試合レポート

京都国際vs二松学舎大附

2021.08.24

分析と工夫で京都国際がプロ注左腕を攻略、秋山「甲子園で優勝したかった」

京都国際vs二松学舎大附 | 高校野球ドットコム
森下瑠大(京都国際)

◆鍵を握ったのは右打者

 どちらが勝っても初のベスト8進出となる京都国際二松学舎大附の一戦。この試合のポイントは右打者なのではないかと思われた。

 京都国際は先発に2年生・森下 瑠大を起用し、二松学舎大附はプロ注目・秋山 正雲が登板した。どちらにも言えるのはエースで、左投げということだ。
秋山は140キロを超えるような力強い真っすぐを持ち味にする本格派である。対する森下も130キロ中盤の真っすぐはあるが、コーナーに投げ分けながら変化球をに手を出してもらう技巧派の投手である。

 タイプの違う2人の左腕が先発することになったが、攻略には右の方が有利であることは間違いない。

 京都国際は中軸3人を含めて4人、二松学舎大附は6人が右打者というオーダーで試合が始まったが、彼らの活躍が実際に試合の流れを変えていった。

◆一発攻勢と延長の粘り

 京都国際の先発・森下は1回二死二塁から、4番・関 遼輔に打たれ先制点を与える苦しい立ち上がりになる。

 しかし2回以降は安定した投球で味方の援護を待つと、5回に森下は外角高めをレフトへ運ぶホームランで自らを援護する。

 同点で迎えた6回、京都国際は2番・金田 大記が内角低めをライトへ運ぶヒットからチャンスを作ると、3番・中川 勇斗が真ん中に来た秋山の真っすぐを左中間スタンド中段に運ぶ勝ち越しホームランで、京都国際が主導権を握った。

 その後、4番・辻井 心もインハイの真っすぐをレフトポール際に飛ばすホームランで4対1とリードを広げて9回まで進んだ。

 ベスト8目前の9回、二松学舎大附櫻井 虎太郎にレフトへホームランを打たれ振り出しに戻され、京都国際にとって嫌な流れだった。

 しかし10回に二死一塁から、森下がまたも外角のボールをレフト線へ運び決勝の2点を追加して試合を決めた。6対4で勝利した京都国際が、ベスト8進出を決めた。

[page_break:秋山攻略のポイントは2つ]

◆秋山攻略のポイントは2つ

 チームのヒット数を見ると、京都国際が12本と二松学舎大附を上回った。プロ注目のサウスポー・秋山から12安打というのは、京都国際の勝利に結びつく結果だ。しかし二松学舎大附より左打者の多い京都国際が打てた理由はどこにあったのか。

 考えられるのは2つだ。
1つ目は打席の立ち位置である。京都国際の各打者が、バッターボックスの一番後ろで構えているのが見られた。チームとしての作戦ではないものの、後ろに立てば、それだけボールの軌道を見る時間を作れる。当たり前のことかもしれないが、速球対策の1つだろう。

 もう1つが素直なバッティングだ。
この試合、京都国際際・中川、辻井は甘いボールを思い切り引っ張ってジャストミートした。そして勝ち越し打を放った森下も、1打席目から外角のボールを流し打ちし続けていた。他の打者の結果を振り返っても、強引に引っ張ったりすることなく、素直に打ち返していた。

 来たボールをそのまま打ち返すのは基本だが、実践するのは難しい。それを京都国際が実行できたことが、ベスト8への壁を打ち壊す結果になったのではないだろうか。

◆素直かつ割り切った攻撃光る

 打席の後ろ側に立っていたことについて平野は「チームで決めたわけではありません」と話す。だが、「前に立つよりもやはり後ろの方が長くボールは見えるので、みんなが個人で考えてやったと思います」と打ち返すために考えた結果だったと語る。

 また来たボールに対して素直に打ち返すことが出来たことに関しては、山口主将が秋山投手の傾向を踏まえたものだったと話す。

 「秋山投手は右打者にはインコース、左打者にはアウトコースが多かったです。
また右打者であればチェンジアップもあったので、どちらも追いかけると打てないので割り切って絞ること。また左打者はインコースを捨てるように指示をもらっていました。

 そのうえで、甘いボールを逃さずに右打者は詰まらないように引っ張る。左打者は引っ掛けてライト前は難しいと思うので、逆方向に打つ。それぞれが待っているボールを打つようにしました」

 秋山攻略のために試合までに「至近距離から強いボールを投げてもらって実践練習をしてきました」とスピンの利いた強い真っすぐを打ち返すための練習をやってきたという小牧監督。そのうえで序盤は粘り、中盤以降の勝負に持ち込むプランで準備を進め試合に臨んだそうだ。

 細かな工夫、基本に忠実なバッティングなど、京都国際は出来ることをしっかりと取り組み、結果に繋げた。これが難しいわけだが、選抜での悔しい敗戦がここまで強くしたに違いない。初出場でベスト8と快進撃が続く京都の新鋭の次なる相手は敦賀気比だ。

[page_break:エースと心中して戦った]

◆エースと心中して戦った

 対して二松学舎大附は、3点差で迎えた9回にホームランで同点に追いつくなど、東東京代表としての意地、そして執念を最後まで見せたのではないだろうか。

 市原監督は試合を振り返り、「あそこまでいったら勝ちたかったので悔しいですが、良く粘ってくれた」と選手たちの最後の攻撃を称えた。特に櫻井のホームランは、「あれで気持ちが1つになれたので、最後の1イニングは楽しい時間でした」と少し嬉しそうに振り返った。

 また、この1年間エースとして、注目左腕として活躍した秋山への想いを言葉にした。

 「今日は疲れがあったと思いますが、エースの責任で頑張ってくれました。
この甲子園は秋山に連れてきてもらったので、最後は秋山で終わりたかった。『最後は秋山』と思っていましたね。大黒柱で3年間頑張ってくれて、この舞台に連れてきてくれて、選手も私たちも感謝しているので、今後飛躍してほしいです」

◆人として成長した高校生活

 秋山も「あのホームランで1つになれた」と感じていたようだが、自身の投球には「悔しい思いがあります」と言葉を残した。

 京都国際に打ち込まれたのは「ボールが浮いてしまった」と失投を狙われたと分析するが、疲労が残りながらのマウンドで、終盤にはギアを上げて140キロを超えた。秋山のうちに秘めている潜在能力の高さを改めて感じることが出来るのではないだろうか、

 「人間的に成長出来ましたし、色んな所でも成長出来て、良い3年間でした。それでも甲子園で優勝したかったです」と最後まで悔しさを滲ませる。今後の進路はプロを目指すとのことだが、秋に吉報が届くことを強く願う。

(記事:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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