試合レポート

千葉学芸vs市立柏

2021.04.26

プロ注目は有薗直輝は負傷退場も、千葉学芸が価値ある勝利掴む

千葉学芸vs市立柏 | 高校野球ドットコム
有薗直輝(千葉学芸)

 高校通算56本塁打の有薗直輝の登場に柏の葉は5球団のスカウトが詰めかけた。

 さらに今年の公立でも実力校として注目される市立柏との一戦は接戦が予想された。

 千葉学芸は1回表、二死二塁から4番板倉颯汰の中前適時打で1点を先制。幸先よく先制したように見えたが、3回表にアクシデントが起こる。有薗が顔面に死球を受けてしまう。結果として骨折は免れたが、スラッガーとしてだけではなく、投げても最速148キロ、内外野も守れるユーティリティさも兼ね備えた万能スラッガーの負傷退場は痛かった。

 とはいえ、3回までながら見せ場は作ってくれた。シートノックでは、三塁の守備に入った有薗はかなり深い位置から、並の高校生ならばワンバウンドで投げないと、強い送球ができない距離でも、有薗の場合、いわゆる暴投になりそうな山なりではなく、ライナー性のボールを投げ込み、抜群の強肩を披露。

 試合では市立柏の4番鈴木竜斗が放った痛烈な三ゴロに対しても素早く反応し、すかさずダイレクトスローでアウトを演出したプレーには球際の強さを感じられた。

 近年、ドラフト1位で指名された三塁手の高校生スラッガーで安田尚憲履正社ー千葉ロッテ)、石川昂弥東邦-中日)がいるが、この2人と比較しても守備を明確に売りにできるレベルにあるだろう。石川も森田前監督がショートを守らせることを検討したほどのセンスの持ち主だが、ボールの扱い方、球際の強さという点では有薗が上回る部分があり、豪打を見られなかったのは残念だが、打撃だけではない選手ということを強調できる。

 さて、話を試合展開に戻すと、今回の有薗の退場で逆にチームの士気は高まっていた。高倉監督によると「有薗のために、勝とうという言葉も出ていましたし、自然とまとまりが出ていたと思います」

 また、高倉監督は選手1人1人に話をしながら、役割を明確にして、そのためにどういう働きをすればいいのかを話してきた。後半以降の粘り強い戦いを見ると、それを自覚しているように感じられた。

 3回表には長谷川心人の適時打などで2点を追加、6回表にも 2番鈴木結翔、有薗に代わって、途中出場の鈴木大成が適時打を放ち、「この一打は大きかったです」と高倉監督も評価する一打だった。



千葉学芸vs市立柏 | 高校野球ドットコム
鈴木竜斗(市立柏)

 エースの北田悠斗は6回裏に連打で失点を喫したが、その後は後続を抑え、安定した投球。130キロ前後なのだが、それ以上と感じさせるストレートのキレは素晴らしいものがあり、社会人野球で長く活躍する技巧派左腕は北田のようなタイプが多い。回転数は非常に高そうで、何よりメンタル的に図太く、本人もスタミナには自信を持っており、日頃の走り込みで培ったものようだ。

 有薗抜きで勝てたのは実に大きいだろう。本気で甲子園を狙う1年にとって、この勝利は大きな血肉になるだろう。

 敗れた市立柏はファーストの鈴木竜斗が3.2回を投げて無失点の好投。183センチ83キロと投手として羨む体格をした大型右腕だった。

 やや反った投球フォームから振り下ろす直球は130キロ前半〜136キロを計測。何度も135キロを連発しており、[stadium]柏の葉公園野球場[/stadium]で行われた3試合の投手の中では一番の球威だった。まだ制球は甘く、110キロ前後のカーブ、チェンジアップの曲がりはゆるさを感じるが、このタイプで高速系の変化球を投げられると大きいだろう。柏市立富勢中学校時代は投手で、高校入学後は一塁を務めていたが、2年秋から投手を務める時間も増え、リリーフとして起用されている。

 打者としても高校通算6本塁打とチームで一番を打っており、実際に重量感あるスイングは見応えがあるが、やはり適正は投手だろう。市立柏の加賀屋監督も夏まで投手として鍛え上げることを明言。

 投手育成力が高いチームに進めば、20歳〜21歳ぐらいには140キロ後半を連発していてもおかしくない素材だけに、ぜひ今後も追跡したい投手だった。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.27

【京都】龍谷大平安、京都成章、北嵯峨などが2次戦進出戦に挑む<春季大会>

2024.04.27

【大阪】3回戦は28日に大阪桐蔭、履正社が登場、29日には上宮-関西創価など<春季大会>

2024.04.27

横浜に入学した「スーパー1年生5人衆」に注目せよ! 佐々木朗希二世、中学日本代表の二刀流など明日の慶應戦で活躍なるか!?

2024.04.27

【広島】広陵は瀬戸内と、広島商は崇徳と夏のシードをかけて激突<春季県大会>

2024.04.27

【三重】津田学園-菰野、5年ぶりの決勝対決<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.22

【九州】神村学園、明豊のセンバツ組が勝利、佐賀北は春日に競り勝つ<春季地区大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!