聖隷クリストファーvs至学館
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ミラクル対決、9回にドラマが相次ぎ聖隷クリストファーが再逆転でサヨナラ勝ち
サヨナラ勝ちの歓喜にはじける聖隷クリストファー
どちらも、県大会は2位校からの東海大会ベスト4進出である。聖隷クリストファーは、先の中京戦では9回一死から走塁妨害と2つの押し出しなどで2点差を逆転している。しかも、チームの柱となるバッテリーがともにケガで万全ではないという状態の中で、代わりに起用した選手が活躍するなど、上村 敏正監督も驚くくらいの勢いだ。
また、至学館も県大会準決勝では9回に追いついて、なおも二死走者なしという場面からサヨナラ勝ちしたり、東海大会でも1回戦は岐阜第一に逆転勝ち。準々決勝でもリードされたが、すぐに逆転すると、2度もワンポイントリリーフを投入するなどのトリッキーな戦い方で勝ってきている。「前に甲子園に出た時と、チームの雰囲気は非常によく似ている。完投する投手は一人もいなくても、甲子園へは行けるはず」と、麻王 義之監督はいい手ごたえを感じている。
こうした、大会を通じて流れを掴んでいるチーム同士のミラクル対決と言ってもいいカードだ。
試合は聖隷クリストファーの背番号5をつけた堀内と、前の試合で好投した至学館の伊藤 幹太両先発で始まった。お互いに初回は、まずまずの立ち上がり。しかし、2回に早速に至学館の揺さぶりが出る。先頭の俊足の5番田頭が内野安打で出ると、櫛田も右前打で続いて一、二塁。兜森がしっかりと送ると岩戸が四球で満塁。ここで9番伊藤は、初球スクイズをファウルとしてしまった次の球、しっかり叩きつけて一、二塁間を破る安打で先制。さらに1番加藤は三塁線へ巧みなセーフティースクイズで2点目。ここでたまらず、聖隷クリストファーの上村 敏正監督は、前の試合で好リリーフした左腕塚原を投入した。
なおも二死二、三塁というところで、至学館は佐野の一打が難しいゴロとなり、相手失策を誘発してさらに2人がかえった。守り側としては「何かやってくるかもしれない」と不安に思っていたところへ不意の打球などで少し出足が遅れるということもあったのかもしれない。このあたりも至学館の提唱している“思考破壊”野球の本領とも言えようか。
3回には、一死三塁から試みたスクイズは本塁で刺されたものの、至学館の攻撃は怯まない。4回は先頭の伊藤が四球を選ぶと、二死となってから3番安並が中前打して一、三塁。続く4番宮田が左中間へ運ぶ二塁打を放ち1点を追加した。
何とか反撃したい聖隷クリストファーは5回、8番に入っている塚原以下、代打石黒、成田、伊藤凛と4連打で2点を返して、なおも無死一、二塁。赤尾が送って一死二、三塁とする。やや苦しい投球となった伊藤は、ここで2つ四球を与えてしまい押し出しで3点目を与えてしまう。これまで継投で凌いできた至学館だったが、ここは麻王監督は辛抱して伊藤を引っ張った。
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この日も粘りのリリーフで好投した聖隷クリストファー・塚原君
聖隷クリストファーはさらに6回にも一死から石黒が二塁打で出ると、成田も続いて安打後に盗塁を決めて二、三塁。続く伊藤 凛の内野ゴロの間に三塁走者が生還で1点差と追い上げる。このあたり、今までの至学館の戦い方を聖隷クリストファーが仕返しているかのようでもあった。さらに赤尾の中前打と堀内の内野安打でついに同点となった。ここで、麻王監督は伊藤を一塁に回して、右サイド気味の加藤を送り出して、何とか同点で凌いだ。
そして7回の攻防、至学館は先頭の安並君が二塁打するものの、バント失敗で三塁で刺されるなどで得点にならず。その裏の聖隷クリストファーも6番小出が安打し、河合のバントも安打となって無死一、二塁となったが、ここは加藤がよく踏ん張って無得点のまま。こうして同点のまま9回に突入した。
「ウチは7~9回で得点が取れなかったことはない。終盤で何かを起こす至学館」と麻王監督はよく言っているが、7、8回と無得点で迎えた9回、至学館は先頭の加藤が相手失策で一気に三塁まで進む。佐野が四球後、盗塁で二塁へ進み無死二、三塁。ここで3番安並が、2―2の並行カウントから中前へはじき返して2人がかえる。さらに打者走者も二塁へ進んだ後に暴投で三塁へ。続く宮田が左前打でこの回3点。これで、さすがに決着かと思われた。
ところが、前の試合でも9回から逆転サヨナラの聖隷クリストファーは、9回の3点差も元気は衰えていなかった。先頭の山﨑が思い切りよく左翼頭上を破る二塁打で出ると、続く小出も左越え三塁打で1点を返す。至学館も、ここで3人目の左腕山本が満を持してリリーフ。内野ゴロで1点が入り1点差で二死一塁となったところで、成田の安打と失策で満塁。ここで3番赤尾が四球を選んで押し出しでついに同点。こうなったら押せ押せの聖隷クリストファーは4番堀内のボテボテ気味ながらも内野安打となり、これがサヨナラ打となった。
「正直なところ驚いています。私は何回か諦めていましたが、選手たちが諦めないで向って行ってくれていました。素直に嬉しいですね」と、ベテラン監督も選手たちの粘りに敬服していた。
これで東海大会決勝は、静岡県大会決勝と同じカードということになった。
至学館の麻王監督は、「打球が不運なところへ飛んでいったというところも多かったかなと思います。ただ、展開としてはやはりこういう試合の流れでは、中盤で何らかの形で得点を取っておかなくてはいけませんでした。9回の得点は、至学館らしい形で奪えたのですが、その裏を相手の勢いに押されて抑えきれませんでしたからね。それでも、決してプロから指名されるような選手がいるワケではないチームですが、みんなで力を合わせてここまで戦えたことは評価していいと思います」と、選手を称えていた。
(取材=手束 仁)