試合レポート

「痛恨5失策」大阪桐蔭の三連覇消える! 機先を制した関東一「初球の一撃」<明治神宮大会準々決勝>

2023.11.18


<第54回明治神宮野球大会:関東一9ー5大阪桐蔭>◇17日◇準々決勝◇神宮

関東一(東京)が大会3連覇を目指す大阪桐蔭(近畿)に挑んだ一戦。昼過ぎまで雨が降る予報もあり、試合開始が午前8時半から午後2時に変更になった。試合開始の時には雨も上がり、人工芝なので試合を行うことに問題はないが、グラウンドはかなりの水を含んでいた。

試合前のシートノック。関東一も高校生としてはかなりレベルが高い。けれども神宮球場で大阪桐蔭のボール回しをみていると、まるで大学のチームのような迫力があった。こうした相手に先制されると、ズルズルと引き離される恐れがある。関東一大阪桐蔭との相性も考え、緩急をつけた投球をする左腕の畠中 鉄心投手(2年)を先発させた。1回、畠中は第1球を96キロのスローボールを投げる。その後は130キロ台の直球といったように、大阪桐蔭を揺さぶる。大阪桐蔭の1番・境 亮陽外野手(2年)の打球を関東一の左翼手・坂本 慎太郎外野手(1年)が好捕したこともあり、3者凡退で切り抜ける。

大阪桐蔭はエースの平嶋 桂知投手(2年)が先発。その初球を関東一の1番・飛田 優悟外野手(2年)が中前安打にする。「先頭バッターを打ち取れなくて、悪いリズムになりました」と平嶋は言う。暴投と2番・成井 聡外野手(2年)の送りバントで飛田は三塁に進み、主将で4番の高橋 徹平内野手(2年)が内野安打を打って、関東一が1点を先制する。高橋は最近あまり当たっていなかったが、主将の先制適時打について米澤貴光監督は、「ずっと苦しんでいたので、解放された部分もあると思います」と語る。試合の流れを持ってくる意味でも、非常に価値のある1点であった。

大阪桐蔭は2回も関東一の右翼手・成井の好捕もあり、得点できない。

関東一は3回、四球の高橋を一塁に置いて、5番・熊谷 俊乃介捕手(2年)が左翼席に2ランを放ち2点を追加する。試合後、熊谷は「自分は守備のことしか考えていなかったので」と、本塁打の質問に当惑気味だった。それでも米澤監督は、「見事だったと思います」と高く評価した。

4回、2死から大阪桐蔭の4番ラマル・ギーセン・ラタナヤケ内野手(2年)が三塁打を放ち、5番・吉野 颯真内野手(1年)がセンターに大きな当たり。関東一の俊足の中堅手・飛田が背走して好捕した。

関東一は4回もこの回先頭の7番・市川が左前安打。8番・小島 想生内野手(2年)が送り市川が二塁に進んだところで、関東一は4回を無失点に抑えている9番の畠中に代打・堀江 泰祈捕手(2年)を送る。堀江は遊撃手への内野安打。さらに二塁走者の市川の飛び出しをみて遊撃手の賀川 陽日内野手(2年)は二塁に送球したが、これが暴投になり、市川が生還して関東一は1点を追加した。

畠中に代打を送ったため、5回から関東一は明治神宮大会から背番号1になった坂井 遼投手(2年)をマウンドに送る。坂井は5回を無失点に抑えたが、6回1死後、1番・境を四球で歩かせると、大阪桐蔭の猛攻が始まり、2番・吉田 翔輝外野手(2年)、3番・德丸 快晴外野手(2年)、4番・ラマルと3人続けて二塁打を放ち、3点を入れて追い上げる。

しかし、関東一はその裏すぐに突き放す。大阪桐蔭は投手を平嶋に代えて南 陽人投手(2年)をマウンドに送る。1死後、関東一は8番・小島が二塁打を放ち、9番・坂井の一ゴロが失策となり小島が生還する。さらに1番・飛田、2番・成井の連続安打で満塁となり、3番・坂本の三ゴロで大阪桐蔭の三塁手・ラマルの本塁送球がそれて、さらに1点を追加する。続く4番・高橋の中犠飛でさらに1点。続く熊谷の右前安打で三塁走者は生還したが、二塁走者は本塁で刺されて大阪桐蔭はさらなる追加点を阻んだ。

大阪桐蔭は8回、四球の德丸を一塁に置いて、4番・ラマルが豪快な2ランを放ち追い上げる。関東一はここで、坂井に代わり大後 武尊投手(2年)を投入。大後は大阪桐蔭の追い上げを食い止める。

その裏、関東一は6番・越後 駿祐内野手(1年)の右前安打を足掛かりに、敵失などもあり、さらに1点を追加して突き放す。9回は大後が四球の走者は出したものの、併殺で切り抜け、関東一大阪桐蔭を破る大金星を挙げた。この勝利に関東一の米澤監督は、「素直にうれしいです」と語る。

大阪桐蔭は、1度火がつけば手が付けられなくなるほどの、底知れぬパワーを感じる。関東一の熊谷捕手も「何を投げたらいいか、分からなかったです」と言うほどの迫力があった。けれども、失策が5もあれば、やはり試合では勝てない。水気を帯びた人工芝は、打球が独特の跳ね方をする。それに大阪桐蔭の野手はうまく対応できなかった。その点、関東一に「地の利」があったことも確かだ。グラウンドの状態が通常と違う時は、地の利が一層、物を言う。したがって、9対5というスコアが両校の力関係をそのまま表すものではない。それでも関東一は外野手がたびたびファンプレーをするなど、勝利を呼び込むプレーをしたことも確かだ。

大阪桐蔭の西谷浩一監督は、「近畿はうまく勝ち上がりましたけど、足りないところがありました」と語る。この敗戦で大阪桐蔭は、さらに強くなる可能性がある。

勝った関東一は、準決勝は作新学院(関東)と対戦。関東エリアの真の王者を決める戦いになる。

取材・文=大島 裕史

この記事の執筆者: 大島 裕史

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