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甲子園のアイドルと騒がれた元・超高校級左腕がプロで味わった蹉跌「ピッチャーとしての課題は…すべてだった」、クラブチームで再出発を決めたワケ

2024.04.06


インタビューに応じる成田翔

すべてが課題と痛感したプロ1年目

「周りの選手のレベルの高さが全然違いました。驚き、圧倒された感じです」
成田はプロ1年目を振り返る。
「当時はとても緊張していて、キャンプで何をやったのか、覚えていないんです。とにかくプロの選手達がレベルが高い。それを感じ続けたシーズンでした。先輩投手の投げる球は桁違いだったこと。それははっきり覚えています」

イースタン・リーグのマウンドに上がったが、何を投げても打ち返された。
「今までなら決まっていた、ストライクからボールになる変化球があっさり見逃されてしまいます。課題は…すべてでした」
高校時代は、伸びのある140キロ前半の速球、スライダー、チェンジアップで翻弄する「総合力の高い左腕」と呼ばれた成田。プロ1年目は二軍でわずか7試合で、18回を投げ、自責点12、防御率6.00という成績に終わってしまう。高校時代に誇った総合力が、プロではすべての部分で平均に届いていなかったのだ。

「このままでは駄目だなと思って、その年のオフシーズンは自分の中でかなり練習をしました。とにかく全部のレベルアップが必要でしたので野球漬けの毎日でした」
その成果が出たのか、2年目は9月6日の西武戦で一軍初登板。9月29日のオリックス戦ではプロ初先発まで果たした。計4試合、一軍のマウンドに登ることができた。
「あそこ(一軍)で投げられなかったら、プロ野球選手ではないと思っていました。投げられたことは良かったと思いますけど、1勝も出来なかったことは悔しかったです」
二軍でも19試合、62回、防御率3.05と成績は大きく改善。一軍では4試合での防御率は4.38だった。一軍はさらにレベルが高いことを痛感した。
「二軍では打ち取れていたボールが打ち返されたり……。そしてより多くのお客さんの人が見ている世界でしたので、緊張感も疲労感も段違いでしたね」

生きる道を探るためにサイドスローに転向

3年目以降も、成田は必死に練習をしたがなかなか一軍で活躍するレベルに至らない。一軍に昇格しても数試合登板にとどまる、という状況が続く。そして成田はプロ5年目の2020年シーズンオフ、サイドスローへ転向する。オーバースローのままでは、通用しないことを悟ったのだ。
「自分がプロの世界で生きていくには、そういう手段もありだと思いましたし、自分の中で試行錯誤をしていかないと生き残れない世界なので、変えました」
サイドスローにするにあたって参考にしたのは、中継ぎで活躍する日本ハム・宮西 尚生投手(市立尼崎)、ソフトバンクからヤクルトに移籍した嘉弥真 新也八重山農林)の2人だった。しかし野球を始めた時からオーバースローだった成田にとって、サイドスロー転向は馴染むのに1〜2年は時間がかかった。

「やはりサイドだとスライダーが一番大事になりますし、自分の中で生命線になるボールです。いろんな方から話を聞いて、それを吸収して自分のボールにしないといけないと思っていました」
プロで生き残るためにあがいた成田だったが、結果はついてこなかった。迎えたオフ、新設された現役ドラフトで、ヤクルトから指名を受け、移籍が決まった。成田は自分が選ばれると覚悟していたという。
「連絡があったのは、現役ドラフト当日です。ホント直前まで連絡はなかったですね。それでも『うすうす(選ばれるのは)自分かな』と思っていました。覚悟はあったので、電話があった時も焦りはしなかったんです。心機一転やるしかないと思っていました」

だが、移籍しても状況は大きく状況は変わらなかった。一軍登板は3試合で防御率5.40。二軍では37試合で防御率5.40だった。
そんな中で、10月1日に球団から連絡が入る。
「明日、球団事務所に来てください」
戦力外の連絡だと気づいた。
「シーズン中に戦力外にされる予感はなかったですね。後半戦は自分の形ができていて、失点も1,2試合しかなかったので、来年は繋げられるかなと思っていました」
それでもヤクルトでは戦力として見切られた。球団からは次の進路を聞かれたが、迷わず他球団での現役続行を選択した。
「自分の中ではまだやれると思っていました。特に落ち込むことはなかったですね」

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この記事の執筆者: 河嶋 宗一

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