試合レポート

穎明館vs東京都市大付

2022.03.19

穎明館vs東京都市大付 | 高校野球ドットコム1次予選のトーナメント表
日大二、都立日野などが属する第1〜6ブロック
世田谷学園などが属する第7〜12ブロック
日本学園などが属する第13〜18ブロック
城西大城西、日大豊山などが属する第19〜24ブロック

穎明館サイドスローエースの小野崎ら「1期生」が奮闘して本大会出場へ

穎明館vs東京都市大付 | 高校野球ドットコム
サヨナラに喜ぶ穎明館

 勝てば都大会が決まる穎明館と東京都市大高の試合は、穎明館がサヨナラで東京都市大高を下した。

 1点ビハインドで迎えた2回、穎明館は無死二、三塁から8番・森哲太内野手(2年)の一打で逆転。5回には4番・安藤璃紀捕手(3年)のホームランなどで3点を加えた。

 先発した小野崎貴仁投手(3年)は2回に失点したものの、その後は外角中心へ丁寧な投球を見せる安定した投球を披露。特に4回は1死二、三塁とピンチを招いたが、6番・山下夏生外野手(3年)はスライダーのバックドアで三振。続く7番・勝倉拓海投手(2年)にも外角球で三振を奪った。

 6回以降は打ち込まれ同点まで許してしまったが、9回2死一、二塁から5番・谷本孔明内野手(2年)が「秋のサヨナラ負けから打撃に力を入れて練習した成果が出た」という一打がレフトへのサヨナラ打に。「中村紀洋さんを真似して、脱力できるようになった」と緊張しがちだった谷本が成長を見せた打撃で勝利した穎明館が都大会の切符をつかんだ。

 穎明館のエース・小野崎投手は最速120キロ台と、決して驚くような剛速球や、凄まじい切れのある変化球があるわけではない。

 独特ともいえる腕がハッキリ見える大きなテークバックから、鋭く横回転で右腕を振り抜く右サイドハンド。アーム気味の投げ方にも見えるが、武器となるのはインサイドワークを実現させる制球力だ。

 基本は外角への出し入れ。鋭く大きく変化するカーブに、緩く小さく変化するスライダーを軸にしながら、時折真っすぐを投げ込んで、ピッチングに緩急をつけていく。外角への制球力が高いため、失投による大けがが少なく、捉えられたと思った打球も野手の守備範囲に飛ぶケースが多かった。

 とはいえ、外角だけではなく、内角へシュートなどを使って懐を突く投球もすることで、ストライクゾーンが広く使え、相手打者に的を絞らせない投球ができた。打ち気になっていた東京都市大高が積極的にバットを振り回したことも功を奏して、凡打の山を築くことができた。

 対戦した東京都市大高主将の鈴木寛汰朗捕手(3年)も「変化球でカウントを取りに来たので、狙っていましたけど、球の切れが良かった」と質の高さを相手からも賞賛された小野崎だが、現在のフォームは秋の大会直前から望月監督の一言を受けて変えた。


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日大二、都立日野などが属する第1〜6ブロック
世田谷学園などが属する第7〜12ブロック
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穎明館先発・小野崎貴仁

「球速がそれほど変わらない」ということでオーバースローから転向を決意したが、フォームを固めていく中で、2人のプロ選手を参考に固めてきたという。

「横浜DeNAの深沢鳳介さん(専大松戸出身)は、始動してからトップを作るまではオーバースローと全く同じなので、自分と通じる部分がありました。あとは元ヤクルト・林 昌勇さんのリリースまでの腕のしなりは勉強になる部分でしたので、参考にさせてもらいました」

 試合中に、バックドア、フロントドアを駆使してカウントを取るシーンも見受けられたが、「まだ練習中です」とマスターはしていない模様。ただ、「失投することが時々ありますが、制球力はそれなりに良いので、自分から崩れることないです」と望月監督が好評するように、コントロールの良さは最大の武器だろう。

 中高一貫校で、高校から新たに生徒が入学しないため、単独での出場が近年は難しい状況だった。ただ2018年に就任した望月監督の働きかけで、徐々に中学生が高校まで継続するようになり、今大会は単独出場。そして2013年以来の春季東京都大会出場となった。

 望月監督が取り組みを始めた最初の世代「1期生」が小野崎をはじめとした3年生で、長い年月をかけて取り組んできたことが結果として表れた。郁文館と都大会の初戦で対戦するが、どんな試合を見せるか。

 穎明館の小野崎の前に抑えられた東京都市大高だが、エラーからの失点や、走塁ミスで攻撃の流れを切ってしまうことで、後手に回ってしまうことになった。山崎監督も「ミスしてしまった選手をカバーすることができなかった」と反省した。

 ただ先発した背番号10・勝倉拓海投手は、フォームの完成度で言えば、穎明館・小野崎よりも良かったのではないかと考えられる。

 セットポジションからコンパクトなテークバックで、右腕を振り切る。キャッチャー方向へ真っすぐ勢いよく重心移動するフォームには躍動感があり、まだ2年生ということを考えれば、今後が楽しみな投手だろう。

 山崎監督も「この悔しさをバネに夏に向かってもらえればと思います」と奮起に期待した。

 夏までの残りの期間を「チームで徹底したことをできるようにしていきたい」と鈴木主将は意気込みを語った。夏までにどんなチームに成長するか注目したい。

(記事:田中 裕毅


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ホームランを放った穎明館4番・安藤璃紀を迎えるベンチ
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東京都市大高ナイン
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東京都市大高先発・勝倉拓海

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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