【高校野球勢力地図・静岡編】筆頭は日大三島! 「フルスイング野球」浜松開誠館、「頭とハート」聖隷クリストファーが追う! 静岡、常葉大菊川など伝統校の巻き返しも
小川 秋月(日大三島)
高校野球では、今年から新基準の低反発のバットを使用するということになって、野球のスタイルにも多少の変化が生じるのではないかとも言われている。そんな、2024年の高校野球の静岡県の勢力構図と見どころを展望してみた。
昨年の秋季大会から、県大会出場のための3地区の予選システムが変更となった。そのことで、波乱も生じて予選の1回戦で静岡、静岡商、掛川西といった県を代表する伝統校が破れて県大会出場がならなかった。そうした中で、近年躍進著しい藤枝明誠や浜松開誠館、日大三島、聖隷クリストファーの私学勢が4強に残った。
秋季県大会で優勝したのは藤枝明誠だった。突出した選手がいるわけではないが、皆川 晧也捕手(2年)のセンスの良さは光る。光岡孝監督も言うように、「皆でしっかりと守って、1つひとつのアウトをしっかりと取っていく野球を徹底していく」という戦い方で、チームとしてのまとまりのよさには定評がある。東海地区大会で県立岐阜商(岐阜)に粘って勝ったことも自信を高めている。
総合力としては、筆頭と言えるのが日大三島。エース左腕・関野 巧真投手(2年)に森賀 碧投手(1年)、長身185センチの小川 秋月投手(1年)らの投手陣は、力があり安定している。3位校として出場した東海地区大会では鈴鹿(三重)に快勝。愛工大名電(愛知)には終盤に得点されて敗れたものの、綱島 健太内野手(2年)を軸とした打線も勝負強い。
夏の甲子園に出場して、バントをしない強気の攻撃野球が注目された浜松開誠館。元中日の佐野心監督の提唱している“フルスイング野球”は、今季も静岡の高校野球を席巻しそうだ。低反発の新基準バットの影響がどうなのかというのも気になるところである。芯で捉える技術をさらに磨いていっていくはずであろう。
聖隷クリストファーは、粘り強く諦めない野球が身上だ。「頭とハートを使う野球」をモットーとして、力のある相手にも食い下がっていく姿勢を示す。高校野球の原点的な戦いができるチームである。
近年、安定して上位に顔を出している加藤学園は、新基準バットの性質を巧みに利用した戦いを仕掛けてきそうだ。センスのいい小澤 亨彦投手(2年)が引っ張り、片山 晴貴捕手(2年)らの中軸が返していくという、機動力を生かした戦いが期待できる。1死三塁を作って、ゴロGOで得点していくことも得意としている。課題としては投手陣の整備であろう。
東部勢では県大会ベスト8に残った飛龍と、197センチの大型右腕の小船 翼投手(2年)を擁する知徳なども面白い存在だ。また、三島南を21世紀枠で甲子園に導いた稲木恵介監督が異動した富士も、限られた環境の中で工夫しながらの練習で楽しみな存在となっている。
かつて、東海大浦安(千葉)を率いて甲子園準優勝の実績もある森下倫明監督が就任して2年、夏は準優勝だった東海大静岡翔洋も注目校の1つだ。「静岡県の野球は千葉県と同じで、スタンダードなスタイルかなと思っていたのですが、このところは新しい勢力も台頭してきているので、戦い方も考えないといけない」と、さらなる追求を目指している。
安定した実績があり、秋もベスト8で左腕・久保 綾哉投手(2年)の実績もある常葉大菊川に、同じ系列の常葉橘もチーム力はある。また、秋は公式戦1試合のみで敗退してしまった名門静岡や、静岡商、掛川西などが、どのように立て直してくるのかというところも興味深い。静岡の中野 桜佑投手(2年)は注目。また、掛川西も夏のベスト8のチームから、高橋 郁真投手(2年)と堀口 泰徳捕手(2年)のバッテリーが残っている。
磐田東も素材力の高い選手が多いが、184センチ、102キロという大型の寺田 光投手(2年)がどう成長するかということも注目される。
浜松日体や浜松市立、浜名の西部地区勢もひと暴れしそうな存在である。
文/手束 仁