試合レポート

準々決勝 神村学園 vs 国分中央

2023.09.06

SCORE
神村学園
国分中央
1234567891011121314
1 1 2 0 2 4 0 1 1
0 0 5 1 0 0 0 0 0
TOTAL
12
6

神村学園、経験を積むということ<鹿児島秋季大会>

<第153回九州地区高校野球大会鹿児島県予選:神村学園12-6国分中央>◇5日◇準々決勝◇鴨池市民

神村学園16安打、国分中央11安打と打ち合いとなり、点を取り合う展開となり2時間46分と長丁場のゲームとなった。

1、3回は4番・正林 輝大(2年)が2本の適時打で3打点を挙げ、2回はスクイズで得点と3回までに4得点と神村学園が順調に得点を重ねていた。

国分中央は3回に反撃。2番・小平 倭士(1年)、3番・福永 彪馬(2年)の連続二塁打で2点を返し、なおも2死満塁と好機を広げ、7番・豊田 悠馬(1年)が走者一掃の右越え二塁打を放ち、打者一巡で計5点を挙げ、試合をひっくり返した。

4回にも2番・小平が左前適時打を放ち、2点のリードを奪った。

神村学園は5回、連続四球を足掛かりに6番・木下 夢稀(2年)の右前適時打で同点に追いつき、6回は3番・今岡 拓夢(1年)の右前適時打で再び勝ち越すと、ここから4連打と畳みかけ、重盗も決まるなど打者一巡で計4点を加点。終盤まで攻撃の手を緩めず、16安打12得点を奪った。

先発のエース今村 拓未(2年)は6回以降も毎回走者を背負い、再三ピンチを招きながらも要所を締め、5回以降は追加点を許さず、完投した。

初戦の樟南二戦は6回で3人、3回戦・尚志館戦は7回で4人の投手をつぎ込んだ神村学園。この日は今大会初めて相手に逆転され、リードを許す展開となったが、先発した左腕・今村が最後まで完投し勝利した。

神村学園は夏の県大会も、甲子園も全試合で継投している。1週間500球の球数制限が導入され、年々厳しさを増す夏の暑さを考えれば、2人以上の複数投手を育成し、交互に先発することや継投は神村学園に限らず、上位を目指すチームにとっては最早、必要事項になったといえるだろう。

「継投するなら打たれる前、点をとられる前に代える」と小田大介監督は言う。甲子園でもその鉄則を貫いた。2回戦の市立和歌山(和歌山)戦では今村が先発したが2死から3連続四球を出した時点で、3年生左腕・黒木 陽琉にスイッチした。3失点してから投手交代した相手とは好対照であり、この試合を11対1でものにした。

そんなこだわりを持つ小田監督が、この試合では1度逆転された展開で、継投することなく今村を完投させた。この投手起用にどんな意味があったのか。

「直球も変化球も、球自体は悪くないと感じました」と小田監督。3回の5失点は痛打されたものだが、ミスが
絡んだ失点でもあり、完ぺきに打たれたのは2番・小平、3番・福永と7番・豊田。特に要警戒していた小平、福永の前に走者を貯めないことを意識しており、1番・東田 誠矢主将(2年)は初回の四球以外はしっかり抑えていた。

「1、2回はミスがあってもカバーする投球ができていたのに、3回はカバーしてやろうと力み過ぎて独りよがりの最低な投球になってしまった」と今村は振り返る。当然、小田監督からも厳しい言葉をかけられたが、それでも球自体が悪くないことを基準に、マウンドを任せてくれた信頼に応えようと、5回以降も力投を続ける。

小田監督の評価基準は明確で「悪いところは厳しく言われるけど、良いところはちゃんと褒めてくれる」と今村。6回以降、毎回先頭打者を出す苦しいマウンドは続いたが、強気で攻めた投球をしていれば、打たれたり四球を出しても「OK! それでいいんだぞ!」とベンチから声を掛け続けていた。

9回、1死満塁と3回と同じように大量失点しそうな大ピンチの場面。要注意の2番・小平に三塁打を打たれ、連続四球で招いた。小田監督は初めて交代するか迷ったが、捕手・木下が「球は来ている。まだいける!」と言い切ったことで、最後まで今村に託した。

「また同じミスでピンチになった。成長できるチャンスだぞ!」。今村と野手にそんな伝令を送ってハッパをかけた。最後は3回に走者一掃の長打を浴びた7番・豊田を遊ゴロに打ち取って無失点で切り抜けた。3回は内角の変化球を長打されたが、9回は全球直球勝負で打ち取った。

「ミス、失敗はOK!」と小田監督。甲子園から1週間足らずで秋の県大会を迎え、甲子園ベンチ入りメンバー10人を擁しているとはいえ、チームとしての準備期間がどのチームより足りていないのが明らかだ。だからこそミス、失敗があって当然と割り切りつつ、大事なのはその失敗から学んで糧にして、成長する経験を積むことを選手たちに求めている。甲子園で1回を持たず降板した今村にとって、これまで「未知のゾーン」(小田監督)だった154球投げての完投勝利は、今後への何よりの経験となったことだろう。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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