試合レポート

桐蔭学園vs藤沢清流

2022.04.30

ボーイズ元日本代表、名門シニアコンビが活躍 桐蔭学園が関東大会の切符掴む

桐蔭学園vs藤沢清流 | 高校野球ドットコム
桐蔭学園5番・牧野竜也

<春季神奈川県大会 桐蔭学園10-2藤沢清流(8回コールド)>◇準決勝◇30日◇横浜スタジアム

 桐蔭学園は、初回から活発に攻撃陣が機能。冬場に培ってきたという「つなぎの攻撃」が横浜スタジアムでもいかんなく発揮して、藤沢清流の大型左腕・木島直哉投手(3年)を打ち崩した。

 その中でも貢献度が高かったのは、1番・相澤白虎内野手(3年)と5番・牧野竜也外野手(3年)の2人ではないだろうか。相澤は準々決勝・東海大相模戦では1安打2四球という結果だったが、この日は1安打2四球2盗塁と1番打者として結果を残した。

 肩の高さにバットを置きつつ、重心を下げてどっしりと構える。軸足に重心を乗せてトップを作ると、滑らかなバットの出だしからレベルスイングで捉えてはじき返していく。後ろを大きくしすぎることなく、程よくバットを走らせながら振りだしているので、球のラインに入れつつも強くミートできているアベレージヒッターの印象だ。

 西武ライオンズジュニア、ボーイズ日本代表、桐蔭学園の主将と経験は豊富ではあるが、なおかつ「気持ちが強く、自分にも他人にも厳しい」と片桐監督は評する。事実、試合後に話を聞いても「チームとして満足していません」と関東大会出場を決めても納得しておらず、自身の結果についても「出塁することはできましたが、もっといい成績を残したい」と慢心はなかった。

 相澤はミート力に関して、冬場にチームで取り組んできたことが自身の成長にもつながったと感じている。

「煽らない(打ち上げない)ようにして、低い打球を打つことを心掛けてきました。そのためにも無駄の少ないフォームを模索しましたし、打撃練習から1球目をしっかりとらえるように意識も高くもってやるようにしてきました」

 ストイックな気構えが、ここまでのエリート街道に満足なく成長させたのだろう。今後も相澤には注目だが、5番に座った牧野はこの試合だけで4安打4打点と中軸としてふさわしい活躍ぶりだった。

 中学時代は名門・世田谷西シニアでプレーした牧野。上体は高くして突っ立ち気味だが、リラックスした状態で打席に立つと、球に対して素直にバットが最短距離で出す。反動がないため差し込まれにくいと感じるとともに、高めに対しての強さを感じさせたが、指揮官の片桐監督も打ち損じの少なさを評価しながら「早いカウントから仕留められるし、プレッシャーにも強いですね」とメンタリティーも高く評価した。

 牧野をはじめスラッガーではないが、鋭くシャープな打球を野手の間を抜いていく打者が揃っている桐蔭学園。1日の決勝でも快音が響くか楽しみだ。

 試合は初回に桐蔭学園が先制点を奪うと、中盤の5回には5番・牧野の一打などで4点を追加。7対1とリードを広げると、8回にもダメ押しの3点を加えて勝負あり。10対2の8回コールドで桐蔭学園が勝利した。

[page_break:桐蔭学園らしさ全開 走力で大型左腕を攻略して決勝進出]

桐蔭学園らしさ全開 走力で大型左腕を攻略して決勝進出

桐蔭学園vs藤沢清流 | 高校野球ドットコム
桐蔭学園1番・相澤白虎

<春季神奈川県大会 桐蔭学園10-2藤沢清流(8回コールド)>◇準決勝◇30日◇横浜スタジアム

 初回から桐蔭学園らしい試合運びで藤沢清流を打ち破った。先頭の相澤白虎内野手(3年)が四球で出塁すると、「癖を研究して、練習もやってきました」と対策を講じてきたうえで、初回から果敢に盗塁を仕掛けていき、マウンドの藤沢清流木島直哉投手(3年)を揺さぶった。

 結果、初回から足を使った攻撃を見せたことで3点を奪ったが、「自分たちの野球を貫こうと最初から積極的にいきました」と桐蔭学園らしい戦い方を示す意味もあったことを、片桐監督は話す。それが結果として立ち上がりの木島を叩き、試合の流れをつかむことに繋がった。

 藤沢清流・木島の球は真ん中から外寄りが多く、なおかつ浮いてくることが多かった。強みであるインコースがあまり投げられなかったことを受けて、「真ん中から外よりのコースに絞って打つことができました」と相澤は木島攻略を振り返っていたが、足を遣えていたことが大きいだろう。

 事実、木島はしつこく牽制球を投げるなど、ランナーに意識を割いていたことは見て取れた。相澤は足を使ってプレッシャーをかけられたことに関しては、「序盤に盗塁などでいいプレッシャーをかけられたことで、後半も足を絡めて点数を取れたと思います」と話しており、足を使ったことで、プレッシャーをかけられたことも大型左腕を崩したと考えられる。

 試合はその後、5回に一挙4得点。5番・牧野竜也外野手(3年)の一打などが効果的だったが、各選手が送球間やエラーなどで隙があれば、1つ先の塁を陥れる果敢な走塁も見られた。

 さらに8回の得点シーンでも三盗を絡めるなど、最後まで足を使い続けた桐蔭学園。記録した盗塁は5つだが、随所に桐蔭学園らしい戦いぶりを見せた。「走る意欲が高い選手が揃っている」と片桐監督が言うのも納得いく積極性だが、その勢いで優勝をつかむことができるのか楽しみだ。

[page_break:135キロ左腕はベスト4で散る プロ注目投手になるための課題]

135キロ左腕はベスト4で散る プロ注目投手になるための課題

桐蔭学園vs藤沢清流 | 高校野球ドットコム
藤沢清流先発・木島直哉

<春季神奈川県大会 桐蔭学園10-2藤沢清流(8回コールド)>◇準決勝◇30日◇横浜スタジアム

 桐蔭学園の前に敗れた藤沢清流。初の4強入りと快進撃を見せ続けたが、決勝進出にはあと1歩が届かなかった。10失点しながらもエースとして最後までマウンドに上がっていた木島直哉投手(3年)は「公式戦でこういった舞台を使って試合できたことは大きい経験だった」と夏に向けての今回の敗戦を前向きにとらえようとしていた。

 ただ、木島の投球は初回からフォームのバランスを崩したのか、やや突っ込み気味に見え、制球を乱すシーンが多々あった。そこで高めに浮いた甘い球をはじき返された。「大きいグラウンドで自分の力を発揮する難しさを感じました」と横浜スタジアムの雰囲気に、いつも通りの投球ができなかったことを悔やんでいた。

 持ち前のインコースを攻める投球もできず、外角中心に変化球を多く使ってかわすような投球になってしまったことについても、悔しさを感じているようだった。

「甘い球を投げてはいけないと思っていましたが、空回りして真ん中付近に行きました。もっと持ち味を生かす意味でもボール球になってもいいから、腕を振って初めて勝負できるかなと思いました」

 しかし秋に習得したクロスファイヤーは、この春に大きな武器となり、チーム初の4強に導くことになった。木島も「追い込んでからインコースを突けると、打者を惑わすこともできたと思います」と確かな手ごたえを感じるとともに、次の課題を明確にした。

「これでワンステップ成長できたと思いますので、さらに成長できるように球の切れを高められるようにしたいと思います」

 夏もベスト4、横浜スタジアムに戻ってきたいと木島は最後話したが、そのためにも春に出てきた課題をクリアすることは絶対条件だろう。有観客になるかどうかはわからないが、大舞台で普段のパフォーマンスを発揮できるだけの自信を携えて、夏に戻ってこられるか。最速135キロ左腕の成長を楽しみにしたい。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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