東京都市大付vs都立武蔵村山
170センチの1年生左腕が好投 長野の強豪のために習得した新球が冴えわたる
東京都市大付先発・田畑 遼
<秋季東京都高校野球大会1次予選:東京都市大付12-0都立武蔵村山(5回コールド)>◇3日◇1回戦◇佼成学園グラウンド
都大会出場を目指し、全校が戦う秋季東京都大会1次予選がスタートした。[stadium]佼成学園グラウンド[/stadium]の第1試合では東京都市大付が都立武蔵村山を12対0で下した。
初回から手堅く攻めて一挙8得点を奪うなど、12安打12得点の攻撃で試合の主導権を握り、コールド勝ちを手にした。野田監督曰く「どう効率よく出塁して、得点を重ねるか」を焦点においてきたという新チームの成果が発揮された。加えて、投手陣も都立武蔵村山を1安打に封じたことも大きかった。
先発したエース・田畑 遼投手(1年)は170センチと決して体は大きくない。最速125キロとスピードもまだまだだが、「右足の下ろし方など下半身を意識している」というフォームは、左腕を上手く隠しながら始動していくので、出所が見えにくい。さらに、この夏から習得したというカットボールが大きな武器となった。
元々の生命線は外角低めへの直球。この夏も、投手の基本といえる投球スタイルで、エースとして投げた。しかし夏休み期間中に、今夏長野大会で準優勝を果たした兄弟校・東京都市大塩尻との練習試合をするにあたって「このままでは打ち込まれる」という危機感から、外部コーチの東京農大の教授・勝亦 陽一氏による指導で、カットボールの習得が始まった。
最初は「体の開きが早くなり、うまく曲がらなかった」と思うように投げられないことが多かった。いかに直球と同じように、下半身を使って突っ込まずに投げられるかを意識した。
そして、この大会で思うように使えるようになると、3回には都立武蔵村山3番・平井 大雅捕手(2年)をカットボールでアウトにした。
この投球には都立武蔵村山の主将・池田 歩夢外野手(2年)も「変化球が切れており、ストレートが両コーナーに決まっていた」と的を絞り切れなかったという。
投げている田畑もカットボールを内角へ投げられることで、「投球の幅が広がった」と球種が増えたことの効果を実感していた。
東京都市大付は、中学がボーイズチームとなっている中高一貫校。高校から入学してくる生徒はいないため、現在のメンバーと硬式野球を中学からやってきた。野田監督もこの秋に、ボーイズから高校の監督に就任した。「(監督の野球は)わかりますし、メンバーも同じなので団結力は強い」と田畑はいう。
新型コロナウイルスの影響でチーム作りが思うようにいかないところもある中で、こうした環境はメリットだ。目指す都大会ベスト8へ、代表決定戦での戦いぶりにも注目だ。
対する都立武蔵村山は、東京都市大付とは対照的。新型コロナウイルスの影響で夏休みはなかなか揃わず、練習試合も先輩にも協力してもらって実施できたほどで、練習も実践的なことがあまりできなかったという。
長い冬を迎えることになったが「普段の成果が出せなかったことを反省して、1球1球に力を込めてやっていきたい」と池田主将は前を向いた。来春は万全な態勢で戦い、都大会の切符をつかんでほしい。
(記事=田中 裕毅)