News

防御率20.65でも…上沢直之はなぜ何度もオープン戦のマウンドに立てるのか? マイナー契約選手内にもある“MLB格差社会”

2024.03.13


専大松戸時代の上沢直之

日本ハムからポスティングシステムでMLBのレイズへ移籍した上沢 直之投手(専大松戸)が苦しい状況となっている。

マイナー契約を結び、開幕までメジャー昇格を目指す上沢はここまでオープン戦で3試合を投げて、防御率20.65(3月11日現在)と目を覆いたくなるような成績だ。
「開幕メジャーはかなり厳しい。上沢はMLBで通用しない」などと思った方も多いはずだ。それでもレイズのキャッシュ監督は「猶予を与える」というコメントを残している。

この成績でも上沢がチャンスを与えられるのはなぜだろうか?
元DeNAの投手・冨田 康祐氏(PL学園)に解説してもらった。冨田氏はDeNA退団後の2015年、レンジャースのマイナーで1年間、プレーした経験がある。
「上沢選手は、マイナー契約ですが、単なるマイナー契約の選手じゃありません。レイズのメジャーキャンプの招待選手なんです」

簡単にMLBの選手登録の仕組みを説明しよう。メジャーリーグの舞台でプレーできるのは各球団40人。まずは40人に入らなければいけないのだ。
「上沢選手はこの40人枠を争う当落線上の招待選手という扱いです。普通のマイナー契約の選手よりも期待値が高いのが招待選手。実績あるベテランや期待の若手など様々な選手が招待選手として迎えられます。ポイントは、上沢投手はメジャー契約の誘いもありながらも、あえてマイナー契約のレイズを選んだ経緯があることですね」

つまり、上沢は普通のマイナー契約よりもかなり“格上”なわけだ。実際、2月29日のオープン戦初登板に始まり、3月5日、10日と、きっちりと登板予定が設けられてきた。

チャンスもなかなかもらえない“一般のマイナー選手”

一方で、通常のマイナー契約の投手は大変だ。まずメジャーのキャンプに呼ばれる実力がなければならない。
「当然、能力が高い投手ではないと呼ばれないです。2A、3A相当の投手が入りますね。ここに入ることも競争になります」
ここを勝ち抜いてメジャーキャンプに参加できても、上沢のような計画的な登板機会は与えられない。「バックアップ」と呼ばれ、常にベンチで待機している。
「メジャー契約の投手は、あらかじめ投げるイニング、予定の投球数が決まっています。しかし、計画通りにいかないこともあります。打ち込まれたり、予定よりも球数が多くなってしまったり……。リミットに達したら、イニング途中で降板します。そんなとき“穴埋め登板”するのが、『バックアップ』で入っているマイナー契約の投手です」

実際冨田氏も、マナー契約だったレンジャーズ時代、オープン戦の9回二死から急きょ登板したことがある。いつ登板できるのかまったくわからない中で、バックアップの選手たちはこんなことを考えているという。
「(マウンドに立つ投手の)球数が増えることを願っています(笑)。自分はバックアップで入った最初の試合で、運よく登板できたんですよ。登板している投手の球数が少なかったり、あっという間に2アウトまでいってしまうと、『今日はオレたちバックアップの出番はないのか』と寂しい心境になりますね」

登板機会はあとわずか

一般のマイナー選手に比べると優遇されてきた上沢だが、そろそろ結果が必要だろう。レイズのオープン戦は3月27日(日本時間)のタイガース戦が最後で、開幕戦は3月29日(日本時間)のブルージェイズ戦となっている。上沢に与えられる登板機会は残りわずかだ。
「レイズの首脳陣のコメントを見ると、上沢投手の改善点が見えているんじゃないかと思います。もう少しチャンスを与えて、メジャー契約すべきか見極めたいのかな、と思います。
上沢投手の契約は、レイズ以外にも上沢投手とメジャー契約したい球団があれば、優先的に契約できる、というものです。なんとか結果を残してほしいですね」
レイズでのメジャー契約か、他球団が名乗りを挙げるのか、それともマイナーで開幕を迎えるのか。上沢の快投を期待したい。

<関連記事>
◆DeNA・今永昇太(北筑高出身)はカブスと契約合意!福岡の公立校から史上初のメジャーリーガー誕生!
◆大谷翔平、日本人初のメジャー打点王へ視界良好!
◆山本由伸メジャー1年目の成績を予想する! 過去8人の日本人投手が1年目で2ケタ勝利を達成
◆【一覧】日本ハム春季キャンプメンバー
◆【一覧】パ・リーグ新人最新状況

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.26

【春季四国大会逸材紹介・高知編】2人の高校日本代表候補に注目!明徳義塾の山畑は名将・馬淵監督が認めたパンチ力が魅力!高知のエース右腕・平は地元愛媛で プロ入りへアピールなるか!

2024.04.26

【奈良】智辯学園が13点コールド!奈良北は接戦制して3回戦進出!<春季大会>

2024.04.26

今週末に慶應vs.横浜など好カード目白押し!春季神奈川大会準々決勝 「絶対見逃せない注目選手たち」!

2024.04.26

【春季奈良県大会】期待の1年生も登板!智辯学園が5回コールド勝ち!

2024.04.26

古豪・仙台商が41年ぶりの聖地目指す! 「仙台育英撃破」を見て入部した”黄金世代”が最上級生に【野球部訪問】

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!