試合レポート

西尾vs西尾東

2021.05.04

手の内をよく知る同士の西尾定期戦は、もつれながらも仲良く1勝1敗

西尾vs西尾東 | 高校野球ドットコム
1年生ながら三塁打を放った西尾の神谷君

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 毎年、この時期に定期的に交流試合を組んでいる西尾市同士の両校。元々は、もう1校西尾市の鶴城丘(旧西尾実)を交えての3校での定期戦という形で行っていたという。地元の定期戦として、かなり以前から交流していたという。その流れで、現在もこうして両校の間での定期交流試合が行われている。

 今年は、[stadium]刈谷球場[/stadium]が取れたので、[stadium]刈谷球場[/stadium]での開催となった。この日は、一方でB戦という形で2年生主体のチームは西尾のグラウンドで同じ顔合わせで戦っている。西尾の田川誠監督は、せっかく[stadium]刈谷球場[/stadium]でやれるので、1年生で3人だけはこちらへ連れてきたということだが、実はまだ試合用ユニフォームが間に合っておらず、この日は中学のクラブチームでの練習着を着ていた。

 田川監督は、「ウチなんかは軟式の出身の子が多いんですが、どうしても夏まではお客さん扱いになってしまうところがあります。だけど、逆に早く硬式に慣れるということも含めて、こうして試合に連れて来て、野に放つではないですけれどもやりながら慣れていって欲しいというところです」ということで、2試合目には3人が先発出場した。

 三塁を守った横山晟也君は兄の翔人君が西尾東で投手をやっていて、兄弟対決もあったが、死球になってしまい弟が押し出しで打点を得た。守りでも、無難なところを見せていた。また、9番に入っていた神谷君は三塁打を放つなどして気を吐いていた。

 地元同士ということで、選手たちもお互いによく知っているし、それぞれの力量もよくわかっている。今年の実績は、西尾は県大会に進出して優勝した愛工大名電にも食い下がった。一方、西尾東は西三河地区予選で西尾に敗れるなどして、リーグ戦を勝ち残り切れずに春季大会を終えている。それだけに、夏へ向けての準備としてもう一度チームを作り直している。

 西尾東は3年前の第100回記念東愛知大会で準優勝し、秋季県大会もベスト4に進出するなどの実績を作って、15年間指導して西尾東を西三河の公立の雄に作り上げた寺澤康明監督が県の人事で県教委の方へ異動となった。それを受けて、前年から西尾東に赴任して1年間は助監督として寺澤前監督をサポートしていた野田圭佑監督がこの春から就任している。



西尾vs西尾東 | 高校野球ドットコム
野田圭佑監督の話を聞く西尾東の選手たち

 野田監督は、春の西三河地区予選の反省から、「夏へ向けては、二番手三番手の投手を育てておかないといけない」という思いで、この日もまずはその候補の一人とも言える松井君を先発に起用。

 一方、西尾の方も大会では背番号1をつけて4番も打っていた右の川井君と左の加藤君という二人の投手がいるが、田川誠監督も、「夏へ向けてはもう一枚投手を作っておきたい」という気持ちもある。そこで、「ここまでコツコツと努力してきて頑張ってきた」という山口君に先発マウンドを託した。

 そして、仲間の選手たちも山口君の努力をよく知っているだけに、「何とか5回までは投げさせてあげたい」という思いも強く、それだけに序盤から打線は意欲的に打って行っていた。その結果として、西尾は3回までに9点を奪う。4番の川井君は初回の三塁打と3回の3ランなど4打点。3番杉山君も2回に2点三塁打を放つなど中軸がしっかりと、西尾東の松井君と鈴木敬君を打ち込んだ。

 しかし、後半はお互いに大会では1番をつけていた主戦格の投手が出てきて試合も引き締まった。西尾はエースで4番の川井君が2イニング。さらに左の加藤君が大きな縦カーブを駆使して2イニングを0に抑えた。田川監督も「ある程度は任せられる」と言うように信頼はある。

 西尾東は、最初は二塁を守っていた佐藤颯君が4回から登板すると5イニングを2安打1四球無失点に抑えた。さらに、2試合目では、最後の2イニングに1試合目では遊撃手で1番を打っていた好センスの菅原君が投げて、リズムを呼び込んだ。そして、試合としても8回に自身が同点三塁打を放つなどして、最大9点開いていた得点を追い上げて、最後は押し出しでサヨナラとした。

 こうして、結果的には2試合は1勝1敗という形になった。

 野田監督も、「こういう展開になったら、やっぱり勝ちに行きたくなりますよ」ということで、9回の満塁に代打で鈴木樹君を起用して二塁打を放ちチャンスを広げて、最終的にこれが押し出しを誘発することになった。西尾東は、3年生だけでも23人おり、全員が夏のベンチに入れるわけではない。それだけに、こうした試合の一つひとつもとても大事だということである。

 お互いに、勝手知ったる相手でもあり、地場に根差した高校野球の原点とも言ってもいい試合は、とてもいい雰囲気だった。甲子園出場を絶対的目標として戦っていく高校野球がクローズアップされがちだが、高校生の部活動としての高校野球もこういう形で存在しているのも確かだ。それぞれが自分たちのやれる範囲の中で一生懸命に努力して戦っていく。これもまた、高校野球のあり方でもある。

 もちろん技術的なことを言えば、取れるアウトを取りきれなかったり、投手が、不用意な四球を出してしまったというところもあった。それでも、声を掛け合いながら、仲間を励ましていく。

 田川監督も、「今の子たちは、よく話をしますよ。私のいるところでも、気にせず平気で話していますから、それを聞いていて、間違っていたらアドバイスすることもできます。また、生徒たちのいろんな考えもよくわかります」と言っていた。こういうチーム同士の対戦。何だかとてもいい雰囲気で高校野球の原点に触れられたような気持ちにもなれた西尾対決でもあった。

(取材=手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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