千葉学芸vs市立柏
プロ注目は有薗直輝は負傷退場も、千葉学芸が価値ある勝利掴む
有薗直輝(千葉学芸)
高校通算56本塁打の有薗直輝の登場に柏の葉は5球団のスカウトが詰めかけた。
さらに今年の公立でも実力校として注目される市立柏との一戦は接戦が予想された。
千葉学芸は1回表、二死二塁から4番板倉颯汰の中前適時打で1点を先制。幸先よく先制したように見えたが、3回表にアクシデントが起こる。有薗が顔面に死球を受けてしまう。結果として骨折は免れたが、スラッガーとしてだけではなく、投げても最速148キロ、内外野も守れるユーティリティさも兼ね備えた万能スラッガーの負傷退場は痛かった。
とはいえ、3回までながら見せ場は作ってくれた。シートノックでは、三塁の守備に入った有薗はかなり深い位置から、並の高校生ならばワンバウンドで投げないと、強い送球ができない距離でも、有薗の場合、いわゆる暴投になりそうな山なりではなく、ライナー性のボールを投げ込み、抜群の強肩を披露。
試合では市立柏の4番鈴木竜斗が放った痛烈な三ゴロに対しても素早く反応し、すかさずダイレクトスローでアウトを演出したプレーには球際の強さを感じられた。
近年、ドラフト1位で指名された三塁手の高校生スラッガーで安田尚憲(履正社ー千葉ロッテ)、石川昂弥(東邦-中日)がいるが、この2人と比較しても守備を明確に売りにできるレベルにあるだろう。石川も森田前監督がショートを守らせることを検討したほどのセンスの持ち主だが、ボールの扱い方、球際の強さという点では有薗が上回る部分があり、豪打を見られなかったのは残念だが、打撃だけではない選手ということを強調できる。
さて、話を試合展開に戻すと、今回の有薗の退場で逆にチームの士気は高まっていた。高倉監督によると「有薗のために、勝とうという言葉も出ていましたし、自然とまとまりが出ていたと思います」
また、高倉監督は選手1人1人に話をしながら、役割を明確にして、そのためにどういう働きをすればいいのかを話してきた。後半以降の粘り強い戦いを見ると、それを自覚しているように感じられた。
3回表には長谷川心人の適時打などで2点を追加、6回表にも 2番鈴木結翔、有薗に代わって、途中出場の鈴木大成が適時打を放ち、「この一打は大きかったです」と高倉監督も評価する一打だった。
鈴木竜斗(市立柏)
エースの北田悠斗は6回裏に連打で失点を喫したが、その後は後続を抑え、安定した投球。130キロ前後なのだが、それ以上と感じさせるストレートのキレは素晴らしいものがあり、社会人野球で長く活躍する技巧派左腕は北田のようなタイプが多い。回転数は非常に高そうで、何よりメンタル的に図太く、本人もスタミナには自信を持っており、日頃の走り込みで培ったものようだ。
有薗抜きで勝てたのは実に大きいだろう。本気で甲子園を狙う1年にとって、この勝利は大きな血肉になるだろう。
敗れた市立柏はファーストの鈴木竜斗が3.2回を投げて無失点の好投。183センチ83キロと投手として羨む体格をした大型右腕だった。
やや反った投球フォームから振り下ろす直球は130キロ前半〜136キロを計測。何度も135キロを連発しており、[stadium]柏の葉公園野球場[/stadium]で行われた3試合の投手の中では一番の球威だった。まだ制球は甘く、110キロ前後のカーブ、チェンジアップの曲がりはゆるさを感じるが、このタイプで高速系の変化球を投げられると大きいだろう。柏市立富勢中学校時代は投手で、高校入学後は一塁を務めていたが、2年秋から投手を務める時間も増え、リリーフとして起用されている。
打者としても高校通算6本塁打とチームで一番を打っており、実際に重量感あるスイングは見応えがあるが、やはり適正は投手だろう。市立柏の加賀屋監督も夏まで投手として鍛え上げることを明言。
投手育成力が高いチームに進めば、20歳〜21歳ぐらいには140キロ後半を連発していてもおかしくない素材だけに、ぜひ今後も追跡したい投手だった。
(取材=河嶋 宗一)