【2024近畿地区戦力分析】大阪は今年も桐蔭と履正社が筆頭、好投手そろう兵庫、ハイレベルな争いの和歌山、2強が走る京都…
強豪揃いの近畿地区だが、2024年も大阪桐蔭(大阪)が引っ張っていくのではないだろうか。最速150キロ超えの平嶋 桂知投手(2年)や森 陽樹投手(1年)など投手陣は強力。打線も、明治神宮大会で本塁打を放ったラマル・ギービン・ラタナヤケ内野手(2年)を筆頭に、能力の高い選手が揃っている。明治神宮大会では5失策で初戦敗退を喫したが、この冬でどこまで守備力を向上してくるか。取りこぼしが少なくなれば、全国制覇も見えてくる。
大阪で大阪桐蔭のライバルになるのはやはり、履正社だろう。秋の府大会決勝では大阪桐蔭に2対3と接戦を繰り広げるなど、力の差は殆どないと見ていい。課題は最速147キロ右腕のエース・髙木 大希投手(2年)に次ぐ投手の育成か。10失点を喫した近畿大会準々決勝の京都外大西(京都)戦では、その課題が露呈した感がある。打線は相変わらず強力なだけに、投手陣の層が厚くなれば、甲子園でも上位に進める可能性は秘めている。
大阪2強を追う勢力も、力量差はあまりないように思える。近畿大会出場を果たした興國や、秋の府大会で大阪桐蔭と1点差ゲームを演じた近大附や大体大浪商などが、面白い存在になりそうだ。
秋にレベルの高さを見せつけたのが京都。近畿大会では京都外大西が準優勝、京都国際が4強と、ともに24年センバツの甲子園出場を確実にした。
京都国際は府大会で乙訓や立命館宇治といった強豪にもコールド勝ち。府内での実力は1歩リードしている印象だ。エースで主将の中崎 琉生投手(2年)は、抜群の安定感がある。曲がりの小さな変化球で打たせて取ることができるため、新基準バットの導入は彼にとって追い風になりそうだ。また、秋は体調不良で戦線離脱していた正遊撃手の藤本 陽毅内野手(2年)も、近畿大会後に復帰。24年センバツでは元気な姿を見せてくれそうだ。
府大会決勝で京都国際を下した京都外大西は、センバツに出場すれば18年ぶりとなる。チェンジアップとカーブを武器とする左腕の田中 遥音投手(2年)を中心に、まとまりがある。近畿大会では、初戦の彦根総合(滋賀)戦で10回表に5点、準々決勝の履正社戦では、2回までに6得点と集中打が光る。2010年夏以来となる甲子園でも面白い戦いを見せてくれそうだ。
昨夏代表校の立命館宇治は、長身右腕の十川 奨己投手(2年)が健在。福知山成美は、藤原 蓮投手(2年)が投打でチームを引っ張る。注目は秋に龍谷大平安を破り、創部5年目にして初の8強入りを果たした京都精華。これを足掛かりにさらなる飛躍となるだろうか。秋は思うような結果を残せなかった龍谷大平安、京都翔英、乙訓などの巻き返しにも期待したい。
兵庫県は、秋の近畿大会で8強入りした報徳学園のセンバツ出場が有力視されている。巧みな投球術を見せる主将の間木 歩投手(2年)と、最速150キロ右腕の今朝丸 裕喜投手(2年)の二枚看板が強力。打線は昨年のチームと比べると小粒だが、攻守にセンスを感じる西村 大和内野手(2年)や、好守の遊撃手である橋本 友樹内野手(1年)など、野手にも好素材が揃う。
例年、好投手の多い兵庫県だが、今年もその傾向が強い。近畿大会で8強の須磨翔風は、秋の公式戦を1人で投げ抜いた槙野 遥斗投手(2年)の活躍が光った。地域性などからセンバツの出場はやや厳しいが、甲子園でも見たい投手の1人だ。
他にも中学時代から速球は右腕として名を馳せた神戸国際大附の津嘉山 憲志郎投手(2年)や、神戸弘陵の最速152キロ右腕・村上 泰斗投手(2年)など好投手が目白押し。元履正社の岡田龍生監督率いる東洋大姫路や、元横浜の平田徹監督率いる彩星工科も好選手が入学するようになってきて、一冬越えれば面白いチームになっているだろう。以前にも増して激戦区になりそうな予感がする。
秋に耐久と田辺の躍進が目立った和歌山県は、ハイレベルな争いが見られそうだ。秋の県大会を制して、近畿大会でも4強入りを果たした耐久は、春夏通じて初の甲子園出場が濃厚。粘り強い投球が持ち味の冷水 孝輔投手(2年)を中心に、センバツでも快進撃を見せてくれるのではないだろうか。
高野山、市立和歌山、智辯和歌山を立て続けに下した田辺は、21世紀枠でセンバツ出場の可能性を残す。エースの寺西 邦右投手(2年)、4番・遊撃手の山本 陣世内野手(2年)と、投打で柱になる選手がいるのが強みだ。
近畿大会を逃した強豪校も、決して例年より力が劣っているわけではない。智辯和歌山は身長196センチ右腕の中西 琉輝矢投手(2年)や、俊足巧打の外野手で春からレギュラーとして活躍している藤田 一波外野手(1年)など、将来有望な選手は数多くいる。
市立和歌山には、昨年から4番・捕手の麹家 桜介捕手(2年)がいる。高野山には、智辯和歌山に勝利した昨夏のメンバーが多く残る。和歌山東も旧チームからの主力が多い。今年は実力拮抗の好勝負が多く見られそうだ。
滋賀県は、近江が県内史上最長の5大会連続で夏の甲子園出場を続けている。昨夏の甲子園を経験した投手が3人残り、秋の県大会でも優勝。黄金時代は、まだまだ続きそうだ。
打倒近江の一番手は、秋準優勝の滋賀学園か。プロ注目の遊撃手である岩井 天史内野手(2年)など、個々の能力の高さは県内でもトップクラス。秋3位の彦根総合は、県内トップクラスの打力を誇り、夏の甲子園初出場のチャンスも十分にありそうだ。
秋はあと1歩で近畿大会出場を逃した八幡商は、巧打者の脇坂 航大投手(1年)を筆頭に、能力の高い下級生が多い。好投手の杉本 倫太郎投手(2年)を擁する立命館守山も、楽しみな存在だ。
24年センバツの出場が、ほぼ絶望的となった奈良県だが、決してレベルが低いわけではない。夏の本命は天理になるだろう。1年春から主力として活躍してきた松本 大和内野手(2年)や、大谷 汰一外野手(2年)を中心に、実力者は揃っている。また、23年末で退任した中村良二前監督に代わって、1月から藤原忠理監督が就任。天理大では、23年秋までリーグ戦6連覇という結果を残し、広島・森浦 大輔投手(天理出身)や、ロッテ・友杉 篤輝内野手(立正大淞南出身)などを育てた実績もある。高校野球の指導は初めてだが、その手腕に注目が集まる。
秋優勝の智辯学園は主将の知花 琉綺亜内野手(2年)など、昨夏の甲子園経験者がチームをけん引できれば強い。奈良大附は杉山 竜之輔投手(1年)、高田商は仲井 颯太投手(2年)と、好投手を擁し、新基準バットの導入は追い風になるだろう。橿原学院や奈良北なども、虎視眈々と甲子園初出場を狙うなど、勢力図に変化がみられるかもしれない。
各府県で激戦となりそうな近畿地区の高校野球。バットの基準が変わる中で、どんな野球を見せてくれるだろうか。