神村学園vs隼人工
「緊張感」を作り出す・神村学園
神村学園・川井
当初開幕は20日の予定だったが、鹿児島市内がコロナのまん延防止等重点措置地域に指定されているため5日遅れての開幕だった。球場に入れるのは今のところ、部員と学校関係者のみ。閑散とした中、どのチームも実戦経験を積めないまま、手探り状態で新チーム最初の公式戦を迎えた。
立ち上がり、隼人工は2番・福園颯汰(2年)の内野安打、4番・本村仁(2年)がライト前ヒットを放ち、相手の送球エラーで二死二、三塁と絶好の先制機を作ったが、得点ならず。
その裏、神村学園は4番・田中拓真(2年)のレフト前タイムリー、5番・富﨑大都(2年)のライト前2点タイムリーで計3点を先取する。
2回裏は二死三塁から3番・福田将大(2年)がセンターオーバーのランニングホームランで2点を加えた。4回は2ランスクイズを決めるなど果敢に足を絡めて、3安打で4点を奪って大きく主導権を手繰り寄せた。
2回以降は先発の川井燿(2年)、内堀遼汰(2年)、朝吹拓海(2年)とつないでテンポ良く打ち取り、5回裏は4番・田中の左中間二塁打で10点差としてコールド勝ちを決めた。
「チームで野球をやる。今、やるべきプレーに集中できるか」(小田大介監督)。神村学園がこの試合で課したテーマ。キャッチボールをしっかりやる、守備でリズムを作る、低めのボールに手を出さず、ゾーンを上げて甘い球を逃さない…守備でも攻撃でも、勝利のためにそれぞれがやるべきプレーができているか、確かめながら緊張感のある戦いを繰り広げた。
5回コールドと一方的に勝ったようには見える。ただ詳細を振り返れば、初回は不用意なエラーがあった。簡単に二盗は決めたが、暴投を見逃して先の塁に進めなかった選手がいた。ランナー二塁からワンヒットで生還を目指すも、判断が甘く、中途半端に三本間で挟まれてアウトになった場面もあった。
不用意なミスがあれば、容赦なく選手を入れ替えた。スタメン通りの打順、ポジションだったのは4番・ライトの田中と5番・キャッチャーの富﨑のみ。15人の選手を使い、1番・宮本大輝(1年)はセンター、レフト、サードと3つのポジションをこなした。いろんな選手の適性を試すと同時に「自分たちで緊張感を作り出す」(小田監督)という狙いがあった。
緊張感のある中でプレーができなければ、ステージの上がった準々決勝、準決勝、決勝はとうてい戦えない。甲子園など夢のまた夢。コロナの影響で対外試合もほとんど詰めていないならば、公式戦こそがチームを成長させる絶好の機会だ。
だからこそ、点差や相手に関係なく、プレッシャーを自分たちでかけて追い込んでいく。球場が閑散としていた分、ベンチの小田監督の厳しい声はより大きく響いた。
「プレッシャーを楽しめというけど、それは無理な話。だったらプレッシャーのかかる状況の中でもプレーできるようになることが大事なんです」と小田監督は力説する。例年に比べて前チームの経験者も少なく、厳しい声もいつも以上だが「叱りがいがありますよ」と、その伸びしろへの期待の大きさもうかがえた。
選手宣誓では「当たり前に野球ができること、支えてくれた人たちへの感謝」のメッセージを込めた中村駿汰主将。「私生活からもう一度見直し、一戦一戦成長して、甲子園に行く」気持ちを新たにしていた。
(取材=政 純一郎)