしているチームでしたので、特に2回戦では、力を入れて投げた試合でした。武器とは自分の中では思っていませんでしたが、スライダーがよく切れていたので勝てたと思います」

3回戦の健大高崎(群馬)との試合は、延長10回を自責点2で守りきって完投勝利。ベスト8に進出した。このころから成田に世間の注目が集まるようになり、“甲子園のアイドル”として人気は急激に高まっていく。本人はその熱気をどう感じていたのか。
「人気というのはわからないですけど(笑)秋田から甲子園にいくときに、周りの方から応援の声をもらったときは励みになりました」

準々決勝では仙台育英(宮城)に敗れたものの、秋田に帰ると、甲子園でのブレイクを実感した。
「そうですね。知らない方にも声をかけてもらったり、『よくやった』といわれたことは覚えています。写真も撮ってくださいといわれた記憶もありますし、ファンレターも甲子園が終わってからたくさん届いていました」

甲子園でのピッチングが評価され、U-18日本代表にも選ばれた。集まった投手の中でも夏の甲子園で優勝した小笠原 慎之介投手(東海大相模-中日)に刺激を受けた。
「U-18は甲子園のスターが勢揃いしているメンバーでしたので、吸収することはたくさんありましたし、コミュニケーションもたくさんとりました。今でも繋がりのある選手はたくさんいます。良い経験でした。小笠原投手は特に仲が良かったですし、とにかくすべてにおいて凄かった」
自信を深めた秋田は高卒プロを決断する。
「それまでもプロにいきたいなと漠然と考えていましたけど、まだそこまでの選手ではないと思っていたので、社会人、大学を優先的に考えていました。しかし、甲子園出場を決めて、成績が出る中でプロに行けるかなと思い始めました」

甲子園では26.2回を投げ、30奪三振、自責点8。世界大会でも5回8奪三振、無失点。当時の高校生左腕としては小笠原に次ぐ成績を残し、高卒プロを決断するのも当然だった。迎えたドラフトでは、ロッテから3位指名を受けた。
「ロッテさんにはとても感謝していますし、評価されたのは自分にとっても嬉しく思うことですね。ロッテの応援は高校生まではあまり知らなかったこともあり、実際に目にして、改めて凄いと思いましたし、圧倒されました」
ドラフト上位という球団からの大きな期待を背負って入団した成田だったが、プロの壁に大きくぶち当たる。

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この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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